英語研修を導入しても、なかなかTOEICの点数や会話力が向上しない……。そんな悩みをお持ちの人事・研修担当者の方も多いのではないでしょうか。実は、成果が出ない英語研修は、そのコンテンツが悪いのではなく、運用法に問題があると考えた方がいいかもしれません。
語学の学習は継続が重要です。したがって、途中で脱落させない学習の「習慣化」や適切なタイミングでの「コーチング」が絶対に外せない要素なのです。
英語研修をやるだけではダメ?
企業における、英語研修には、常について回る問題があります。それは、せっかく社内で英語研修を実施したにも関わらず、当初の目的である社員の英語力、例えばTOEIC®テストや実際の会話力が向上しない、という問題です。
それは、特にリアルの研修よりも社員がいつでもどこでも学べることを配慮して導入したeラーニングに多く起こりがちな問題です。ではいったいどこに問題があるのでしょうか?
企業の英語研修で成果をあげるために、絶対に欠かせない要素があります。それは、「習慣化」とそれをサポートする「コーチング」の仕組みです。
語学学習には残念ながら漠然とした誤解が存在します。それは、「研修を受ければなんとかなる」「ネイティブに習っていれば喋れるようになる」といった、受け身の姿勢からくる誤解です。
英会話を身につけるためには毎日、倦(う)まず弛(たゆ)まず、一定の期間集中して繰り返し練習をする必要があります。しかし、続けていても実際に成果が現れるまでは、これも一定の期間が必要という現実があります。
多くの学習者は、やり続けても成果が出ないことで、途中であきらめ学習を断念してしまい、せっかく良いコンテンツのeラーニングを学んでも成果につながらないまま止めるケースが多くあります。
学習のブレークスルーを経験させる
この一定期間学び続けないと成果につながらないという語学学習の特徴は、しばしば、成功グラフ、プラトー(学習高原)という名前で知られています。これは英語学習が、‘勉強’というよりも技術やスキルの習得と似ていることを示しています。
英会話のスキルであれ、スポーツのスキルであれ、何らかの技能、スキルの習得には時間がかかります。ほんの数時間の研修だけで簡単に身につくものではありません。しかも、以下のプラトー(学習高原)のグラフが示すように、毎日、一生懸命英語を練習したとしても、しばらくは、プラトー(高原)と呼ばれる何の変化もない、スランプのような状況が一定期間続きます(その期間には個人差が存在します)。
しかし、それをものともせずにさらに継続していくと、必ず飛躍、ブレークスルーの瞬間が誰にでも訪れます。学習のモチベーションが高まるのは、まさにこのブレークスルーの瞬間です。これを味わうと英語学習ががぜん楽しくなります。
しかしながら、このブレークスルーにたどり着く前に、多くの学習者がプラトーの時間に耐え切れず学習を中断、断念してしまいます。また英語力のレベルが上がると、実はこのプラトーの期間が長くなると言われています。つまり、eラーニングで重要なのは、このプラトーを耐え抜き、さらなるブレークスルーの瞬間まで学習を継続させる必要がある、ということなのです。
企業の英語研修にはコーチングと継続学習が不可欠!
企業の英語研修で社員の学習モチベーションを上げるためには、プラトーを乗り越えて、学習のブレークスルーまで受講生を導く仕組みが必要になります。そのためには、機械的なリマインドだけでなく、人的なサポート、ヒューマンサポートがやはり不可欠となります。受講生によってプラトーの期間も異なり、ブレークスルーの訪れる時期も異なるわけですから、あくまでも個々の状況に応じたサポートが必要になります。
そこで必要な仕組みが、コーチングです。相手の状況や状態を見極めた声掛けやアドバイスが適宜行われれば、受講生も非常に困難なプラトー(学習高原)を耐え抜いて学習を継続し、続けて学習していれば必ず訪れるブレークスルー、すなわち「飛躍と突破」を体験することが可能になるのです。
企業内で実施される英語研修を成果につなげ、社員の英語力の向上を実現するためには、このコーチングによる継続学習の仕組みが不可欠であることがご理解いただけたと思います。この学習のブレークスルーを2回経験すると、多くの受講生は英語が楽しくなり、学びの醍醐味を知ることでモチベーションの高い状態を維持することが可能になると言われています。是非、企業の英語研修における「習慣化」のための「コーチング」を、再点検、再検討してみてください!
・企業の英語研修における目標(KPI)の立て方と「見える化」
執筆者:竹村 和浩(たけむら かずひろ)
AllAboutビジネス英会話ガイド 担当テーマ:ビジネス英会話
英語発音矯正士 ビジネス・ブレークスルー大学 英語専任講師
英語通訳案内士/英語発音矯正とビジネス英語が専門。
㈱Universal Education代表取締役。
日本人はなぜ、英語が苦手なのか?その原因が、正確な英語の音の未習得にあることを25年前に発見し、独自の音声指導法、EVT: English Voice Trainingを開発。英語発音矯正の草分け/第一人者として、音素トレーニングを中心とした発音矯正で日本人の英語スピーキング力の向上に尽力している。RMS:リクルートマネジメントスクール受講者満足度No.1講師。