外国人社員向けの日本語研修には、教室で行うもののほか、オンラインレッスンも数多く行われています。フリーランスの日本語教師がマンツーマンで研修を行うこともあれば、WEB会議システムを利用したワークショップ形式で複数人を対象に行うものもあります。研修形態や目的別に、どのようなオンライン研修が可能で効果的なのかを探りました。

 

オンライン日本語研修の形態と、その目的・効果は?

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オンライン研修と一口でいっても、その実施形態はさまざまです。参加する受講者の人数、「講師と受講者」「受講者同士」のやりとりの有無、またその研修がリアルタイム(同期型)なのか、受講者が都合のよい時間に学ぶオンデマンド(非同期型)なのか、など、いくつかのパターンがあります。まず、それぞれの特徴や配慮すべき点などを整理してみます。

 

①講師と受講者が1対1で行うマンツーマン形式(同期型)

スカイプなどを使って、受講者のニーズにカスタマイズして行うことができます。インターネット回線さえつながる環境であれば、遠隔地であることは妨げになりません。リアルタイムでのやりとりが可能な特徴を生かし、会話レッスンなどに向いているでしょう。ただし、講師との関わり方が大きくなる分、講師と受講者の相性が合うかどうかは考慮に入れておきたい点です。

 

②講師と複数の受講者で行う講義形式(同期型)

web会議システムなどを利用し、講師と複数の受講者が参加して行う形式です。講師が一方向で話す講義形式はもちろん、受講者が発言することも可能なので、双方向でのリアルタイムのやりとりも可能です。ただし、回線の接続状況や受講者のデバイス(パソコンかスマートフォンかなど)やPCスキルの違いによって、受講のしやすさや効果に差が出ることもあるので、講義資料、授業の進め方などに工夫や配慮が必要になります。

 

③受講者が都合のよい時間、場所で自主的に学ぶオンデマンド形式(非同期型)

学ぶ内容がパッケージされた形で提供され、受講者はそれを、自分の都合に合わせ、自主的に学ぶ形式です。受講者のペースで学ことができますが、自主性に任せられるため、継続できるかがポイントになるでしょう。そのためには、受講者と研修提供者双方が学習履歴や達成度を把握しやすくし、適宜、フィードバックやアドバイスなどを行って、学びを支援する工夫が必要でしょう。

 

④オンデマンド形式とリアルタイム講義を組み合わせた形式(非同期型と同期型混合)

オンデマンド形式で知識や基礎を学び、学んだことを実践したり、成果を発表したりという部分をリアルタイムで行うなどの実施方法があります。どの部分をオンデマンドにし、どの部分をリアルタイムで実施するのか、効果的な研修とするためには、その使い分けと組み立てをしっかり設計する必要があるでしょう。

 

どの形式で、どんなオンライン日本語研修を実施すると効果的?

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次に、それぞれの利点や特徴をもとに、企業はどのような人を対象に、どのような形でオンライン研修を提供したらよいか、研修を行う時期にわけて考えてみましょう。

 

①入職前の人を対象とした研修では?

入職前の研修目的としては、新社会人であれば、社会人としての基本的なマナーや敬語を知る、業務に必要な基礎的な日本語を知るといった内容が挙げられます。一方、中途採用者であれば、業界事情や業務に必要な知識を身につける、日本語会話力を磨くなどが挙げられるでしょう。

基本的な知識を学んだり、知識の定着を図るための繰り返し練習をする部分は、オンデマンド形式がよいでしょう。例えば、スマートフォンなどのアプリにして隙間時間を利用して学んでもらったり、一定の期日を設け、その間に自主学習してもらった後、成果はマンツーマンのリアルタイム研修で確認し、フィードバックを行えば効果的です。

 

②入職後の研修では?

職種別、ニーズ別に、より具体的でピンポイントな内容で、継続的にスキルアップを図れるような研修プログラムを提供することが望ましいでしょう。業務に就くと自主学習の時間が取れない人もいるかもしれません。遠隔地でも、時差が問題にならなければ、業務時間内にリアルタイム形式で行うのが効果的な場合もあります。

例えば、業務に必要な日本語会話力をアップする、あるいは、ビジネス会話にとどまらず、取引先の人と雑談ができるような会話力を付けるなどの場合、専門の日本語講師とのオンラインレッスンで、実践的なトレーニングを行うことが可能です。一方、各種日本語力試験の受験準備にはオンデマンド型が効果的でしょう。

 

③リーダー育成研修、キャリアアップ研修では?

仕事の経験を積んでさらにキャリアアップを目指したい人や、将来のリーダー育成などを目的とした研修もオンラインでの実施が広まっています。

より特化した専門知識を身につける、リーダーに必要な高いコミュニケーションスキルを磨くなどの研修内容が考えられるでしょう。多忙なポジションにいる人も多いので、オンデマンド式の研修と、双方向のやりとりが可能な同期型の研修をうまく組み合わせ、進歩や達成感を実感しやすい方法で目標にたどりつけるようにレッスンを設計することがポイントとなるでしょう。

 

学ぶコンテンツやツール、目的を明確にし、選択する

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リモートワークが広まりつつあり、今後は、多くの業務がオンラインで行われることも増えると予測されます。学ぶためのコンテンツやツール、デバイスも充実してきているので、身につけたいスキルや目的をはっきりさせ、最適な方法や形式を選択・提供できるとよいですね。

 

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執筆者:青山美佳
フリーランスライター・編集者 
成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。
主に、外国人の日本語学習、言葉とコミュニケーションにかかわる分野を中心に、日本語能力試験の問題作成・テキストの執筆、取材・記事執筆、編集・校正、文章添削などを行う。

 

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