前回の記事では、大学3年生が就活で評価されるために、残された1年間で「英語力向上」に取り組むべきだとお伝えしました。

就活で評価される学生を大学3年生から育成する方法(1)

就活で評価される学生を大学3年生から育成する方法(2)

今回は「無計画に英語の勉強をはじめてしまい、1ヶ月ももたずに挫折してしまう」という大学生にありがちな失敗パターンを回避する方法をお伝えしていきます。

学習開始時にはモチベーションが高かったとしても、やるべきことが可視化されている学習計画がなければ、学習の長期継続は難しいのが実情です。

ですが、日ごと・週ごと・月ごとの単位で細かく何時間の勉強をすべきなのかを明示する学習計画を立てるのはそう簡単なことではありません。

また必要な学習時間を割り出すためには、当然のことながら学習計画の検討前に「学習目標」を設定する必要があります。

学習計画を立てる際に必要な実現可能性の高い学習目標の設定方法に焦点をあてて、解説していきます。

目次


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正しい現状把握と目標設定の重要性

 

「現状の把握」と「目標設定」のない学習は失敗する

 

いざ英語の勉強をはじめる際に、多くの大学生がやってしまいがちなNG行動があります。

 

それは「いきなり本屋さんに行って、その場で参考書を買ってしまう」ことです。

やる気のあるうちに、行動するのは重要です。しかし、自分が本当に取り組むべき参考書が何かも把握せずに、いきなり参考書を購入するとどうなってしまうでしょうか。

ある学生は自分の成し遂げたい目標を意識するあまり、自身の英語力に見合わないTOEIC800点を目指す教材やビジネススピーキングの練習教材から手をつけてしまうかもしれません。

またある学生は、すでに理解できている内容が記載された参考書を購入してしまっていたことに後から気づいてしまうなんてこともあるでしょう。

いずれの場合でも、現時点のレベルと教材の難易度が合わずに、結局使わなくなってしまうことも少なくありません。

 


学習の効率化と継続のための現状の把握・目標設定

 

英語学習計画を立てる際に、必ず行わなければいけないのは現状の英語力の把握と正しい目標設定(=最終目標と中間目標の設定)です。

具体的な目標が学習のモチベーションになることは間違いありませんが、安易な目標設定では、先ほどの学生のようにTOEIC800点という高すぎる目標に挫折してしまうこともあるでしょう。

大事なことは、現状の英語力の把握と目標設定を合わせて行うことで、学習範囲の「抜けもれ」「重複」を最大限回避した学習計画を立てることができるという点です。


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例えば現状把握をしっかり行わずに、すでに理解できている英文法の単元を何度も複数冊の参考書で学ぶことは、勉強した気にはなりますが無駄の多い勉強です。

一方で、わからない部分があるにも関わらず、発展的な内容を先に勉強するのも、効率が悪い学習方法です。(例:現在完了形が理解できていない中で、未来完了形の項目を勉強する。)

また、学習の効率面のみならず、学習範囲の「抜けもれ」「重複」は学生のモチベーションを低下させる原因でもあります。

自分の英語力のレベルよりも平易で、よく理解できている内容を何度も繰り返し学習したところで、学生の達成感や満足感は決して満たされません。

あるいは、わからないところをそのままに学習を続けてしまうことで、理解できない内容がどんどん増えてしまうこともあるでしょう。その結果、学習負荷が増大しすぎてしまい、挫折してしまう学生も少なくありません。

このように学習の効率化と継続の観点から、英語の勉強をはじめる前に必ず目標設定と合わせて、現状の英語力の把握を行うことが重要です。

 

 

現在の英語力の把握と目標設定には「英語試験」を活用しよう

では実際に、現状の英語力の把握と目標設定はどのように行うべきなのでしょうか。

 

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結論として、学生の現在の英語力の把握と目標の設定には、英語試験(特にTOEIC Listening & Reading Test、以下TOEIC)のスコアを活用しましょう。(※1)

