英語は国内で最も普及している外国語であり、大半の人が高校課程までの英語を学習していることから、目標となる学習範囲が非常に広い範囲におよびます。そのため各レベル/TOEICスコア帯でそれぞれ異なる能力アップ目標を設定する必要があります。以下ではTOEICスコア帯を基本に目標設定のポイントを見ていきます。

各スコア帯の境界線とコミュニケーション能力の関係

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TOEIC L&Rのコミュニケーション能力レベル表によると、まず470が一つの大きな境目になっています。そして次の大きな境目が730であり、その上が860となっています。

470未満のスコア帯Dに属する人はコミュニケーション能力がない、もしくはきわめて限られたレベルのコミュニケーション(単語レベル)しかできないと定義されています。つまり470に達するためには中学英語の基礎をクリアーすることが必要となります。

次のスコア帯Cは470から730までは限定された範囲や状況であれば基本的なコミュニケーション能力を備えているというレベルです。しかしこのレベル帯は400台から700までと幅広く、実質的には600あたりに1つの境界線が、そして650~670あたりにもう1つの境界線があります。

最初の600レベルの境界線は英検準2級に達したレベルに相当し、650/670レベルが高校英語修了レベルつまり英検2級をクリアーしたレベルに相当すると考えられます。650/670前後をクリアーできたら、次は英検準1級レベルを目指す準備段階に入ります。このスコア帯は730あたりまで続きます。そして730から860になると余裕をもって英検準1級に合格できるレベルになり、860を超すと英検1級レベルが射程に入ってくるでしょう。各スコア帯の境界線とコミュニケーション能力の関係をもう一度整理しておきます。

470未満
まだ基本的なコミュニケーションレベルがなく、単語レベルであれば意思疎通が可能。Part 3&4のリスニング問題、Part 6&7のようなリーディング問題では大きな困難が伴なう。

470~600
限られた場面あれば最低限のコミュニケーションが行える。中学校レベルの基礎英語は理解しており、英検準2級レベルには達しているが、まだ語彙や表現が不十分で、文法知識にも穴がある。またPart 4のリスニング問題、Part 6&7のようなリーディング問題では正解率がまだきわめて低い。

600~650/670
限られた場面あれば最低限のコミュニケーションが行える。英検準2級に十分合格できるレベルに達しているが、複雑な文章のリーディングはまだ苦手で、リスニングでも集中力が切れたり知らない語彙に出くわすと理解力が大きく落ちる。Part 4のリスニング問題、Part 6&7のようなリーディング問題では余裕をもって解く余裕がない。

650/670~730
英検準1級の準備段階のレベル。基本的文法力と語彙力は持っており、長文のリスニングやリーディングについても正解率6割程度の理解力を持つ。しかしPart 4およびPart 7はまだ苦手でリスニングおよびリーディングともにスピードの壁をいかに超えるかが焦点となる。

730~860
英検準1級の合格圏内。語彙の充実、リスニングおよびリーディングにおけるスピードの壁をいかに超えるか(速い英文を聞いて理解し、長文を速く読む)がカギとなる。

860~
英検1級の合格圏内。

スコア帯をクリアするための学習目標設定

22660423そこで上記のスコア帯をクリアーする上で、470、670、750(670と750はそれぞれのスコア帯を少し上回わったレベルに設定)が、分かりやすい学習目標として立てることができます。

470をクリアーする目標を立てる場合
(1) 中学レベルの英文法
(2) 最低限のリスニング力
(3) 最低限の文書読解力

の3点を充実させることが必要となります。そのためには、中学英文法の総復習、会話ダイアログを繰り返し音読する練習、基本例文の暗記、そしてレベルはやさしくても段落単位でまとまった文のリーディング練習が最低限必要になります。

670をクリアーする目標を立てる場合
(1) 高校レベルの英文法
(2) Part 2&3までは十分に対応できるリスニング力
(3) 長文リーディング練習
(4) TOEIC独自の頻出語彙力(ビジネス語彙も含め)

の4点を充実させる必要があるでしょう。(1)はできるだけ問題を繰り返すこなすことが必須になり、(2)では音読とシャドウイングが必須となります。

750をクリアーする目標を立てる場合
(1) 語彙力のさらなる増強
(2) リスニングおよびリーディングにおけるスピードの壁の克服
が中心課題となります。

 

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執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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