中国語検定試験の最新状況2回目は、YCT(青少年向け中国語検定試験)、BCT(ビジネス中国語検定試験、商務漢語考試)、TECC、中国語検定試験についてお話ししたいと思います。

 

YCT

最初にYCT(青少年向け中国語検定試験)についてです。
YCTは中国語が母語ではない若者を対象としたテストです。本テストは中国の国家機関である教育部(文科省に相当)する中国国家漢弁(国家漢語国際推進指導小組弁公室)が運営するテストで、世界共通の公的資格となります。また中国国家漢弁は孔子学院を運営統括する組織でもあります。

中国国家漢弁は、世界における中国語教育と若者の中国語能力を向上させるため、同テストを世界的に実施しています。日本における受験対象者は29歳までです。
 
テストは筆記と会話があります。筆記試験は100点満点で、6割以上が合格となります。会話試験は初級と中級の2レベルがあり、いずれも100点満点で、6割以上が合格です。級の段階は1級が最もやさしく、4級が最高となります(HSK3級、CEFR B1レベル相当)。


YCT

実施回数はそれほど多くなく年2回程度で、受験料は3,000円~5,500円となっています(2021年8月調べ)。


BCT
前述のYTCと同じ組織が運営するビジネス向けのテストがBCT(ビジネス中国語検定試験、商務漢語考試)です。
内容がビジネスに特化したものとなっており、いわば中国語版TOEIC的な位置づけとなります。グレードには初級のBCT-A(CEFRのA1-B1に相当)と中上級のBTC-B(CEFRのB2-C2に相当)があり、スコアではなく合格不合格で判定されます。実施はYCTと同様に年2回程度、受験料は初級が5,000円、中上級が8,500円となっています。

◆BCT-A

BCT-Aにはヒアリング、読解、漢字書き取りテストの三種類があります。

(1)ヒアリング
写真内容一致問題と会話内容に関する問題で、全30問、時間は合計20分です。

(2)読解
全30問、時間は合計20分です。

(3)漢字書き取りテスト
全10問、時間は合計10分です。


◆BCT-B

BCT-Bはヒアリング、読解のほかに作文が出題されます。漢字書き取りはありません。


(1) ヒアリング
全50問、時間は合計35分です。

(2) 読解
全40問、時間は合計60分です。

(3) 作文
全2問、時間は合計40分です。

test_shiken_man
TECC
もともとベネッセが立ち上げた中国語検定で、その後、中国語教室のハオ中国語アカデミーに運営母体が移り、現在は株式会社空間概念研究所のTECC検定事務局によって運営されています。テストは年に2回実施されています。

TECCには通常版とベーシック版があります(後述)。テスト形式はマークシートで、判定形式は「合格」「不合格」ではなく、0~1000点(通常版)までの細かなスコアによって実力の測定を行います。受験方式は2021年6月よりオンラインに移行しています。

◆通常版
通常版の試験は、日常的な中国語を中心に、リスニングとリーディングの二部構成となっており、全140問が出題されます (リスニング70問、リーディング70問)。試験時間は最大80分で、内訳はリスニング問題最大35分、リーディング問題が最大45分です。スコアは1000点満点です。

スコアによる実力レベルの対応はおおむね下記のようになります。

TECC


またTECCのスコアはHSKおよびCEFRとも相関しており、下記のような対応関係を目安することができます。

TECC2

リスニングとリーディングの試験内容はそれぞれ下記の通りです。

<リスニング>

(1) 基本数量問題(数字や金額に関する問題)10問
(2) 図画写真問題20問
(3) 会話形成問題20問(選択により会話を完成させる)
(4) 会話散文問題20問(会話や散文の内容に関する問題)

<リーディング>
(1) 語順問題10問
(2) 補充問題20問
(3) 語彙解釈問題20問
(4) 読解問題20問

受験料は消費税込みで5,500円です。

 

◆ベーシック版
ベーシック版であるB-TECCは、日常生活における中国語力を測定するテストとして位置付けられており、「合格」「不合格」ではなく、0~490点までのスコアで実力を測定します。

問題は全80問あり、リスニングが40問、リーディングが40問です。時間配分は合計60分で、聴解が25分、読解が30分です。テスト形式はすべてマークシートです。

リスニングとリーディングの試験内容はそれぞれ下記の通りです。

<リスニング>
(1) 基本数量問題(数字や金額に関する問題)10問
(2) 図画写真問題10問
(3) 会話形成問題10問(選択により会話を完成させる)
(4) 会話散文問題10問(会話や散文の内容に関する問題)

<リーディング>
(1) 語順問題10問
(2) 補充問題10問
(3) 語彙解釈問題10問
(4) 読解問題10問

B-TECCの受験申込は個別団体試験を採用しており、受験料は3人未満 8,250円/総額、3人以上 2,750円/人となっています。

中国語検定試験

最後は中国語検定試験についての情報です。中国語検定試験は日本でもっとも権威と歴史のある中国語検定試験で、日本中国語検定協会によって主催されています。実施は年3回(1級は毎年11月の試験のみ)行われます。

HSKが実用的な中国語能力に焦点を当てているのに対し、中国語検定試験は、中国語のコミュニケーションスキルに加え、特に1級では通訳や翻訳の技術、また文学的な文章を読む力も求められます。このようなオールラウンドな実力が試される上級レベルの試験ではコミュニケーション力を測定するテストとは少し異なる独特の難しさがあると言えます。

準4級、4級、3級、2級まではリスニングと筆記のみ、準1級と1級は面接による二次試験があります。リスニングと筆記はマークシートによる選択問題と日文中訳などの筆記問題があります。

級には全6段階あり、準4級からスタートして1級がもっとも高い級となります。各級で求められるレベルの概要は下記の通りです。

中国語試験

合格基準はHSKのトータル得点方式とは異なり、各パートでそれぞれの基準に達していることが必要となるため、得点に偏りがある場合HSKよりもやや不利になる可能性はあります。下記に各級ごとの点数配分と合格基準を示しておきます。

 

・1級:リスニング100点、筆記100点で、各85点以上が合格。

・準1級:リスニング100点(75点以上が合格)、筆記100点(70点以上が合格)

・2級:リスニング100点(70点以上が合格)、筆記100点(65点以上が合格)

・3級:リスニング100点、筆記100点で、各65点以上が合格。

・4級:リスニング100点、筆記100点で、合格は各60点以上が合格。

・準4級:リスニング50点、筆記50点で、リスニングと筆記の合計で60点以上が合格。


受験料はそれぞれ下記の通りです。

・1級:11,800円
・準1級:9,800円
・2級:7,800円
・3級:5,800円
・4級:4,800円
・準4級:3,500円

 

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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・中国語検定試験の最新状況 Part1

・どの中国語を学べばよいのか?それぞれの違いと特徴

中国語試験(HSK、中国語検定、TECC)比較 ~ビジネスに必要なレベルとは?~

 

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