英語が苦手な方にとっては、これまでに一度以上、英語に挫折したことがあるかもしれません。学生時代に英語に挫折したものの、「何とか逃げ切れた」と思ったのもつかの間、社会人になってから「嬉しくない再会」となった方も少なくありません。しかし、その挫折経験は、才能や根性が不足していたわけではありません。とはいえ、苦手意識があるまま改めて英語学習に取り組むことは、スタート地点が感情的にマイナスな状態となります。 

  かつて挫折した原因を明確にすることで、「モヤモヤした悩み」が「克服すべき課題」へと変わります。課題が明確になれば、対応もしやすくなります。シンプルにいえば、挫折の原因とは「理解できなかった」と「続かなかった」です。以下では、挫折の原因3つと、それらに対処する方法についてご紹介します。 

 挫折の原因その1:レベルが合わなかった

 挫折の原因の多くは、「理解できなかった」というものです。知識をつけていくプロセスにおいて大切なのは、新しい知識(=知らないこと)を、すでに持っている知識(=知っていること)とつなげていくことです。今持っている力を超えるところから学び始めてしまうと、新しい知識と結び付ける知識自体が欠けているため、理解ができません。英文法で例えると、「分詞」を理解するためには「能動態/受動態」の知識が不可欠ですが、能動態や受動態が分からない状態で分詞を学んでも理解することはできず、挫折一直線となることは想像に難くないでしょう。 

  難しいことをやれば、それだけ速く上達するわけではありません。どんなにモチベーションが高かったとしても、現在のレベルを超えるものから始めてしまうと、「いくら学習しても、ほとんど理解できない状態」となってしまうため、続けることが難しくなります。 

  そうはいっても、自分のレベルがどこにあるのかわからない方もいらっしゃいます。その時には、まず現状分析のために「レベルチェックテスト」を行うことで現状を把握することができ、適切なレベルからスタートすることができます。「テスト」というと「できなくてはならない」という意識がはたらきがちですが、あくまで「現在地」を確認するGPSとしての役割だということを理解する必要があります。 

 

挫折の原因その2目的・目標が曖昧だった  

 やる気がないわけではなく、また分からなかったわけでもないものの、「続けることができなかった」という挫折もあります。これは「意志が弱い」ということではなく、学習の目的や目標が不明瞭であったことで学習の停止(=挫折)へとつながった例です。特に「英語に取り組む意味」が曖昧な場合、英語学習の優先度が高まることはありません。 

  これは英語学習に限らず全てに共通します。たとえば、ダイエットで考えてみても、「年末の写真撮影までに3キロやせる」というAさんと、「できたら痩せたい」というBさんでは、どちらの方がダイエットを継続できるかというと、おそらくAさんでしょう。Bさんにとって、痩せることは「願望」でしかありません。Aさんの「決意」によって、ダイエットへの優先度の高さがわかります。 

  そこで、英語学習の優先度を高めるために、英語学習の目的や目標を明確にする必要があります。続かない理由のひとつは、「意志の弱さ」ではなく「意味の弱さ」です。まずは「何のために」を明確にすることで、英語力を高める理由ができあがります。そのうえで、目標を立てます。目標設定のコツに、「SMARTの法則」と呼ばれるものがあります。SMARTとは、目標設定における重要なポイントの頭文字を取った5つの項目です。 

 

 S: Specific(具体的) 

 まずは「目標が具体的」であることが大切です。第三者が見ても達成できたかどうかを判断できる目標でなくてはいけません。 

 M: Measurable(測定可能な) 

 スコアや時間、回数など、数字が入っていることで、達成したかどうかの測定ができます。 

 A: Achievable(達成可能な) 

 無理のない現実的な目標であることで、達成への意欲が湧きます。 

 R: Related(関連している) 

 上で述べた「意味」や「目的」が自分事になっていることが大切です。 

 T: Time-bound(時間制限がある) 

 「いつか」ではなく「いつまでに」という期限があることで、進捗等を途中確認することができ、達成率も高まります。 

 

挫折の原因その3:学習スケジュールがなかった

 明確な目標だけで学習を習慣化できるわけではありません。学習計画が曖昧な場合、継続できないケースが多くあります。「目標(=ゴール)」と「何を使って学ぶか(=ツール)」が明確であったとしても、「いつ」「どこで」というスケジュールがないことで、「学習を忘れてしまう」という状況へと陥ります。よく「時間を作る」と言われることが多いですが、どちらかといえば「時間を埋める」ことをお勧めします。仕事でもスケジュールが重要なように、学習においてもスケジュールは重要です。そこで、仕事や生活のスタイルに基づいて、先に学習スケジュールを決めて時間を確保してしまうのです。 

  スケジュールのコツは、「朝の時間の活用」と「流れへの組み込み」です。日常的な優先事項は、通常は仕事の業務でしょう。そのため、夜20時から学習をする予定を立てていても、残業等で学習ができないケースも少なくありません。そこで、「朝」に学習を組み込むことで、残業により学習できないという事態は発生しませんし、何よりも頭がスッキリしている状態で学習に取り組める利点があります。また、朝の場合は、「家を出る時間」や「仕事を始める時間」という期限があるため、ダラダラと学習をすることなく集中できるという効果もあります。また、朝の時間以外にも、昼休みを少し早く切り上げて、午後の仕事に入る前にリスニングを行ったり、帰りの電車に乗る前に駅前のカフェに立ち寄って30分だけ学習をしたり、という流れの中に組み込むことも効果的です。

 

グループで挫折を防ぐ 

 学習は孤独な部分があります。そこで、数人の学習者グループを作って、サポートし合える環境を作るのもお勧めです。アプリを活用してもよいでしょうし、メール等でのやり取りでもよいでしょう。同じ部署内やチーム内など、物理的に近い距離に全員がいる場合には、定期的に昼休みや就業後に集まるなども可能でしょう。進捗具合を報告し合ったり、情報交換をしたり、コミュニケーションが取りやすい状態を作っておくことで、挫折せずに学習の習慣化へとつながりやすくなります。 

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rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

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