法人英語研修で最も形に見える成果を出しやすいのはTOEIC L&Rテストを用いた研修です。成果が明確に数値として出るため、受講生は努力が報われた達成感が感じられ、人事部としても対費用効果という点で納得しやすいからです。 

TOEICテストを用いた研修は、TOEICテストのスコアアップ自体を上げるものと、自己学習による英語力向上をTOEICテストで確認するものがあります。いずれにしてもキーとなるのは 

 

1.受講生のモーチベーションアップおよび維持 
2.受講生の学習進捗管理 
3.受講生へのフィードバック 


3点となります。

 

プログラム別 法人英語研修の成功事例 

<オンラインによる英語学習> 

特にオンラインによる英語学習はモーチベーションの維持が非常に重要になります(多くの通信教育の継続率が低いのも同じ理由)。そのため講師によるスクーリングセミナーを、コースの冒頭、中ほど、そして終わりに設け、学習法の解説、モーチベーションのアップ中間地点でのアドバイスや相談、最終時点における総括や評価を実施するやり方が非常に効果的となります。 

また、管理部門による進捗管理と日々のフィードバックやアドバイスも重要な要素となります。実際に大きく成果を出せたプログラム例(TOEICスコア平均100点以上アップ)では、オンライン学習に講師によるスクーリングを組み合わせた上で、学習化管理とフィードバック体制の充実が図られています。これは学習者数の多い金融機関やメーカーで一定以上の成果を上げています。 

その他、受講生のモーチベーションを維持する上で、費用の一部自己負担制、少人数チームによる学習班制(チームを編成してチーム同士で成果を競わせる)、教材を自己選択させる柔軟な態勢も効果を発揮します。ある大手電子部品メーカーではこうした方法によって費用を削減しながら研修の目標値(TOEICなど)を達成しています。 


<オンライン対面型のスピーキング> 

特に入門・初級レベルプログラムは企業研修において成功していると言えるでしょう。ただしこの場合、一定期間にわたる学習スキームの一環に組み込むことが重要で、単にIDを割り振って参加させるだけでは落ちこぼれる人が続出する可能性があります。成功した対面型スピーキングプログラムでは、通常、学習者のモーチベーション維持し励ますチューターと達成率管理者が置かれています。 


<ライティングプログラム> 

講師による集合レッスンとオンラインによる添削指導をカップリングしたものが高い効果を上げています。コースのはじめに講師からライティングの学習方法と基本的技術についての指導が行われます。次に受講生は数週間(例えば3カ月程度)のオンライン添削を受けますが(ビデオストリーミングによる講義もついていればなお可)、その際も添削者からのフィードバックとチューターからのアドバイスを受けます。手厚くサポートするのであれば2か月目の頭および3カ月目の頭に再び集合研修を行ない、最終日にまとめの集合研修を行うが理想的です。 

  

<異文化研修> 

赴任地や取引先地域ごとに5人程度の島を作り、4~7つ程度の島ごとにグループディスカッションを行ないます。前半で異文化概論、誤解のメカニズム、地域ごと文化と日本のオフィス文化の違いについて学んだのち、異文化上の摩擦・誤解・対立についてのグループごとにケース分析とソリューションを行い、講師からフィードバックを受ける形式が高い効果を生みます。最近では地理・歴史・宗教の知識が必要との認識も企業で高まっており、こうした側面を含めたプログラムが、特に赴任地の多い大手機器メーカーなどで成果を上げています。 

また社内でも異文化をめぐる問題が明確な場合には、事前に問題を聞き取り調査し、現場での体験者、現地出身の外国人も招き、グループディスッション、パネルディスカッション、Q&Aなどを実施するという形式のものも人気がありますこれは新卒留学生が日本人現場管理者と衝突し、転職してしまうことに悩んでいたある有名衣服メーカーで採り入れられたプログラムです。 

  

<プレゼンテーションプログラム> 

プログラムの構成内容(何をプレゼンテーションスキルとするのかその体系のクオリティー、受講生が読み原稿を事前準備させる管理体制、講師の技量、読み原稿の添削・フィードバック、ビジュアルマテリアルの作成技術の指導および修正のためのフィードバックに十分な時間と配慮が行われているプログラムは高い成果を上げています。 

ネイティブ講師が担当するからといって、単に「習うより慣れろ」や「声を大きく堂々と」というようなものでは効果は期待できません。日本人の前で日本語で話をする訓練を行う場合、単に「日本人講師だから」という理由でプログラムを選ぶことはないはずです。むしろどんな技術をどう教えるかを明確に定義してあるプログラムを選択すべきでしょう。 

  

<対面型集合レッスン> 

最後に講師による対面型集合レッスンについて述べておきます。これは英会話のもっとも典型的な運営形式として多くの企業で実施されていましたが、今日では減ってきており、こうしたクラスついては、民間学校に各個人が通学するように推奨されるようになっています。この形式のクラスは無意味なのでしょうか? 

実は中上級レベルの人が説明力やディスカッション力を上げる場合、このクラスが最も効果的で、企業によってはこうしたディスカッション力向上に特化したクラスを実施しているところもあります。ただしその場合、受講生が持つ問題の事前分析、受講生による十分な事前準備、講師による的確なフィードバック、そしてその後一定期間フォーローする体制が求められます。しかしまだこうした研修は端緒についたばかりですが(一部の政府系機関では長く実施されています)今後より多くの企業に採用されるものと思われます。 

 

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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