今回はビジネスで使える英語スピーキング力についてお話します。スピーキング力と一言で言っても、縦軸にはさまざまなレベルがあり、また横軸にはさまざまな領域があります。今回は分かりやすくするため縦軸のレベル別に見ていくことにしましょう。

英語でビジネスコミュニケーションを行う場合、限られた内容であればTOEIC L&Rで550~600点代は欲しいところです。物販業や飲食業であれば、接客表現が中心であり、また表現内容も限定されているので、TOEICなどを利用して基礎文法を復習し、音読によってリスニングと発音を鍛え、接客英語のテキストを購入して一通りの表現を覚えれば基本的な場面には対応できるようになります。

 

オフィス業務でのスピーキング力

1572924オフィス業務、会議、プレゼンテーション、出張、部下の管理や指示出し、交渉などの場面ではTOEIC L&Rで最低750点前後は必要です。日常的な同僚とのオフィス業務であれば、750点程度の英語力で十分に仕事の話はできるでしょう。ただ、このスコアに至るには、基本文法や語彙知識のほかに、音読・シャドーイングによってリスニング力をアップしておく必要があります。

また、書籍などからとっさに使える口語表現やフレーズ、例えば”It doesn’t make any sense.”(道理が通らなない、訳わからない)などを一定数プールしておく必要があります。イディオムや慣用句(習慣や歴史的に成立したもので字面からは意味が分からないもの)も必要です。例えば、”If you twist my arm, (I’ll ...)”は、何かを強く頼まれた時、「そこまで言うんだったらしょうがない。~してあげてもいいよ」という場面で使われる表現です。

会議でのスピーキング力をつけるには、リスニング強化は当然として(TOEICパート3&4を利用して、音の連結(take itがテイキットのようにつながる現象)・弱化(top playerのように最初のpが弱くなる/聞こえなくなる現象)・同化(did youのように音がディジューのように一塊になる現象)を押さえておく必要があります。さらに会議では、進行役が使う表現、例えば「I’m going to take roll call/attendance now(では出席を取ります)」や「Let’s recap our discussion up to now.(ではここまでの話し合いの内容をまとめておきましょう)」のような、進行場面で用いられる表現を押さえる必要もあります。こうした表現は会議やプレゼンテーション表現集からピックアップすることができます。

 

スモールトークを鍛える

2046445しかし実際には日常の会話におけるスモールトーク(相手との距離を縮めたり、親密度を保つための「雑談」)と、物事を説明したり知識をシェアする場面における説明力がグローバルコミュニケーションでは物を言います。スモールトークでは、会話をつなげるために、相手が答えを返しやすくできるようなちょっとしたフレーズが重要になります。例えば「新しいボスに会った?」に対して「いいえ」で終わるのではなく。“No. Not yet. What’s she/he like?”「いいや、まだだけど。でどんな人?」のようにある程度相手に配慮した会話パターンを覚える必要があります。こうした知識は単なるフレーズ集だけでは対応できないかもしれません。

外国人とのビジネスは、実は日本よりもはるかに個人的つながりが重要視されるため、こうしたスモールトークを通じてお互いに「この人物はどういう人間なのだろう」という相手を見定めるための手掛かりを探そうとします。そのためこうした場でどのように相手に対処するかがその後の人間関係の発展にも影響します。

 

教養・知性を問われるステージ

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さらに相手との関係が縮まり、定期的に仕事を一緒にするようになったとします。しかしある程度互いが理解できるようになった時点で、次は教養や知性を問われるステージが訪れます。一番よく聞かれるのが日本の歴史や社会、文化、人間、経済などに関する素朴な疑問です。もし「なぜ日本の企業は動きが遅いのですか?」と聞かれた場合、「難しいですねえ、説明できません」と答えるだけでは、グローバルビジネスプレイヤーに求められる標準的な知識レベルに達していないと判断されてしまう可能性が高いでしょう。

多くの外国人は、単に仕事の話ばかりでなく、「自分と付き合いのあるこの一個人が何を考えているのか」にも大きな興味を持っています。そのため政治、経済、地理、文化、科学、歴史を含めた教養はやはり欠かすことができません。特に相手のレベルが高くなればなるほどこういう傾向があるように思われます。こうしたことはあまり日本では強調されていませんが、失われた20年の間に、世界はすでにかなり先に行ってしまっているのが現実です。

 

スピーキングに重要な対人配慮の技術

1602869またスピーキングにおける重要な技術は対人配慮です。よく「日本人は気配りがうまい」「日本はもてなしの国」というような言葉が聞かれます。たしかに日本人のメンタリティーは非常にこまやか(逆に言うと切った張ったの激烈な競争が繰り広げられるグローバルビジネスでは耐性が低い?)である人が多いようです。しかしここでいう配慮とは「率直さを避けて相手にソフトすることで、相手の神経にさわるようなしない」という意味での気配りではありません。日本型の気配りはどちらかというと「相手に悪く思われないように」という自己防衛型の色彩が強いように思われます。

むしろここでいう気配りとは、ネゴや計画変更の連絡、チームビルディングなどを行う場合に、パートナーとして相手の立場に配慮しながら、互いの目標達成に対して自分がどのような貢献を、どのように相手に提供できるのかを常に明確に説明していくことだと言えます。こうした努力の積み重ねによって互いの間に強い信頼関係が築かれ、それにより自分のスピーキングがさらに大きな価値をビジネスにもたらすようになるのだと思います。

 

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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