「グローバル人材の育成」というコトバが叫ばれるようになって久しい。
一方でこの分野で頭を悩ませていらっしゃる方々が多いこともまた確かである。
本稿では、テーマを「企業事例に見る海外人材」とし、
弊社森谷が実施し、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所に寄稿した
株式会社アルプス物流様と YKK 株式会社様への人材育成に関わるインタビューを共有させて頂く。
海外赴任者の役割と帰任後についてお伺いさせて頂いた。
「土地っ子になれ」という言葉が示すように、海外赴任者には、その国で生まれ育った
と思い、その国の文化を尊重し、価値観を吸収し、その国の方々と一緒になって考えると
いう意識で任務にあたることを求めている。同時に現地法人の意思決定を尊重する風土が
ある。
その一方で、企業活動の根幹をなす「善の巡環」(=他人の利益を図らずして自らの繁栄
はない)という YKK 精神、経営理念およびコアバリューは必ずその国の人々と共有し、し
っかりと浸透するまで伝えている。
ファスニング事業における新卒は将来的に海外に行くことを 1 つの採用条件としており、
グローバル要員の候補である。
早くて入社 2~3 年、平均的には 3~5 年ほどの国内経験の後に海外赴任に出る。
1 カ国あたりの任期は明確ではないが、海外間異動も普通に行われているため、
長期海外経験者も多く、10 年を超える社員もいる。
赴任経験者は社内に多くいて海外経験は普通のこととして見なされており、海外赴任経
験者に帰任後、特別なキャリアプランが準備されている訳ではない。
帰国後は国内勤務者と同様に役割を担って仕事をしていく。
その一方で、海外経験が人の成長につながっていることは確かである。
海外では、『非常に速いスピードの環境変化に対応する』、『走りながら考え問題解決を続ける』
といったタフな経験を積むことが多い。結果的にこうした経験が人を大きく成長させている。
また、経営層の近くで仕事をすることも増えるので経営的な視点で、ものごとを鳥瞰す
る経験が積めることも多い。
会社の意思決定について「なぜこのような決断に至ったのか」という『途中の思考過程』も近くで見ることができ、これらは非常によい経験であると考えている。
こう考えると、赴任経験者が多いということは、異文化に適応し広い視野からものごと
を見る経験をした人間が社内に増えることにつながっており、多様な価値観を受け入れる
土壌の醸成につながっていると言える。
現在の海外赴任の動向について、新興国の急速な伸びに対応し、多くの赴任者が必要と
なっている。営業のポジションや、経営層、管理系ポジションのほか、特に必要とされて
いるのは技術系の赴任者である。
彼らは、主に技術指導等をミッションとして担うことが多い。海外では一般論としてナ
ショナルスタッフは日本よりも離職率が高い。
このため、ある程度のターンオーバーを前提とした上で、品質を担保し続ける必要があり、
その技術指導を赴任者が担っている。ファスニング技術については、何年か海外で赴任してから一度日本に帰任し、最新の技術を吸収した後に再度それらを現地に展開するため再赴任するケースもある。
これからも引き続き多くの海外赴任者が必要となってくる。手を上げて行きたいという
人には海外で働けるチャンスを提供する風土であり、高い目標に果敢にチャレンジして、
たとえ失敗しても、次に成功する糧につながるはずという、信じて任せるカルチャーがあ
る。
今後、若い人の海外に行きたいという気持ちをどれだけ盛り立て続けていけるかが一
つの鍵であると考えている。
・<グローバルリーダーのリアル①>大手デベロッパー中国法人責任者
インタビュワー
森谷 幸平<株式会社WizWe代表取締役〉
大手小売を経て語学系eラーニングベンチャーに参加。北京オフィスMGR、フィリピン現地法人CEOを経て株式会社WEICに参画。上海にて日本語eラーニング展開後、日本でグローバル人材育成事業に携わる。2018年バイアウトを実行し、WEICより語学およびグローバル人材育成事業を継承し、株式会社WizWeを設立。人とデジタルのサポートで語学学習を習慣化し、90%以上の学習者を完走に導く習慣化プログラム「WizHeart」を運営。80社以上の企業に導入。
※ビジネス英語を対象とした実践プログラムから、異文化理解プログラムなど、ニーズに応じて最適なプログラムを提供する「人材グローバル化研修プログラム」の導入をお考えの企業様はこちらをご覧ください。