今回の記事では、英語の会話力を伸ばすために必要なステップ(初級レベル~ビジネスレベルまで)を学会での論文の発表を続けながら、大学や企業向けに英語研修を提供している鈴木武生氏に話を伺った。

<以下、鈴木氏の見解である。>

前回はTOEIC L/Rテストでは、会話力を十分に考査することはできず、また会話力を伸ばすための勉強には直接は結び付きにくいという主旨の内容をお話した。(【企業英語研修の専門家に聞く】TOEIC(L/R)試験で英語のスピーキング力を判定できるか
「ではどのようにすれば会話力が伸びるのか?」ということが疑問となる。今回はこの疑問についてお話したいと思う。


 

 まず基本として基礎文法の習得を一通り終了していることが前提となる(TOEIC500程度)。ただ高校課程までの文法は、高度な読解にも求められるPassiveな文法も含まれている。会話で最低必要になるのは中学文法+α程度だろう。こうした基本文法についてはオートマチックに口をついて出てくるまで練習しておく必要がある。
例えば:「彼は彼らにあげた」(He gave them ...)、「彼らは私にくれるだろう」(he will give me ...)、「私は彼らにあげるよう彼女に言った」(I told her to give them ...)などだ。つまり[5文型(7文型)+時制と活用+代名詞]の基本的な組み合わせが一発で出てくるまで練習しておく必要がある。

サントリー様、ソニー様でご好評 講師・鈴木の「異文化コミュニケーション」 資料請求ページへ


 第二レベルは会話テンプレートに慣れることである。会話にはシチュエーションごとによく使われるフレーズや反応パターンが存在する。例えば人を慰めるシチュエーションでは「大丈夫だって、何とかなるよ」という慰めフレーズは出てきても、「あなたの責任に帰すべき事由は何でしょうか?」という表現が出現する可能性はほぼありえない。こうしたシチュエーションと結びついた会話パターンの流れを会話テンプレートと呼んでおく。会話ではこうしたテンプレートをどれだけ多く、「対人」ベースで経験し、血肉化したかが重要になる。この「対人」つまり「人間相手に練習する」という点が非常に重要となる。これと同時に音読やシャドウィングで英語の強弱アクセント、リズム、音変化に慣れておく必要もある。


 第三レベルは、適切にフォーマルな場面で情報交換を行うための技術の習得である。これには、顧客にエクセルのデータを説明したり、トラブル対応の際に状況をうまく説明したりする技術である。これには第二レベルのスキルに加え、社会人として適切な表現と形式を用い、かつ効果的に情報を伝える技術が求められる。

 例えば、製品がうまく機能しないというクレーム電話が顧客から来た場合、その返答が「製品ダメ?へーそうなの。ごめんね」では問題が余計こじれてしまう。日本語なら「お客様、大変申し訳ありません。ではまず状況の確認をさせていただきたいと思うのですが....」というフォーマットが必要になる。

 ではこうしたフォーマットはどこで学べるだろうか?少なくとも日本語についても公教育の教科書には載っていないだろう。英語も同じで専門のインストラクターから体系立った知識を教えてもらうしかないだろう。なぜならこの次元は単なる「英語」ではなく「表現技術」のレベルの問題だからである。その意味では、第三レベルは個人教授か学校機関から問わず、ある程度の出費が必要となる。単に日本人であるという理由で、外国人に対し証券業界に関する時事トピックを日本語でプレゼンテーションする専門技術を教えられる人がどれだけいるだろうか?リアルなビジネス世界では、往々にして「単に話せればよい」以上の外国語スピーキング力が求められるのだ。

サントリー様、ソニー様でご好評 講師・鈴木の「異文化コミュニケーション」 資料請求ページへ

 

工場社員に効果的な企業の英語研修とは?
成果を上げた企業英語研修の成功事例
企業が英語研修サービスを探す前に考えるべきポイントは?
企業の英語研修におすすめの学習教材とは?(1/2)
企業の英語研修におすすめの学習教材とは?(2/2)
企業の英語研修におけるeラーニングのメリット・デメリットを徹底解説

 

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

 

Smart Habit 最新コース資料はこちらから