英文法と聞くとみなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。難しいイメージや暗記科目で退屈という印象を持っている方も多いかもしれません。
また実際に文法の勉強が苦手な人もいるかと思いますが、英文法の習得無くして英語の習得はあり得ません。
本屋さんに行けば必ずと言っていいほど英文法用の書籍スペースがあり、毎年たくさんの書籍が発売されているのも英語習得には文法学習の攻略が不可欠だからです。
今回はそんな英文法について、就職課や学生課の担当者様に参考にしてほしい学生が挫折しにくい勉強方法なども含めてお伝えします。
目次
学生は英文法の勉強でつまずきやすい
学生が英語の勉強をあきらめてしまう…
学生の英語学習をサポートする際に知っておくべき点があります。
それは学生がいつ英語を嫌い(あるいは苦手)だと感じることが多いのかです。
一念発起して英語を学び直そうと思い立った学生は、過去どこかのタイミングで一度は英語学習をあきらめた経験がある場合が多いです。
学習者がつまずきやすいポイントはどこなのかをしっかり把握しておかないと、再び同じところでつまずいてしまい、結局勉強をやめてしまうことにもなりかねません。
学生が英語を嫌いになるタイミング
大阪商業大学の1年生820人を対象に行った英語意識調査の結果、615人の大学1年生が英語を嫌い・どちらかといえば嫌いと回答しています。
また英語が嫌い・どちらかといえば嫌いと回答した615人の学生が実際に英語を嫌いだと感じたタイミングは以下の通りです。
※加賀田 哲也、小磯 かをる、前田 和彦(2007)「英語学習についての調査研究」大阪商業大学論集 第2巻 第4号より
中学1年生・2年生までにおよそ70%近くの学生が英語の勉強に対して苦手意識をもってしまったことがわかります。
それ以降については高校1年生の頃でも15%程度となっており、中学1年生と2年生の割合に比べるとかなり少ないことがわかります。
果たして中学1年生と2年生の頃に学生が英語を嫌いになってしまった原因はなんだったのでしょうか。
英語が嫌いになった理由No.1は英文法
大学生に英語が嫌いになった原因も本調査では確認されています。複数回答ありという条件で上位TOP3の理由は以下の通りです。
※加賀田 哲也、小磯 かをる、前田 和彦(2007)「英語学習についての調査研究」大阪商業大学論集 第2巻 第4号より
70%以上の学生が英文法を難しいと感じてしまったことで英語に対して苦手感を抱いてしまったのです。
また3番目の理由については、授業が進む中でだんだんとわからない文法事項が出てきた時に、正しい英文法の予習・復習方法がわからなかったことで不足部分をカバーしきれなかったことなどが想像されます。
正確に早く英語を習得するために英文法を学ぶ
大学生が苦手意識を感じやすく挫折しやすい英文法をそれでも学ばなければいけない理由はなんでしょうか。
英文法を学ぶべき理由は日本語を母語とする私たち日本人が英語をより正確に、より早く習得するためです。
特に英語と日本語は言語学的にも違いが大きいために、体系的に文法を学ばなければ習得することが難しい言語に位置付けられるのです。
英語と日本語の言語学的な関係性
母語と、習得したい外国語の違いが大きければ大きいほど習得が難しくなることは広く知られています。
※Foreign Service Institute. 「Foreign LanguageTraining」より
(https://www.state.gov/foreign-language-training/)閲覧日2021/05/09
上記はアメリカのForeign Service Institute.による研究報告で、英語を母語とする人が各国の言語を習得する際にかかる必要な学習時間を表したものです。
フランス語やイタリア語は英語によく似た言語であるので、英語の母語話者にとっては習得の難易度も低く習得に必要な学習時間もそこまでかかりません。
一方で日本語や韓国語は英語との言語的な違いが非常に大きい言語だとされており、習得には2200時間程度の時間が必要だと試算されています。
この言語的な違いが大きければ大きいほど習得が難しくなり、勉強時間もかかるという点については日本語を母語とする私たちが英語を習得する際にも当てはまります。
しかし学習初期のうちに文法をしっかりと学ぶことで、日本語と言語的に大きく異なる言語の場合であっても正確に・効率的に言語習得ができるようになるのです。
効果的な英文法の学習方法
英文法の勉強で挫折しないために
英文法はより正確に・早く英語を習得できるようになるためのものであるにも関わらず、多くの学生を挫折させる要因の1位になってしまっている状況はどう打開すべきでしょうか。
以下では英文法の学習ハードルを下げる工夫と学んだ英文法を使っている実感や達成感が持てる学習方法についてご紹介します。
学習ハードルを下げる
以下は英語が苦手で勉強をしてこなかった人や現時点でTOEIC400点以下の方におすすめしたい、参考書の進め方の3つのポイントです。
