ちょっと古い言葉でしたがバブル時代に「成田離婚」という表現がありました。新婚旅行で海外に行ったのに、二人の価値観が合わないことが明らかになり、帰国して成田で離婚する、というカップルを表しています(本当に成田で離婚を宣言されたかどうかは不明ですが)。

これとともに「成田決心」という言い方もありました。海外旅行が普及し、海外に行ったはいいものの英語がまったく通じず、それまでは「英語なんかできなくたって身振り手振りでなんとかなるよ~」と言っていた本人が、現地でのくやしさをばねに英会話練習を成田で一念発起するというものです。しかしそれもそこまで自宅に帰って次の日になるとそんな決心もどこへやら、というのが大半でした。

英語学習の習慣化に必要な「強い動機づけ」

746685しかし、そうなるのも一理あるのです。母語の日本語は気付いたら話せるようになっているので普段は意識していませんが、どんな勉強でもコツコツやるのは大変なものなのです。日本語の漢字ですら、毎回分からない漢字や漢語表現に出くわしたらすぐにメモに記して、あとから辞書で調べて復習している、というような日本人はあまりいないと思います。ちなみに日本語を学習する外国人は、生(なま)ビール、生(せい)物、生(い)き物、出生(しょう)率、武生(たけふ)など、例外の多い日本語漢字の読み方はみな一つ一つ確認しながら覚えているのです。

英語は言語であり、知識の学科とは性質をすこし異にします。それは学習に反復と継続が必要になる点です。スポーツ選手やダンサーは、毎日練習したり体を動かしたりていないと技が落ちたり体がなまると言います。英語も同じで、反復と継続が必要です。週に1度よりも毎日10分のほうが継続するほうが効果があるのです。まとめてやろうとしても1回に学べる情報量は限られているので結局努力が無駄にある上に、忘却曲線が学習曲線に優るので穴の間バケツに水をためるようになってしまいます。

そこで英語の勉強を習慣化するためには、まず強い動機づけが必須です。もっとも強い動機付けは「楽しさ」でしょう。しかしこの楽しさは主観的なもので、強さも継続度も人によって異なります。そのため各個人が持つ興味の対象と英語の学習をうまく結びつけられるかどうかがカギとなります。

音楽・映画・ドラマ・小説

音符
まず思いつくのは趣味と英語を結びつけることです。例えば映画を字幕なしで見たいとか、小説を原書で読みたい、また外国語ポップスをそのまま理解できるようにしたいというものです。

音楽は初級文法の復習、また発音、アクセント、発話のリズムパターンを強化するのには役立ちますが、長期的に続くような習慣にはなりにくいため、習慣化のきっかけにするにはよいかもしれません。

映画やドラマは口語表現を覚えたり、リスニングを強化するのに役立つので長期にわたり習慣化の項目にすることができますが、会話力を付ける練習は含まれていないので、どこかで別途会話力を鍛える練習をする必要があります。

小説は語彙力や速読力を強化する効果が見込める娯楽で、これも長期的な習慣化対象となると思います。ただし本格的な小説は語彙がかなり難しいので最初は軽い読み物、特に語彙数が一定に制限されたシリーズであるGraded Readers(さまざまな出版社から各レベルが出ている)がよいと思います。

旅行

旅行海外旅行は頻繁に行くことはできないため習慣化の対象にはなりにくいかもしれませんが、一つは力だめし、もう一つはモーチベーションの維持にはもってこいです。実際に自分の英語が現地で通じたという思いは大きな喜びと自信につながりますし、現地で何か興味のある対象(例えば史跡めぐりなど)が見つかれば、帰国後その知識を補充する上で英語の勉強が進むかもしれません。また海外で友人ができれば継続的に連絡を取ることで英語のコミュニケーション量が増えるはずです。

友人

友人日本国内で英語を話す友人を作るのも一つの手です。最近は国際交流パーティー(ただし2021年時点ではコロナウィルスの影響で自粛するところが多くなっています)もあるので積極的に友人を作ることができます。ただし問題なのは、「英語を練習したいから友達になりたい」というのはあくまでもこちら側の事情であって、先方から見れば「それは単に無料ボランティアのマンツーマン英語教師じゃないの」と思われるかもしれないのでそのあたりは注意が必要です(異性交際相手を探す場合は事情が別かもしれません)。むしろ趣味サークルなどで知り合うのが共通の興味の対象をシェアできて長続きする友人関係になると思います。

英会話ラウンジ

2067927英会話ラウンジは非常におすすめの習慣化方法と言えます。費用もあまりかかりませんし、そこでは一定の人(日本人、外国人ともに)が常客となってますので友人を作ったり、一緒にイベントに参加できる可能性が国際交流パーティーよりも高いと言えます。筆者は今はもうなくなってしまった恵比寿の某英会話ラウンジで多くの国の友人を作ることができました。英語力維持とモーチベーションアップには非常によい機会となりました。さらには英語以外の言語数カ国語に対する興味も生まれ、学習は今でも続いています。もちろんそこで知り合った国内外のよい友人との交流は現在でも続いています。


執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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