一般的な英語のスピーキングテストには対面型のものとオンライン型があります。対面型は日本英語検定協会が運営するGCASとブリティッシュ・カウンシル/IDP Educationが運営するIELTSがありますが、今回はオンライン型のみを対象として対策を考えてみたいと思います。

オンライン型スピーキングテストの問題構成

スピーキングテスト

オンライン型テストには下記の5種類があります。

下記に問題構成の概要を示しました。
※細かい情報は割愛してあります。

(1) TOEIC S/W 1時間20分(スピーキングの所要時間は20分)
・音読 2問(準備45秒、各45秒。発音などの音声をテスト)
・写真描写 2問(準備45秒、各30秒。文法、語彙、一貫性をテスト。瞬発力が必要)
・応答問題 3問(各問15-30秒。文法、語彙、一貫性、妥当性、完成度をテスト)
・提示情報に対する応答 3問(各問15-30秒。文法、語彙、一貫性、妥当性、完成度をテスト)
・意見を述べる 1問(60秒。文法、語彙、一貫性、妥当性、完成度をテスト)

(2) VERSANT(所要時間約20分)
・Part A: 音読 8問(発音などの音声をテスト)
・Part B: 復唱 16問(発音などの音声をテスト)
・Part C: 診断の質問 24問(語彙をテスト)
・Part D: 文構築 10問(文法をテスト)
・Part E: ストーリーテリング 3問(構文、語彙、流暢さ、発音をテスト)
・Part F: 自由回答 2問(構文、語彙、流暢さ、発音をテスト)

(3)PROGOS(ビジネスに特化、自動採点はCEFRのB2レベルまで判定。所要時間20分)
・Part 1: インタビュー 10問(各20秒以内)
・Part 2: 音読 8文を音読
・Part 3: プレゼンテーション(課題トピックについて質問3つについて答える)
・Part 4: グラフ・図を用いたプレゼンテーション(40秒準備、1分話す。瞬発力が必要)
・Part 5: ロールプレイ(40秒準備、30秒話す)

(4)Linguaskill Business(ビジネスに特化、所要時間15-20分)メモとり可能
・Part 1: インタビュー(10秒準備、20秒フルに話きる)
・Part 2: 音読
・Part 3: プレゼンテーション(40秒課題を読んで準備、1分トピックについて話す)
・Part 4: グラフ・図を用いたプレゼンテーション(1分準備、1分話す。瞬発力が必要)
・Part 5: ロールプレイ(40秒考えて各質問について20秒話す)

(5) E-CAT(CEFRのA1/英検3級以上)30分
・Part 1: 自己紹介 
・Part 2: 音読
・Part 3: トピック回答
・Part 4: 写真問題(瞬発力が必要)
・Part 5: 資料読解(30秒フルに話しきる) 
・Part 6: 質問解答 2問(論理性をテスト)

能力別テスト対策

先生本

各テストの問題構成を見てみると下記の種類の能力がテストできるようにデザインされているのが分かります。

1. 音声面(発音、アクセント、イントネーション)
2. 文法の正確さ
3. 情報の記憶保持力と再構成力
4. 十分な語彙および表現
5. 瞬発的な描写力
6. 所定時間を話しきるトピック別表現・意見ストック
7. 話を論理的に構成し展開する力

 

1. 音声面(発音、アクセント、イントネーション)

発音とアクセントは音読とシャドウイングによる筋トレ訓練でかなり上達しますが、イントネーションなどは人間相手に実際の会話を積むことが必要になるでしょう。音声の抑揚は実際の会話で繰り返し聞くことでテンプレートが形成されていくものです。

 

2. 文法の正確さ

文法は、スピードや流暢さに固執するがあまり、文法面をいい加減に扱うと大きな減点になりかねません。文章はできるだけフルセンテンスに話し、時制、活用、単数・複数に注意を払いながら正確に話す訓練を一定期間行う必要があります。

 

3. 情報の記憶保持力と再構成力

記憶保持力と再構成力はVERSANTのPart Eで求められる能力です。これはBBC Learning Englishのようなサイトから簡単なオーディオストーリーを聞き、頭に残った映像から復元する練習を繰り返すとよいでしょう。ただしそれをできるようになるには一定のリスニング力がないとできません。

 

4. 十分な語彙および表現

語彙および表現は、地道に増やすしかありません。コツとしては単語を単体で覚えるよりも500ワードほどのショートパッセージをまとめた語彙練習帳で覚えるようにするとよいでしょう。その際には音読練習も欠かさず、アクセントにも注意してください。またaccount for(説明する)など、複数の語彙から構成される連語を増やすと効果的です。

 

5. 瞬発的な描写力

瞬発的描写力は、TOEICの写真問題などを使い、まずは自分で文に起こしてみたものを添削してもらうのが効果的です。ある程度までできるようになったらそれを口頭で言う練習に切り替えます。その際にもそれを直してもらうネイティブがいると理想的です。

 

6. 所定時間を話しきるトピック別表現・意見ストック

表現・意見ストックの量は、これまでどれほど多くのトピックについて話したことがあるかによって決まります。できるだけ多くのトピックについて、ノートを作って英作文し、それを添削してもらった上で、そこで出てきた語彙を使って意見を言う練習を積むのが最速だと思います。これを繰り返すとトピック別に自然に話を展開するためのテンプレートを身に付けることができます。

 

7. 話を論理的に構成し展開する力

論理的に話を展開するのはそれほど難しくはありません。結論である意見→理由1→具体例→理由2→具体例のように因果関係が明確できていれば合格点に達するはずです。それよりも4や6で出てきた語彙・表現力をそこにいかに盛り込んでいくかという問題のほうが難しいかもしれません。

 

最後に、ソリューションやアドバイス提示を求められるTOEIC S/W(意見を述べる)、Linguaskill Business(Part 5)、PROGOS(Part 5)ではインストラクションに忠実に従う必要があります。例えばソリューションを提示しなさいというインストラクションではソリューションの現実的実現性よりも「ソリューションを提示したかどうか」が重要になります(実際にそこが得点ポイントとなっている)。そのため答える内容よりもインストラクションに忠実に従っているかどうかに注意を払う必要があります。

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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