アメリカ英語? イギリス英語? オーストラリア、シンガポール、フィリピン……言わずもがな、英語は多くの国で話されており、そしてそれらの特徴は多様です。その違いやビジネスの現場で重宝される英語、社員の英語研修において考慮すべき点などについてご紹介します。

 

アメリカ英語がいいのか? イギリス英語がいいのか?

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発音の研修をしていてよく聞かれる質問に、発音は「アメリカ英語」、「イギリス英語」のどちらがいいですか? というものがあります。グローバル化が進む現在、世界で最も話されている英語は、片言英語(broken English)だというジョークがあるように、international English(国際英語論-非英語話者による国際コミュニケーションのための新英語)の時代と言われていますから、どのような発音でも良いという考え方もあります。

しかし一方で、私はビジネスではできれば「イギリス英語」の方が望ましい、と答えるようにしています。それには理由があります。

発音は日本ではそれほど問題にはなりませんが、実は、今もなお階級社会が残るイギリスや、ヨーロッパ、そしてアメリカにおいてさえ、非常にセンシティブな問題を持っているからです。

 

発音がその人の教育レベルのバロメーター

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実はビジネスでそれなりの人物と会う場合、相手は自分の貴重な時間を割くに値する人物か、今後も個人としても付き合うべき人物か、値踏みをしていると言われます。実際、アメリカ、エール大学の大学院でコミュニケーションを教えているウィリアム・ヴァンス(William A. Vance)教授は、その著書の中で「特定の英語の音がきちんと発音できているかどうかで、その人が受けた教育の善し悪しが明らかになってしまう」と述べています。

そして英語はある2つの音でその人の教育レベルを推し量ることができる、と言います。その2つの音とは、子音のtdです。特に語尾のtdが明瞭に発音されることが教育レベルの高さを占めるバロメーターであるというのです。

 

アメリカ英語とイギリス英語の違い

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さて、そもそもアメリカ英語とイギリス英語はどこがどう違うのでしょうか? 単語のつづりや、単語の違い、例えば、米国では建物の1階をfirst floor というのに対し、英国では、grand floor 2階がfirst floorになる、あるいは、「色」を表す英語が、アメリカではcolorとつづるのに対し、イギリスでは、colour あるいはcentercentreとつづるという違いなどがありますが、こと発音に関して言えば、それぞれの英語の特徴的な「訛り(accent)」は、その母音に現れます。

アメリカ英語とイギリス英語を最も特徴づけているのは、母音のaの音です。アメリカ英語で、ӕと発音する母音はイギリス英語ではɑで発音されます。I can’t の発音がそのよい例です。オーストラリア訛りはその点が特徴的で、eiと発音する母音は基本すべてaiと発音されるのが特徴です。

そして、もう一つ、アメリカ英語とイギリス英語の大きな発音の違いは、「イギリス英語では子音を省略しない」という点です。その代表的な例が、アメリカ英語では、tをしばしば不明瞭にl(エル)のように発音するのに対し、イギリス英語のtは、常に「破裂音」としてしっかり、明瞭に破裂を伴って省略されず発音されます。例えば、”That’s what I wanted to say”は、アメリカ英語では、「ザッツ ワライ ウォンニットゥ セイ」と発音されますが、イギリス英語では、tを省略せず「ザッツ ホワッタイ ウォンティド トゥ セイ」のように発音されます。あるいは、little は、アメリカ英語では、tがl(エル)化して「リロ」となりますが、イギリス英語では「リト」とtを省略せず発音します。

すこし回りくどくなりましたが、先ほどのアメリカのエール(Yale)大学大学院のヴァンス教授の言葉に沿えば、実はアメリカ人も「イギリス英語」の方が正当と感じている、ということが言えます。特にアメリカでも米国聖公会のコミュニティーなどの上流クラスが存在しますから、そこでは、tdを破裂させて明瞭に話すことが、高い教育を受けた(Well-educated people)という証となるわけなのです。

 

社員の英語研修で気を付けるべき点

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では、日本での発音矯正トレーニングはどうしているかと言うと、アメリカ英語が基本主流といえる日本ではすべての発音をイギリス英語に矯正するのは合理的とは言えませんから、アメリカ英語でも単語の語尾のtdを破裂させて発音するように指導しています。

時に日本人が「かっこいい」話し方と勘違いするwant towanna, going togonna,と言う様な表現も避けます。企業の英語研修においてネイティブスピーカーに講師を依頼する際も、できればアメリカの標準的な発音である、GA(General American-一般米語)、イギリスではRP(Received Pronunciation-容認発音。クイーンズ・イングリッシュとも)が話せる講師を選ぶことが大切です。なぜなら習得した発音は、会社を代表する人とその人の「教育レベル」を推し量るバロメーターとなるからです。

 

・ビジネスではなぜ発音が大事なのか? その発音仕事で使えますか?

・企業でグローバルに活躍できる社員の英語力の基準とは?

・発音トレーニングが変える社員の英語苦手意識

・英語社内公用語化は成功したか?

 

竹村和浩様_写真_掲載用

執筆者:竹村 和浩(たけむら かずひろ)
AllAboutビジネス英会話ガイド 担当テーマ:ビジネス英会話 
英語発音矯正士 ビジネス・ブレークスルー大学 英語専任講師 
英語通訳案内士/英語発音矯正とビジネス英語が専門。
㈱Universal Education代表取締役。   

 

日本人はなぜ、英語が苦手なのか?その原因が、正確な英語の音の未習得にあることを25年前に発見し、独自の音声指導法、EVT: English Voice Trainingを開発。英語発音矯正の草分け/第一人者として、音素トレーニングを中心とした発音矯正で日本人の英語スピーキング力の向上に尽力している。RMS:リクルートマネジメントスクール受講者満足度No.1講師。

 

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