今回はビジネスで使える英語スピーキング力についてお話します。スピーキング力と一言で言っても、縦軸にはさまざまなレベルがあり、また横軸にはさまざまな領域があります。今回は分かりやすくするため縦軸のレベル別に見ていくことにしましょう。
英語でビジネスコミュニケーションを行う場合、限られた内容であればTOEIC L&Rで550~600点代は欲しいところです。物販業や飲食業であれば、接客表現が中心であり、また表現内容も限定されているので、TOEICなどを利用して基礎文法を復習し、音読によってリスニングと発音を鍛え、接客英語のテキストを購入して一通りの表現を覚えれば基本的な場面には対応できるようになります。
オフィス業務でのスピーキング力
また、書籍などからとっさに使える口語表現やフレーズ、例えば”It doesn’t make any sense.”(道理が通らなない、訳わからない)などを一定数プールしておく必要があります。イディオムや慣用句(習慣や歴史的に成立したもので字面からは意味が分からないもの)も必要です。例えば、”If you twist my arm, (I’ll ...)”は、何かを強く頼まれた時、「そこまで言うんだったらしょうがない。~してあげてもいいよ」という場面で使われる表現です。
会議でのスピーキング力をつけるには、リスニング強化は当然として(TOEICパート3&4を利用して、音の連結(take itがテイキットのようにつながる現象)・弱化(top playerのように最初のpが弱くなる/聞こえなくなる現象)・同化(did youのように音がディジューのように一塊になる現象)を押さえておく必要があります。さらに会議では、進行役が使う表現、例えば「I’m going to take roll call/attendance now(では出席を取ります)」や「Let’s recap our discussion up to now.(ではここまでの話し合いの内容をまとめておきましょう)」のような、進行場面で用いられる表現を押さえる必要もあります。こうした表現は会議やプレゼンテーション表現集からピックアップすることができます。
スモールトークを鍛える
外国人とのビジネスは、実は日本よりもはるかに個人的つながりが重要視されるため、こうしたスモールトークを通じてお互いに「この人物はどういう人間なのだろう」という相手を見定めるための手掛かりを探そうとします。そのためこうした場でどのように相手に対処するかがその後の人間関係の発展にも影響します。
教養・知性を問われるステージ
さらに相手との関係が縮まり、定期的に仕事を一緒にするようになったとします。しかしある程度互いが理解できるようになった時点で、次は教養や知性を問われるステージが訪れます。一番よく聞かれるのが日本の歴史や社会、文化、人間、経済などに関する素朴な疑問です。もし「なぜ日本の企業は動きが遅いのですか?」と聞かれた場合、「難しいですねえ、説明できません」と答えるだけでは、グローバルビジネスプレイヤーに求められる標準的な知識レベルに達していないと判断されてしまう可能性が高いでしょう。
多くの外国人は、単に仕事の話ばかりでなく、「自分と付き合いのあるこの一個人が何を考えているのか」にも大きな興味を持っています。そのため政治、経済、地理、文化、科学、歴史を含めた教養はやはり欠かすことができません。特に相手のレベルが高くなればなるほどこういう傾向があるように思われます。こうしたことはあまり日本では強調されていませんが、失われた20年の間に、世界はすでにかなり先に行ってしまっているのが現実です。
スピーキングに重要な対人配慮の技術
むしろここでいう気配りとは、ネゴや計画変更の連絡、チームビルディングなどを行う場合に、パートナーとして相手の立場に配慮しながら、互いの目標達成に対して自分がどのような貢献を、どのように相手に提供できるのかを常に明確に説明していくことだと言えます。こうした努力の積み重ねによって互いの間に強い信頼関係が築かれ、それにより自分のスピーキングがさらに大きな価値をビジネスにもたらすようになるのだと思います。
著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)
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・TOEIC、VERSANTほか、企業研修で活用される英語のスピーキングテスト比較
・【企業英語研修の専門家に聞く】英語の会話力を伸ばすために必要なステップ(初級レベル~ビジネスレベルまで)
・【文章で話せない方は必見!】学習レベル別 スピーキング力の鍛え方(1)
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