なかには「TOEICで良いスコアが取れても話せない」といった英語試験に対して疑問の声をもっている学生もいるかもしれません。

しかし、ここでのポイントは英語の勉強を開始する上で、自分自身の英語力に関して、最初に測定すべきことは何かです。
※1)TOEICで400点以下のスコアだった人は、TOEIC Bridge Listening & Reading Tests(以下TOEIC Bridge)で英語力を測ることをお勧めします。より正確な現在の英語力を知ることができます。

 

 

英語学習はインプット学習とアウトプット学習に大別される

 

この質問に回答するために、英語学習についてもう少し理解を深めましょう。

語学学習はインプット学習とアウトプット学習に大別されます。

インプット学習は、文法や単語の暗記、リーディングやリスニングの学習などの、自分の知識や理解として蓄積をはかる学習です。

一方で、アウトプット学習の代表格はライティングやスピーキング学習です。学んだ知識を必要に応じて頭の中で組み合わせて英語で話したり、書いたりすることを意味します。

ここでは、インプット学習とアウトプット学習のどちらが重要なのかという議論ではなく、学習過程の中でどちらを先に行うのがより効果的なのかを検討してみたいと思います。

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英語習得の過程を理解しよう(U字型発達曲線)
以下は、Kellerman(1985)によって発表されたU-shaped development(いわゆる「U字型発達曲線」)という、第二言語習得に取り組む学習者の語学力の発達過程を3つの段階で表した図です。


5-Jul-06-2021-02-01-22-76-AM※Kellerman(1985)「U-shaped development」より参照


この説によれば、以下のような流れで第二言語の習得は進むと考えられます。

 

 

英語習得過程①(徹底的なインプット)

 

学習の過程において、最初に学習者が行うべきはインプット学習です。

わからない文法項目を学んで理解したり、英単語を暗記するだけではなく、簡単な文章を繰り返し音読して、文章の型やパターンを覚えることもこの時期に行うべき学習です。

英語初心者であればあるほど、学習の序盤にインプットすべき内容は多くなります。

また、単語や文などを一字一句を暗記することも多いため、アウトプットする場面でも、暗記したものをそのまま発話するため、文法などの間違い(エラー)が比較的少ない時期です。

 

 

英語習得過程②(トライ&エラー)

 

英語に関する基礎知識が増えてきたところで、次に第2段階のトライ&エラーの段階になります。

暗記して覚えたこと・学んだことから自分なりに一定の規則を見出そうとする時期になるので、ただ丸暗記をしていた時期に比べて、間違い(エラー)が多くなる時期であるのが特徴です。

また、今までは間違えなかった問題に関しても、他で覚えた英文法の規則に引っ張られてしまうことで、間違った語法や語彙使用などが起こりやすい時期です。

ただし、第1段階で必死に学んだことを自分の頭の中で定着させて、整理しようとしている段階なので、頭の中での整理が進めば、次の正確なアウトプット段階に進んでいきます。

 

 

英語習得過程③(正確なアウトプット)

 

学んだことが頭の中でも整理されて、エラーが少しずつ減っていきアウトプットの精度が高まっていく時期です。

大量にインプットしてきた知識や単語を用いて、練習を繰り返すことで精度の高いスピーキングやライティングが習得できるようになります。

これらの一連の学習プロセスを踏まえると、英語学習の序盤にあたる「インプット学習」の習熟度を把握することで、これからの学習計画の中でインプット学習をどの程度の比率に設定すべきかの検討ができるようになります。

リーディング・リスニング力のインプット学習の測定を優先することは、決してスピーキング力などをないがしろにしている訳ではなく、学習過程の前半で力を入れるべきインプット学習の段階の「抜けもれ」や「重複」を防ぐ意図があるのです。

 

STEP2、STEP3は、TOEICを指標にした挫折しない学習目標の立て方(2)へ続く

 

 

【大学就職課の方へ】 就活で評価される学生を大学3年生から 育成する方法(1)

【大学就職課の方へ】就活で評価される学生を大学3年生から育成する方法(2)

 

執筆者:WizWe教務部

 

 

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