ビジネスで社員、役員が使う英語はその会社を代表すると言っても過言ではありません。どのようなビジネスシーンでも自信をもって対応できる発音のコツ、企業のエグゼクティブトレーニングにおける発音研修の役割を知り、一歩先を行くグローバル人材育成の体制を整えましょう。
ビジネスで英語の「発音」が大事な理由
みなさんは、英語の「発音」と聞くとどう感じますか? 多くの日本人は、「発音」より話す中身、とか、「発音」を気にしないで英語を話すことがまず先決、と思われる方が多いかと思います。
ただ、それは日本では通用しますが、世界でグローバル企業として名乗りを上げるためには、実は発音はとても重要な要素であることは知られていません。
発音は教育レベルを測る「リトマス試験紙」
さて、Yale(エール)大学の大学院の教授で、コミュニケーションを専門として教鞭をとっている、ウィリアム・ヴァンス(William A. Vance)教授という方がいらっしゃいます。この方は日本でも何冊か本を出版していますが、その中の一冊に、『日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術 エール大学厳選30講』(CCCメディアハウス)という本があります。
その27章に、「教育レベルのリトマス試験紙」という章があります。その冒頭でヴァンス教授は、「英語の発音の中で、教育レベルのリトマス試験紙と言われている音があります。ある程度話をすればその人の教養がわかるように、特定の英語の音がきちんと発音できているかどうかで、その人が受けた教育の善し悪しが明らかになってしまうというわけです。……さて皆さんが話し英語は、教育レベルが高い英語でしょうか?」と述べています。
話す英語の発音によって、その人の教育レベルが分かる、と捉える見方が存在するのです。つまり日本人が英語に関してよくいう、「英語は通じればいいんだよ」というわけにはいかない、ということです。
ましてや会社を代表しているとすればなおのことです。さて、ヴァンス教授が著書で述べている、「英語の発音の中で、教育レベルのリトマス試験紙と言われている音」とはどの音でしょうか?
子音の「t」と「d」が特に重要
彼は著書の中で――「そう、子音のtとdこそが、教育レベルの指針となる音です。正確で歯切れよく明瞭なtとdの発音を心がけると、自分の考えやスピーチ自体がよりよく理解されるのはもちろん、教育のあるエレガントな響きが聞き手に伝わるようことになります」――このように述べ、 とりわけ語尾のtとdを省略しないことが大切だと主張します。
リトマス試験紙ということは、「酸性/アルカリ性」のように、「educated(教育されている)/uneducated(教育されていない)」となってしまうとも捉えることができ、いかにその発音が大切なのかがわかるでしょう。
発音はその人の「第一印象」
お分かりいただけたでしょうか? 普段の友達との気の置けない会話ではさほど問題ではないかもしれませんが、ことビジネスで、グローバルに自分の所属する企業・会社を代表して交渉や商談に当たる場合、たかが発音、されど発音、発音は良いに越したことはない、ということなのです。
まして会社を代表する役員などのエグゼクティブクラスであればいうまでもありません。ただし大きな規模の会社であれば、パワーバランスもあり、売り手と買い手では立場の違いもありますから問題ではないケースもあるかもしれませんが、ほとんどの場合、発音は大事なのです。
企業のエグゼクティブ研修での発音トレーニング
これまで私はビジネス英語講師兼発音矯正士として多くの企業の役員クラスの方のレッスンを実施してきました。日本の某大手自動車メーカーの取締役が、アメリカのラスベガスで開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でプレゼンテーションを行うにあたりその指導などもいたしましたが、その際、このtとdも含めて、まず発音を磨いていただくことを重要視しました。
不思議と発音の改善は心理的な効果とも結びつきがあり、発音が良くなると自分の英語に自信が持て、プレゼンテーション本番でも自信にあふれたパフォーマンスが可能になります。
トヨタ自動車の豊田章男社長はよく英語で発信をされていますが、発音、そしてディリバリースキル(姿勢、動作、ジェスチャー、表情、話し方)を含めて、相当な努力をされている様子がうかがわれます。
「発音なんてどうだっていい」どころか、聞く人に良い印象を与え、あるいは交渉などを有利に進めるにも「発音」の善し悪しはとても重要であることを知っておきましょう。御社役員の方の発音は大丈夫でしょうか? 発音は時に人の心を動かしビジネスでの第一印象を高め、商談も優位に進める要素があることを是非知っておいてください。
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執筆者:竹村 和浩(たけむら かずひろ)
AllAboutビジネス英会話ガイド 担当テーマ:ビジネス英会話
英語発音矯正士 ビジネス・ブレークスルー大学 英語専任講師
英語通訳案内士/英語発音矯正とビジネス英語が専門。
㈱Universal Education代表取締役。
日本人はなぜ、英語が苦手なのか?その原因が、正確な英語の音の未習得にあることを25年前に発見し、独自の音声指導法、EVT: English Voice Trainingを開発。英語発音矯正の草分け/第一人者として、音素トレーニングを中心とした発音矯正で日本人の英語スピーキング力の向上に尽力している。RMS:リクルートマネジメントスクール受講者満足度No.1講師。