新型コロナウイルスの流行下とはいえ、海外に従業員の方を派遣している企業様は少なくないかと思います。感染症が流行している、していないに関わらず海外赴任者の方の健康管理は国内のそれ以上に配慮を行う必要があります。海外赴任者や送り出す側の人事担当者はどのようなことに配慮すればよいでしょうか。

 

今日は海外赴任者の健康管理に関する渡航前準備についてお話しします。なお筆者は医療の専門家ではありませんので、詳細かつ正確な内容は海外渡航医療の専門家にお尋ねください。

健康診断

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海外に仕事で6か月以上滞在される方に、渡航前に健康診断を受けさせることは雇用者の義務であると労働安全衛生法で定められています。健康診断の結果次第で再検査や精密検査なども必要になるので、渡航が決まったらすぐに受診してください。持病があり海外でも継続的な診療が必要な方は、主治医に英文診断書を作成してもらってください。

歯科検診と治療

歯医者海外で歯科治療を受けると医療費が高額になる傾向があります。また、言語や技術面での不安を感じる点も多く、もっともトラブルが多いのが歯科であると聞いたことがあります。出国前に必ず歯科検診を受診し、治療を行いましょう。

大人の予防接種

2562764新型コロナウイルス以外の各種感染症リスクを回避するために、赴任先によってはA型肝炎や狂犬病などの予防接種を受けることが推奨されます。これらは海外渡航医療を専門としている医師にお尋ねください。ちなみに海外渡航医療を専門としている医院の方がワクチンの種類や在庫も豊富ですので、海外渡航医療専門医にかかることをお勧めします。

なお、医師にご相談の前にこれまでに接種した予防接種歴を確認した方が良いでしょう。大人であってもご両親に母子手帳などの記録を確認してみてください。それによって接種するワクチンの回数を減らすことが可能となるかもしれません。接種後もこれまで接種したワクチンの一覧を英語で作成し、持参することをお勧めします。詳細は医師にご相談ください。一部の国では感染症流行如何によらず、大人でもワクチン手帳を持っていることが主流です。

子どもの予防接種

22441167国によって推奨されている予防接種の種類や接種回数が日本と異なる場合があるので、確認が必要です。また、日本で接種を推奨されているワクチンが接種できるかは、先進国に渡航する場合や発展途上国に渡航する場合などで対応が異なるようです。赴任先によっては一時帰国時に接種させる、など計画的な接種が必要となるかもしれません。また現地で接種する場合、やり方が日本と若干異なる場合があります。例えば同じ日に複数のワクチンを接種したり、上腕でなく大腿筋に接種したりすることがあります。

 

海外では小学校や幼稚園への入学・入園の際に医師の署名入りの「予防接種証明書」が必要とされることがあります。日本の母子手帳の翻訳で通用しないことも多いです。この辺りも、現地の状況を確認の上、海外渡航医療の専門医にご相談ください。

 

なお、年齢の関係でお子様が新型コロナウイルスのワクチンを接種できない場合、一部の国では到着後にお子様は隔離が必要となることもあります。渡航前に現地日本国大使館のホームページなどをよく確認しましょう。

持参すべき医薬品など

22112957先進国に渡航する場合は、鎮痛剤やかぜ薬など普段使い慣れている市販薬や女性用生理用品については3ヶ月から半年くらい分を持参されることをお勧めします。多くの先進国において現地の薬局で、日本同様の市販薬を入手することは可能です。したがって、渡航後は徐々に現地の薬に慣れていく方が効率的です。その場合はブランドではなく「成分」を現地語でメモして薬局の薬剤師に見せます。なお多くの国でビタミン剤などを含む薬品の輸入は禁止されていますので、日本のご家族から送ってもらうのは難しいと考えてください。

処方薬についても同様です。しかし、現地の良い医者を探して受診することは渡航後すぐには難しいと思いますので、日本の主治医の先生に相談して、 3ヶ月から半年くらい多めに処方してもらうと良いでしょう。これについても現地の医療機関を受診する際はブランドではなく成分を現地語で調べて持参するようにしましょう。シャンプーや石鹸などは水の質が異なると泡立たないことなども多いので、現地で購入される方が賢明です。

今回は海外赴任者の健康管理〜準備編というテーマでお話ししました。海外に長期で赴任される前は健康診断、歯科検診そして予防接種が必要となります。特に予防接種に関しては接種間隔などに配慮が必要となるため、数ヶ月かかることもあります。したがって海外赴任者の健康管理のために、人事からの内示に関しては余裕を持って行うようにしてください。繰り返しになりますが、海外に長期で赴任される方は海外渡航者医療専門医にご相談の上、しっかりと準備してからご赴任ください。


<参考文献、お役立ち情報など>
濱田篤郎監修『海外生活健康ガイド』 (保険同人社) (2011)
一般財団法人海外邦人医療基金 海外勤務者のための健康管理ガイド(公開終了)

外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/life/
外務省 世界の医療事情
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html

 

 

mariko_hamada02著者:浜田真梨子(はまだ・まりこ)
株式会社ジェイシーズ執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)
大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

株式会社ジェイシーズ  https://j-seeds.jp/

連絡先:contact@j-seeds.jp 

 

従業員を海外赴任させる上で配慮すべきこと

 

 

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