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<企業研修における英語力育成戦略>初中級者のスピーキング練習法

作成者: owner|2020.7.30

言語能力はreceptive skill(受動技能)とproductive skill(生産技能)の2つに分類されている。受動能力をインプット、生産能力をアウトプットの技能と呼ぶほうが一般的かもしれない。一般的にはリスニング(L)とリーディング(R)の受動技能のほうがスピーキング(S)とライティング(W)の生産技能よりも先に身につくとされている。したがって、社員育成のプロセスとしては、まずはLR試験を導入し、一定以上の英語力がある社員だけにSW試験を受験させるなど、段階的に能力を育成し、評価していることが多い。

 
しかし、初中級者(CEFRA2レベル)の学習者がスピーキング練習に取り組みたいと考える場合は、LR能力の育成と平行して取り組むと効果的だ。レベルに合った適切な練習法でスピーキング練習を行えば、受動技能と生産技能の上達に相乗効果があり、英語力の底上げが測れる。

 

この記事ではTOEIC® LRテストが600点未満、またはなんらかのスピーキングテストでA2評価を受けている初中級者向けに、スピーキング練習時のDos and Don'ts(やるべきこと・やってはいけないこと)を紹介する。

Dos(やるべきこと)

リピーティング

◎やること

好きな素材でいいので、とにかく音源を真似てリピーティングを徹底的にやってほしい。丁寧に1文ずつモノマネリピーティングをし、モノマネ音読をしよう。ポイントは自分の思い込みを疑うことだ。例えば、officeの最初の音を「オ」だと思い込んでいないだろうか。アメリカ英語の音をよく聞いてみたときに、アフィスのような音になっていることに気づけるだろうか。同じように、語尾が「-tion」となっているinformationのような単語の発音を「ション」の音だと思い込んでいないだろうか。よく音源を聞いてほしい。アメリカ英語の音であれば「シャン」の音のほうが近いはずだ。簡単な単語だでも自分が間違った思い込みをしていないかを疑って、丁寧に音を聞いて再現することが大切だ。また、知らない単語は調べて語彙知識も増やそう。

 

◎得られる効果

文字と音の関連性が理解でき、いわゆる「英語耳」ができあがる。冠詞の音はほとんど消えてしまうこと、oの音はオではなく、アの音となることが多いこと、アメリカ英語では一部のtの音がdのような音になること、母音で始まる前置詞は前の単語の語尾の子音とくっついて発音されること(例:get upはゲッダップに聞こえる)など、細かい点を意識して練習しよう。こうすることで、発音がよくなるだけではなく、リスニング力も身につく。また、知らない単語の意味を調べることで意味と用法を同時に学べる。

 

オーバーラッピングと音読

◎やること

徹底的にリピーティングをした同じ素材で、ナレーターの声に重ねて、同じペースで音読をしよう。これはオーバーラッピングと呼ばれる練習方法だ。同じペースで読めるようになるまで練習を続け、満足のいくような出来栄えになったら、自分の声だけを録音しよう。録音秒数と音源秒数を見比べて、大きな差異がないことを確認し、流暢さの目安にする。また、自分の声を再生して、ナレーターの音声を聴き比べてみる。ナレーターの読み方と違う箇所や流暢さが下がっている箇所を見つけて、その箇所を集中的に練習する。十分に練習ができたら、再度、音読を録音してもう一度自分で確認をしよう。

 

◎得られる効果

流暢さを上げるためのトレーニングである。ナチュラルスピードに口を動かす練習になる。また、流暢さをナレーター同様のペースに上げても、発音、強勢、イントネーションが崩れないように徹底的に練習することで、正しい抑揚や発音でナチュラルスピードで話すための「基礎体力」がつく。

 

英語で独り言をつぶやく

◎やること

一人になれる場所、例えば自宅のトイレや風呂場で「今日は忙しかったな。会議が当日どんどん入るのは困るんだよな。」などとそのときに思っていることを英語で声に出してつぶやいてみよう。言えないことがあれば、スマホで必要な単語や表現を調べて、記録しておく。

 

◎得られる効果

言いたいことを言うために足りない単語や表現に気づくことができる。また、独り言として声に出すことで、単語を文字で見たことがあるけれども、発音に自信がない単語もわかる。必要な表現を調べて自分専用の語録集のようなものを作っていく作業をするため、言いたいことを述べるための表現が身につく。

 

