「言語」とは、通常、生活の中で身につけていくものです。もちろん、日本国内で普通に生活する中で英語が必要になる場面はほとんどないため、生活の中で身につけるのではなく、学習を通して英語力を高めなくてはいけないという側面はあります。単語を覚えたり、文法を身につけたりする学習や、リスニング力やリーディング力を高めるためのトレーニングは大切ですが、それだけで英語が使えるようになるわけではありません。また、学習を個人の努力のみに頼る状況では、学習の進捗が芳しくないというケースも少なくありません。

 今回は、社内に「使われている英語に触れる環境を作ること」と「集団で英語に触れる環境を作ること」の2つの効果をご紹介いたします。会社にとっての英語の重要度や社風に合わせて、取り入れられることや取り入れられないこと、また一部応用した形での採用など、アイデアのたたき台としてお読みいただけましたら幸いです。 

 1. 使われている英語に触れる環境作り 

 英語力を高めるために必要なことは学習だけではありません。生活や仕事の中で英語に触れていくことで、無意識かつ自動的に英語で処理することへとつながります。2012年から社内公用語化をスタートさせた楽天グループでは、全体集会や会議の言語を英語に変え、TOEICスコア要件を設定しただけでなく、社内の掲示物やエレベーターの自動音声まで全て英語にするという徹底ぶりでした。 

  同様のことはなかなかできませんが、手始めにポスターなどの社内掲示物を英語にしたり、コピー機やプリンターなど電子機器の表示を英語にしたりするだけでも英語を日常化することができます。また、ウォーターサーバーのような和製英語の名称を、water dispenserのように正式な英語で表記したり、場所の名前について「倉庫」ではなくStorage Roomという名称を付けたりすることでも、手軽に正確な英語をそのまま身につけることができます。もしオフィス全体で英語施策を行っている場合、手軽かつ気軽でコストがかからない部分から職場環境の英語化を図ることで、使われている英語に触れる頻度を高めることができます。 

 

2. 集団で英語コミュニケーションを取る環境作り 

  英語しか話せない外国人社員がいる場合を除き、むりやり会議で話す言語を英語に変えることは生産的ではなくなる場合があります。そこでお勧めするのは、昼休み等を活用した英会話環境の設定です。たとえば「ランチタイムEnglish」と称して、研修やe-learning受講者を対象とした情報交換も兼ねた「英語で話す場」を設けるのも効果的です。「日本人同士で英語を話しても、正しい英語かどうかわからない・・・」という考えで躊躇される方もいらっしゃいますが、「正確さ」を追求するのはレッスンや学習に任せて、その代わりに「ランチタイムEnglish」では、英語を口に出すスキルを伸ばすことを優先します。英語を話すことに慣れていないとHe doesn’t…ではなく、He don’t…と言ってしまったり、過去のことを現在形で話してしまったり、といった「知っているのにできない」ということが発生します。このズレに気づくことで、徐々に正確な英語へと修正されていきます。 

  ランチタイムを利用して、気軽に英語の環境を楽しむ時間となるため、英語を学ぶことのストレスを減少させ「もっと話せるようになりたい」という感情が芽生えることにもつながります。また、この機会を「学習の共有の場」としても活用することで、悩みの相談やアドバイスなどのやり取りもできるため、孤独な作業としての学習ではなく、仲間との共同作業のような位置づけに変えることができます。実際に、学習チームなど他者とのやり取りの有無が、学習の継続率やe-learning等の修了率に影響を与えることは少なくありません。  

 

学習の質への転換 

 今回は2つの「英語環境作り」を取り上げ、個人の努力に一任するだけでなく、日常また集団で英語に触れる環境をつくることによる効果についてご紹介しました。実際に使われている英語に触れたり、意識的に英語を話したりすることで、英語が日常的なものになり、「これを英語で何と呼ぶんだろう?」や「こういう場合は英語で何と言うんだろう?」といった疑問が起こりやすくなります。この「何て言うんだろう?」という疑問が起こるというのは、「知りたい」という能動的な感情です。受動的になりやすい英語学習が、環境を通して能動的なものに変わることで、同じ時間をかけた学習であっても得るものや発見の質が高まります。 

 他にも、社内でできる英語環境作りはあると思います。今回ご紹介した英語表示に変えるという手軽なものから「英語縛り」のランチタイム、さらにはよりレベルを上げて、外国人社員や海外の現地スタッフ向けに日本の職場を英語で説明するなど、「準備&発表」というプロジェクトベースのものを組み込むこともできるかもしれません。研修や教材も大切ですが、いかに英語を日常化するかによって、英語への意識向上やスキルアップにも効果を上げることができます。ぜひ会社に適したものを取り入れてみてください。 

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rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

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