英語が苦手で勉強をしてこなかった人や現時点でTOEIC400点以下の方はまずは文法の参考書(動画教材などでも可)を最初から最後までやりきる必要があります。
挫折してしまう理由の1つに詳細に説明された分厚すぎる参考書から取り組んでしまうという点が挙げられます。
そのため簡単な日本語で書かれた薄めの英文法の本でとにかく教材をやりきることを目指しましょう。
次に取り組むべき教材が決まったら毎日何ページ(あるいは動画コンテンツ)を進めるのかを事前に決めることが重要です。
時間をかけて参考書を完璧に1周するよりも、部分的に覚えられない部分があったとしても早いペースで何周もしたほうが、忘れてしまう範囲が少なくなり定着率は高くなります。
そのため薄い参考書であればできれば1ヶ月に2周以上できるような計画を事前に立てるようにします。
また3周目ほどもすれば1周目と比べて格段に理解度が上がりますので、回数をこなして理解度を上げていくようにしましょう。
英文法を使っている実感をもたせる
次に学んだ英文法を使っている実感が持てるような英文法の学習方法についてです。
英文法の勉強は暗記することも多く、文法を勉強するだけでは英語ができるようになっている達成感を得られていない学生も少なくありません。
そのため実際に英文法を使っている気持ちになれる以下のような学習方法が重要です。
①文法規則の理解 ②場面イメージ ③例文音読 ④短文作成
①文法規則の理解
まずは参考書などに書かれている文法規則を日本語で理解します。
文章中でどんな形で使用されるのかなどは決められたルールであるため覚えなければいけない部分だと割り切って暗記します。
文法規則については英語のルールになるので、なぜそうなるのかの理由などは深く考えすぎずに規則として覚えます。
②場面イメージ
学んだ文法を使いそうな実際の場面や状況をイメージします。
I have to go home.(私は家に帰らなければなりません。)
上記のような例文があれば実際に生活の中で自分が言いそうな場面を想像してみてください。
文法の規則が理解できていることはもちろん重要ですが、英文法が含まれている文を実際に使いそうな場面と併せてイメージをすることでその定着率は格段と上がります。
ここでは実際に家に帰らなければいけないシーンを思い浮かべ、友達にこの例文を言っているイメージと、「〜しなければならない」という強制力を「have to」の文法項目からしっかりと想像することが重要です。
③例文音読
実際に例文を音読します。音読する際には該当の文法部分「have to」を特に意識します。
また例文の中に知らない単語や表現があれば必ず意味を調べましょう。
最初はスムーズに読めなくても何度も繰り返し声に出して読むことで次第にスラスラと言えるようになります。
例として出てくる文の中にはそのまま使えそうなものも多くあるのでそういった文章は徹底的に音読をして覚えます。
④短文作成
最後には学んだ文法を実際に使って自分で文章を作ってみましょう。
特に初心者の方は簡単な短い文をたくさん作ることの方が重要ですので、あまり悩みすぎることなく、まずは時制を変えたり主語を変えて文章を作るところからはじめましょう。
I have to go home.(私は家に帰らなければなりません。)(元の例文)
She has to go home.(彼女は家に帰らなければなりません。)(主語が三人称単数)
I had to go home.(私は家に帰らなければなりませんでした。)(過去形)
慣れてきたらhave (has) to の後に続く動詞を変えてみます。
自分が「しなければならない」という表現で実際に言いたい文章を考えられるのが望ましいですが、慣れないうちは前に勉強してすでに知っている表現などを組み合わせるといいでしょう。
I have to clean my room.(私は部屋の片付けをしなければなりません。)
My little sister has to sleep at 9pm.(私の妹は9時に寝なければなりません。)
I had to do my homework everyday.(私は毎日宿題をしなければなりませんでした。)
ポイントは時間をかけて凝った文章を考えるのではなく、シンプルなもので構わないので早くたくさん考えられるようにすることです。
3〜5文程度考える練習を毎回行っていると次第に使える表現がどんどんと増えるのです。
ただ文法を暗記するだけでなく、短文であっても自分で使うことで定着度も達成感も格段に高まります。
【おわりに】
英文法を学ぶ時期は学生の挫折率が高い期間ではありますが、学習をはじめて1〜2ヶ月の間に英文法の基礎を身につけることができれば、その後の学習効率は格段に上がります。
そのため大学の就職課や学生課にも英文法の勉強方法に悩んでいる学生からの相談があれば、特に以下の点についてアドバイスをしていただけると幸いです。
①英文法の学習ハードルを下げる工夫
②参考書をただ読んで終わりではなく、使っている実感が持てる英文法の学習方法
1人でも多くの学生が英文法の学習を乗り越えられるようにお祈りしております。
執筆者:WizWe教務部
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