今日の出来事や業務に関することを2分程度で話す

◎やること

自分でテーマを決めて、ミニプレゼンテーションをしてみる。その際、概要を述べてから詳細を伝えることを徹底する。日本語でもビジネス場面においてはそうだが、何について話しているかの総括をしたうえで、詳細を述べるのが英語を話すときの作法だ。例えば、スケジュールを伝える練習をするために、自分の予定を見て英語で話してみるときには、「今から今日の予定を述べます」と伝えてから、スケジュールを読み上げよう。意見を述べるときには結論を述べてから、その理由を述べるというのも大切である。

 

◎得られる効果

英語らしい話の組み立て方が身につく。日本語には「起承転結」という話の組み立て方があるが、英語は単刀直入に伝えたいことを述べてから詳細を説明するのが一般的だ。中長期的には、ある程度理論的に話せるかを問われるCEFRB2レベルまで英語力を上げていくことが目標になるビジネスパーソンが多いので、早くから適切な話の構成を意識しておくとあとあと苦労しない。

 

Don'ts(やってはいけないこと)

闇雲にシャドーイングをしてはいけない

 「英語学習にシャドーイングがいい」と聞いたことがあるだろう。しかし、シャドーイングはそもそも同時通訳のトレーニングである。今、同時通訳者を目指すほどの英語力がないのであれば、シャドーイングのような高度なトレーニングは不要である。初めて聞く音源を使って、すぐにシャドーイングにチャレンジする人がいるが、これは間違った学習法だ。ほとんど聞き取れないものをいい加減な発音でところどころ発してみても何も身につかない。そのような時間を過ごすよりも、徹底的に前述のモノマネリピーティングをしたほうがよい。徹底的に練習した教材をほぼ暗記している状態であれば、その暗記内容を頼りにシャドーイングをしてもいいが、闇雲にシャドーイングをするのは時間の無駄だと覚えておいてほしい。

 

モチベーションがなくなることをしてはいけない

語学習得は長期戦だ。しかも、コツコツと続けていく必要があり、初中級者がしばらく練習を怠ると振り出しに戻るという性質がある。比較的高い英語力を身につけると、しばらく英語を使わないでも、大幅にレベルが下がることはなくなるので、その境地にたどり着くまでは学習を続けられることを最優先にするべきだ。テストの受験頻度は必要性と自分の性格を考慮して決めよう。毎日受験をしても、英語力が一晩で変わるものではないため、スコアは伸びない。その伸びないスコアを見ることで、モチベーションが下がってしまう人はたっぷり練習をしてから次のテストを受けたほうがよい。逆に、負けず嫌いで自分の現在地を知るこそがモチベーションへとつながる人は、どんどんと評価を受けてみるとよい。

 

高頻度でスピーキング力を測りたい人には無料で使えるLinguaskillの公式練習ツールをぜひ活用してほしい。

このツールは発話を本テスト同様に評価してくれ、CEFR情報を提示してくれる。細かい点数はこの練習ツールでは出ないので、微妙な変化はわかりにくいが、発話内容のCEFRレベルを提示してくれる。ツール上で毎日同じ評価が戻ってきても、それを楽しめる場合は、試験慣れするためにも毎日活用してもいいだろう。

まとめ

初中級者はLR能力の育成と平行してスピーキング練習に取り組むと効果的だ。短期間でスピーキング力を大幅に向上するのは難しい。しかし、筆者の経験上、日本人は基礎力があるので、コツコツと練習を続ければ自習だけでもCEFR B1レベルまでの向上は可能だ。まずは英語の音とリズムを自分の身体に刻み込むことを意識しよう。そうすると、英語を聞くのが苦痛になることもなくなり、どんどんと聞いたことを真似して発話できるようになってくる。

 

また、長期戦になるスピーキング力強化トレーニングを続けられるためにはモチベーションコントロールをしてほしい。継続することが嫌にならない方法でコツコツと練習を続ければ、きっとブレイクスルーがある。

 

■Linguaskill Businessについてのブログはこちら

・運営しやすい高品質ビジネス英語テスト「Linguaskill Business」

■TOEIC®SW試験についてのブログはこちら

・ビジネスで戦力となる英語力を見極める TOEIC®SW試験とは

ビジネスで戦力となる英語力を育成する TOEIC®SW目標設定

・ビジネスで戦力となる英語力を育成する TOEIC®SW学習法

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執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO 

クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。英語教授法について大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。SCM部門の配属からHR部門に異動できず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教育教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天様で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。