国内で中国語の能力を測る試験はいくつかあるが、現在主流となっているのが、HSK(漢語水平考試)、中国語検定(中検)、3TECC(中国語コミュニケーション能力試験)の3つである。今回はそれぞれの試験の特徴をあげ、ビジネスシーンにおいて必要なレベルについて学会での論文の発表を続けながら、大学や企業向けに中国語研修や異文化コミュニケーション研修を提供している、鈴木武生氏に話を伺った。

 

 

1.HSK(漢語水平考試)

http://www.hskj.jp/gclid=EAIaIQobChMIstfTqfTu3gIVhmkqCh2siwaAEAAYASAAEgJJR_D_BwE

HSKは中国政府教育部(日本の文部科学省に相当)の直属機関孔子学院总部/国家汉办が主催する中国政府認定の公的資格で、世界でもっとも多く受験されています。

初級レベルの1級から上級レベルの6級まで6段階あり、言語能力の評価基準はCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠組み)にも準拠しています。

受験は年最大12回、結果は合否ではなくスコアで表示されます。また会場でのパソコン試験も可能です。1・2級は聴き取り100点・読解100点、合計200点(60%以上で合格)、3・4・5・6級は聴き取り、読解、作文が各100点、合計300点(60%以上で合格)で評価されます。

基本的な会話能力であれば3~4級(シチュエーションによる)、ビジネスにおいて求められる会話能力は5級が目安となります。必要学習量レベルは4級で2500語、大学第二外国語2年目後半レベル、5級は2500語レベル、大学第二外国語2年終了プラスαレベルです。下記にHSKと中検のレベルを示しておきます。

中国語ブログ(中国語検定&HSK)


2.中国語検定(中検)

http://www.chuken.gr.jp/

中国語検定は(財)日本中国語検定協会が主催する民間の検定試験で、年3回実施(1級は年1回)実施され、毎回の総受験者数が1万人~1万5千人に上る日本独自の最大の中国語検定試験です。

試験配点は、準4級はリスニングと筆記が各50点満点、4級から1級までは各100点ずつの配点となっています。テスト形式は級にもよりますが基本的に選択式と記述式の併用です(準4級から2級までのリスニングは選択式のみ)。

合格基準は準4ではリスニングと筆記の総合点で60点以上、4級では各60点以上、3級は各65点、2級ではリスニング70点で筆記65点以上、準1級はリスニング75点、筆記70点以上、1級は各85点以上となっています。準4級の場合はリスニングと筆記の合計点の60%が合格レベルですが、それ以上はリスニングと筆記がそれぞれ基準値を上回る必要があります。また準1級と1級では面接も加わります。

簡単な日常会話ができるレベルは3級、実務を含めた一定の会話ができるレベルとしては2級が目安になります。

1級のレベルは非常に高く、簡単な翻訳・通訳のレベルまで要求されるほどで、合格者は通訳案内士試験の筆記試験が免除となります。繁体字と簡体字のいずれでも受験できますが、混用は減点となるので注意が必要です。

準4級は学習準備完了レベル(合格率75%)、4級は基礎知識レベル(合格率49%前後)、3級は簡単な日常会話レベルです(合格率36%)。実務を含めた一定の会話ができるレベルとしては2級が目安ですが、テストのレベルも急に難易度が高くなります(合格率20%)。準1級と1級の合格率はそれぞれ19%と5%で非常に難しくなっています。


3. TECC(中国語コミュニケーション能力試験)

http://www.tecc.jpn.com/

TECCは中国語コミュニケーション協会が開発し、株式会社ハオ中国語アカデミーが運営するテストで年2回開催されています。

TECCはコミュニケーション能力を図る試験で、知識量を問う試験ではなく、実際の運用能力が反映されるテストです。テスト問題は実際のコミュニケーションの場面にもとづいたものが出題されるので実践経験度も大きくスコアと関係してきます。


テスト形式は80分(リスニング問題35分、リーディング問題45分)で全140問(リスニング70問、リーディング70問)、解答は四択マークシート方式です。

結果は合否ではなく1000点満点で評価されます。また中国語初学者の「成長を応援する試験」として0~499点レベルを測るベーシックTECC(B-TECC)も用意されています。

スコアと能力の関係として、簡単な会話レベルであればDレベル(400~549点)、仕事で使えるレベルであればCレベル(550~699点)が目安となります。平均スコアは500点で、中国で生活するには550点が目安とされています。前述の二試験比較するとTECCの550点が初級の最高レベルになり、このレベルがちょうどHSK4級の最高レベル、中検3級の最高レベルにおおむね一致します。

下記のリンクに詳細情報があります。 
http://www.tecc.jpn.com/about/score.html


総評

中国語検定では、中国語の正確な知識や翻訳力が求められますが、HSKではより実用的な中国語能力に特化した試験となっており、また世界的に通用する公的資格である点が最大の特徴です。そのため正確な知識の整理や苦手点の克服には中検が、また実用性を重視するならHSKが向いているでしょう。
 また具体的な生活や仕事の場面でのコミュニケーション力を測りたい場合にはTECCが向いています。ある程度、すでに会話経験がある人で、自分のコミュニケーションの実力度を測りたい人にはよい試験と言えます。
 また初学者であれば中検準4級を受け、次にHSKでレベルアップを図りながら、B-TECCを併用するのも一つの方法と言えます。

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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