英語教材の選定については、まずコース目標の定義が重要になります。通常の企業向け英語研修であれば、次のようなコースが想定されます。


1.TOEIC L/R対策講座
2.TOEIC S/W対策講座
3.基礎英会話(これは比重が減りつつあります)
4.(中)上級会話スキル(説得術、説明力、論理展開力、時事・経済についてのディスカッションなど)
5.プレゼンテーション
6.ネゴシエーション
7.ビジネスライティング
8.アカデミックライティング
9.異文化コミュニケーション/異文化チームビルディング
10.赴任前英語研修(通常125710の組み合わせが多い)
11.自己学習支援プログラム

 
上記の目標を整理すると、(A)TOEIC対策(1、2)、(B)会話スピーキング(3、4)、(C)スキル研修(5、6、7、8、9)、(D)赴任前研修(10)、(E)自己学習支援プログラム(11)という分類になります。

 
(A)TOEIC対策

まずTOEIC対策研修ですが、これはIIBCが出版している公式問題集のほか、さまざまな出版社から教材が発売されています。TOEICの場合はまず公式問題集をベースに使用し、他の出版社からのものを副教材とするのがスタンダードな方法でしょう。

ただし公式問題集には内容解説はあるものの、学習方法やコツについては一切記載がないため、専門講師による指導が必要となります。講師による講義が行えない場合には、下記に示した総合版教材を用いて自習することになります。

 
<総合版教材>

・「TOEIC L&Rテスト 直前の技術」(アルク)
・「TOEIC L&Rテスト 文法問題でる1000問」(アスク出版)

 
優れた専門講師による指導がある場合、人によっては3カ月程度で最大170点くらいのスコアアップが可能になりますが、完全自習の場合は効率がかなり下がることになります。


その他、人気のある副教材を挙げておきます。

 
<文法>

・「1駅1題 新TOEIC TEST文法特急」(朝日新聞出版)および同シリーズ
・「11! TOEIC L&Rテスト 炎の千本ノック! これなら続けられる英語の筋トレ」(祥伝社)および同シリーズ

 

<語彙>

・「TOEFLテスト英単語3800」 (旺文社)
・「TOEIC L&R TEST 出る単特急 銀のフレーズ」 (朝日新聞出版)

 
(B)会話スピーキング

次に、スピーキングについてみていきます。まず基礎英会話ですが、この集合研修は近年自習へと比重が移りつつあります。基礎会話はスキル研修とはことなり週2回程度×3カ月を1クールとしながら1から3クール継続する必要があるので時間、管理、費用がかさみやすいという問題があります。

クラス教材を選定する場合にはNHKラジオ英会話教材(英会話楽習、基礎英語、ラジオ英会話、タイムトライヤル)などがおすすめです。これは、自習にも向いた編集、コストが低い、体系立っている、音源が手に入る、という理由からです。

 このレベルの受講生を民間の英会話学校に通わせる場合、受講生は各学校で独自に選択された洋書系テキスト(オックスフォード、ケンブリッジ、ピアソン・ロングマン、マクミランなど)を使うことになります。

 
<初級会話>

・「Breakthrough」(マクミラン)-学生用だが、会話、文法、聴き取りなどバランスがとれている。

 
<ビジネス英語>

・「Communicating in Business English」(Compass Publishing)―ビジネスパーソン向けのベストテキスト

 
<総合版>

・「New Language Leader(ピアソン・ロングマン)」 ―トピック、語彙、表現、音声などバランスのとれた定番コースブック

 
<文法書>

・「Grammar in Use(ケンブリッジ出版)」―世界のベストセラーで文法のエキスが凝縮

 
こうしたテキストは使用する教師の力量が問われます。一部の英会話学校では「教科書の英語は現実じゃない。教科書なんか信用するな」といって蔑ろにする教師も多い(多くの場合これは使用する力量不足や説明力不足をごまかすための言い訳)ので、しっかり訓練された教師を使っている学校を選ぶ必要があります。また当然ながら民間業者にこうした教材を使った企業内プログラムを作成・実施してもらうことも可能です。

 
次に中・上級会話スキルについては次のような教材に定評があります。

 
<会話>

・「Summit」(ピアソン)―英語の4技能において総合的なレベルアップ
・「Lifestyle(初、中、中上級)」―仕事、旅行、日常などさまざまなシーンを想定して会話練習ができる

 
<総合版>

・「Business Result」(オックスフォード)―さまざまなビジネス場面を用意。グラフや数字の読み取り、記入、空所埋めなどの作業のほか、意見をまとめたり発表する力が付く

・「New Language Leader」(ピアソン・ロングマン) ―トピック、語彙、表現、音声などバランスのとれた定番コースブック


<ディスカッション>

・「Impact Issues」(ピアソン・ロングマン)―うまく反論や議論をする技術がつく

 

(C)
スキル研修以降は、企業の英語研修におすすめの学習教材とは?(2/2)へ続く

 

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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