現在英語プログラムにはさまざま法人向けサービスが提供されており、選ぶ際にも困っている人事担当者のかたも多いのではないでしょうか。かつて法人向けプログラムを選ぶ時、費用が高いか安いかで選ぶ場合も多かったと思います。
しかし今日グローバルな動きに日本が取り残されつつあるなか、グローバル人材の育成はどこの会社にとっても喫緊の課題となっています。そのため研修サービスも二種類に分化します。一つは人材育成という枠組みおけるスキル研修であり、もう一つは具体的な目標、例えばTOEICスコアのように一定のスコアを満たすためのドリル学習です。
グローバル人材育成研修
これは単に「英語で会話をする」といったレベルを超えるものです。そのためインストラクターもそうした知識、技術、経験を持ち、教材もそうした目的のために入念にデザインされたものでなければなりません。
まずプログラムを選定するには自社のニーズと目標を十分に吟味する必要があります。例えばビジネス交渉スキルを学ぶプログラムであれば、単に交渉のテーブルで使う英語表現を学ぶだけでなく、西欧文化のような直接型コミュニケーションの地域の人たちが用いるバーゲニングスタイルとその弱点についての知識を押さえる必要があります。
そのため、プログラム内で行われるシミュレーションや演習においてもそうした知識・技術・経験を持ったインストラクターと教材の選定が必須となります。顧客企業はそうしたプログラムを自社のニーズに最適化できるよう研修業者と協議を行う必要がある一方、例えば赴任/担当前任者などからの聞き取りを行い、彼らからのアドバイスや情報を研修企業に提供し、現場担当者の状況や問題点もカバーした研修をともに作っていく必要があります。「全部研修企業にお任せします」では充実した研修結果は望めないでしょう。
目標達成のためのドリル学習
最後に研修プログラムの管理についてですが、研修プログラムで失敗する典型的状況について挙げておきます。
(1) すべてを業者お任せにする。
(2) 費用を惜しんで研修対象者層を広げた結果、ニーズもレベルも異なる人が多数参加してしまい、誰も満足させることができなくなる。
(3) 時間配分や研修方式などにおいて社内ルールを優先するがあまり、コースデザインが中途半端になったり雑になる(本来数時間必要なプログラムが30分に圧縮されてしまうなど)。
(4) しっかり管理したいと思う人事の研修担当者が、研修プログラムの管理をマイクロマネジメントしすぎてしまい、コース設計に失敗する、
(5) 受講生の動機付けが不十分でなく、研修に集中できなかったり、否定的または反抗的な態度になる。
(6) 最低限の費用で最大効果の研修を求める。この場合、受注を優先したい研修業者はコストを大幅にダウンしても受注しようとするため、インストラクター、教材、研修デザインの質が非常に悪化する。入札などはこうした弊害が多い。
(7) ネイティブ講師を過大評価しすぎる。(優秀なバッターが必ずしも優秀なコーチになれるとは限らないのと同様)
まとめると、研修業者による創造的な提案と、それに対する顧客企業の協力姿勢と信頼関係、そして知識・技術・経験のあるインストラクター、目的に合致しアップデートされた教材とプログラム、十分なサポート体制、十分な予算(研修業界は安かろう悪かろうが現実です)、研修企業側において専門家によるアドバイスが利用できるかどうか、などが間違いのない選び方のポイントとなります。
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著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会)