WizWe総研では、研修の成果を向上させる方法について、学術的な研究に基づく分析を行っています。これにより、多くの企業様が直面している社員の自律性やモチベーション向上に関する課題を解決するお手伝いをしています。具体的な問題点として、以下のような課題が浮かび上がっています。 

・人事育成に対する投資と成果のバランスが取れていないこと。 

・研修プログラムが存在するものの、参加者が積極的に参加しないこと。 

・研修を実施しても、成果を継続的に出せない「三日坊主問題」が発生していること。 

 実は、これらの課題の解決において、研修の初期段階での動機づけが非常に重要です。このテーマについて、WizWe総研は2023年度に日本社会心理学会で発表する予定です。我々の研究が多くの担当者様にお役立ちできれば幸いです。 

 

研修の成功は、研修の開始前に予測される? 

 WizWeがサポートした多くの研修で、サポーターから「この研修は成功しそうだ」「今回は難易度が高いかも」といった、研修開始直後の感じ取れる成功の予感に関するフィードバックが寄せられています。このような早期の予測が正確であれば、成功の確度が低いと感じられる研修を早めに特定し、適切な対応が可能となるでしょう。 

 さらに、研修終了時に受講者から集めた満足度のデータを分析すると、学習の進捗が良好だった参加者ほど、研修への満足度が高いことが明らかになりました。これらの結果から、研修の開始時点での受講者の心理的な状態が、学習の進捗や研修への満足度に影響を与えることが示唆されます。 

 この研究では、研修開始時の参加者の心理状態が、最終的な学習進捗や研修の満足度にどのように影響するのかを検討しています。 

 

自律的動機づけの影響 

 参加者の心理状態、具体的には研修開始時の動機づけに着目し、その影響を検討しました。動機づけは、主に「統制的動機づけ」と「自律的動機づけ」の二つに分類されます。 

 「統制的動機づけ」は、報酬や罰、他者からの期待など、外部的な要因から生じるものです。対照的に「自律的動機づけ」は、個人の価値観や興味、好奇心など内部的な要因に起因します。以前の研究で、統制的動機づけのみでは継続的な行動や高いパフォーマンスは難しいことが示唆されています。動機づけに関する詳細は、こちらのnoteで掲載しています。 

https://note.com/wizwe/n/n8e0d2f560b68 

  研修開始時に自律的動機づけが高ければ、その後の学習成果や満足度に良い影響があるのでしょうか? 

 

2022年の研究結果

 先行する研究として、2022年に社内フィットネスプログラムを対象にした研究がありました。この研究では、プログラム開始前や開始直後の参加者の心理状態が、後の運動行動にどのように影響するかを調査し、学会で発表しました。

(丹野, 2022 : 『フィットネスプログラムにおける初期アンケート回答と運動量の関連 - LEAN BODYを用いた企業フィットネスプログラムの事例』

https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/86/0/86_1EV-079-PR/_article/-char/ja/

 この研究の結果、参加者の開始時の心理状態(特に動機づけの強さと不安の少なさ)が、運動プログラム中の総行動量に影響を与えていることが確認されました。つまり、運動に関しては、開始時の動機づけの強さが、後の活動量に影響を持つことが示されました。

 運動においては、開始時の状態が後の行動に大きく影響することが分かりましたが、学習行動においてもこの傾向は見られるのでしょうか。

 

最初の動機づけの重要性

 2022年に実施された語学研修プログラム(7企業からの合計参加者215人、全て同一の学習コンテンツ)をもとに、研修参加者の開始時アンケート(動機づけ)と最終学習量、および終講時アンケート(研修満足度)との関連を分析しました。この分析から、開始時の自律的動機づけのスコアが高い参加者は、学習量も多く、さらに研修満足度も高いというデータが明らかとなりました(Fig.1)。

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  この結果をもとに、研修開始時の自律的動機づけが、研修の最終的な満足度を直接影響していることが確認されました。この点は、2022年のフィットネスプログラムを対象とした研究結果とも一致しています。この事から、研修開始時の参加者の動機づけの高さが、研修全体の達成率や参加者の満足度に大きく関わっていることが伺えます。

 研究の詳細については、以下のリンクからご覧いただけます。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000184.000035684.html

 

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丹野

株式会社WizWe
WizWe総研 主任研究員 丹野 宏昭

筑波大学大学院人間総合科学研究科心理学専攻(博士)社会調査士。専門は社会心理学。博士号取得後、東京福祉大学心理学部にて講義および研究に従事。これまでの研究テーマは「友人関係と適応の発達的変化」「人狼ゲームを用いたコミュニケーショントレーニング開発」「対人関係ゲームを利用した学級システムプログラムの開発」「広域災害時の被災看護師のストレス反応」など。

2021年4月WizWeに入社し、WizWe総研 主任研究員となる。

執筆:『人狼ゲームで学ぶコミュニケーションの心理学-嘘と説得、コミュニケーショントレーニング』『対人関係を読み解く心理学-データ化が照らし出す社会現象(共著) 友人関係』『質問紙調査と心理測定尺度―計画から実施・解析まで(共著) 心理測定尺度の探し方・使い方』 など。

 

・会社HP:https://wizwe.co.jp/
・WizWe総研:
https://wizwe.co.jp/lab/

 

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