スラッシュリーディング・スラッシュリスニングの意義
英語の語順は日本語と異なるので、きれいに和訳しようとすると、最後まで文を読んだり聞いたりしないといけません。一文字一句きれいに訳していくことを大切にする「訳読法」で英語を学んだ経験があると、日本の語順に合わせて後ろから前に訳していきたくなることでしょう。しかし、そのような英語のとらえ方をしていると、読むスピードがかなり遅くなります。また、リスニングでは後ろの情報を待って、脳内で日本語順に情報を再構築していたら記憶しておかないといけないことが多くなりすぎて、取りこぼしがかなり増えます。「きれいな翻訳癖」がある人は
・スラッシュリーディング・スラッシュリスニングで前から順に意味を理解する
・大ざっぱに意味をつかむ
という2つのことを習慣化して、「瞬時にわかる」ようになることを目指しましょう。
スラッシュの入れ方
スラッシュリーディング・スラッシュリスニングは情報を意味のかたまりに区切って、前から順に理解していく手法です。同時通訳者が意味のかたまりごとに訳しているのを聞いたことがあれば、まさにあのことです!読むときにテキスト内にスラッシュ(/)をメモすることから、スラッシュリーディングという名称がつき、同じ概念をリスニングに応用したスラッシュリスニングという言葉が生まれました。
スラッシュを入れるところに厳密な決まりはありませんが、「意味の区切り」の目印になるのは以下の場所です。
・カンマのある場所
・前置詞の前
・不定詞の前
・接続詞の前
・関係代名詞の前
・定型表現のあと
慣れるまでは小さく区切りましょう。慣れてくると大きく区切れるようになります。例えば、以下の文にスラッシュを入れて理解していきましょう。
Soon after Ms. Smith got a phone call from Mr. White, she decided to call a meeting to discuss the possible merger with the board members.
【小さく区切った例】
Soon after / Ms. Smith got a phone call / from Mr. White, / she decided / to call a meeting / to discuss the possible merger / with the board members.
すぐあと / スミスさんが電話を受けた / ホワイトさんからの(電話) / 彼女は決めた / 会議を招集することを / (業務)統合の可能性について話し合うために / 役員たちと。
語彙力と文法力が付き、総合的な英語力がついてくるとより大きな意味のかたまりを捉えられるようになり、こまめにスラッシュを入れる必要はなくなります。大きく意味を区切ったほうが速く理解しやすくなります。
【大きく区切った例】
Soon after / Ms. Smith got a phone call from Mr. White, / she decided to call a meeting / to discuss the possible merger with the board members.
すぐあと / スミスさんがホワイトさんからの電話を受けたすぐあと / 彼女は会議を招集することを決めた / 役員たちと業務)統合の可能性について話し合うために。
スラッシュリーディング・スラッシュリスニングにおける注意点
スラッシュを入れるところが「前置詞前」という原則論と、「定型表現後」という原則論があり、この2つのどちらが適応されるのか混乱することがあるでしょう。上記の例のsoon afterのafterは前置詞ですが、スラッシュがその後に入っています。その理由はsoon afterが定型表現だからです。
定型表現を認識できることがスラッシュリーディングとスラッシュリスニングに大切です。例えば I get up every day before my father. の分け方を間違うと文意がとおりません。
<前置詞の前にスラッシュを入れる>
I get / up every day / before my father.
私は得る / 毎日上に / 父より前に ※文意がとおりません。
<フレーズの後にスラッシュを入れる>
I get up / every day / before my father.
私は起きます / 毎日 / 父より前に
スラッシュを入れる場所を間違わないためには、定型表現を覚えていくよりほかありません。get upが「起きる」という意味だとわかっていれば、前置詞の前にスラッシュを入れてしまうことはないでしょう。
スラッシュリーディング・スラッシュリスニングがうまくできるようになるためには、単語や表現を覚えるという基本的な努力を行う必要があります。
学習方法
英語を理解できるようになりたければ、長文を読むこと・聞くことに慣れることが大切です。たくさんの英語をスラッシュで分解しつつ、一つ一つの意味のかたまりをイメージ化していきましょう。ネイティブは当然、読んだり聞いたりしたことを別の言語に訳しているわけではなく、場面をイメージして理解をしていきます。日本語を使わずに理解できるようになれば、ネイティブと同じような感覚に近づいてきます。
例えば、I apologize forというかたまりを見たり聞いたりしたら、申し訳無さそうにしている人を思い浮かべます。日本語で「~についてお詫び申し上げます」と訳す必要はありません。これがイメージ化が速読・速聴のコツです。
日本語を介さず、イメージ化して、意味を捉えられるようになるまで、日々トレーニングをしましょう。常に場面を想像できるように意識して読む・聞くことがポイントです。細かい点は理解できなくても問題ありませんので、どんどん先にイメージ化して進むことを意識し、後戻りをしないで済むように、数日置いたものは再度繰り返し読みましょう。少し忘れている程度のものを何度も何度も読み返して、英語を読むのと脳内にイメージができるのがスムーズに行う感覚をつかんでください。そして、最終的には初回によくわからなかった細かい点まで含めて全てが理解できるように仕上げていきます。
スラッシュは補助輪のようなものですので、いずれ脳内でスラッシュを入れずに情報をとらえられることを目指して、多読・多聴を習慣化しましょう!
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執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO
クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。英語教授法について大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。SCM部門の配属からHR部門に異動できず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教育教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天様で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。