以前、日本の有名企業が「英語社内公用語化」を宣言したとき、多くの人が衝撃を受けました。その後、その公用語化は果たして成功したのでしょうか? 「英語社内公用語化」の実態に迫ります。

 

2012年「英語社内公用語化」の衝撃

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いまから8年前の2012年、日本の有名企業数社が「英語社内公用語化」宣言をし、その後も多くの大手企業が相次いで英語公用語化(一部半英語公用語化)を取り入れました。この「英語社内公用語化」は当時大きな話題とニュースになり、賛否両論も沸き上がりました。

当時、私も「英語社内公用語化」を取り入れた企業から社内英語研修の依頼を受け(1日集中の英語発音トレーニング、全国をオンラインでつなぐビジネス英語研修など)、実際に英語公用語化の一役を担わせていただいた経験から、私が知り得た範囲で取り組みを比較し、その成否を検証してみたいと思います。

まずは、ほぼ同時期に「英語社内公用語化」に取り組んだ、大手ネットショッピング企業と大手衣料チェーン企業の取り組み方法から比較検討してみましょう。

 

共通するのはトップダウンの手法

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2つの会社に共通するのは、ほぼ同時期2012年に各社のカリスマ的代表が社内英語公用語化を宣言したことにあります。

まず、大手ネットショッピング企業では、2年以内にTOEIC®800点をクリアーしない役員は退職を余儀なくされることを宣言し、トップ自ら取り組む姿勢を明確に打ち出しました。さらには、社内の会議の共通語を、一人でも英語話者が参加した場合には、その会議は英語で実施することが定められました。

また、大手衣料チェーン企業は、都内本社でビジネス英語の対面研修を実施しつつ、同時に全国の支店店長クラスの社員にオンラインで同時配信する試みを実施しました。

両社に共通するのは、トップダウンの手法であり、強制力を持つ研修の導入です。当然のことながら、潤沢な社内英語研修への投資も実施されました。また、まず会議の公用語を英語と定めた点も共通しています。大手衣料チェーン企業は20123月から、大手ネットショッピング企業は20126月から実施に踏み切っています。

 

当初は難航した英語社内公用語化

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むろん、その後の道のりは、決して楽なものではなかったようです。

大手ネットショッピング企業では、定例の役員会議の共通語を英語にしたことで、当初2時間で終わっていた会議が、理解するために、一時7時間近くに及んだそうです。しかし、その後英語での会議でも通常の2時間以内に収めることに成功しています。当初反発して退社する社員もいたと言われています。しかし一方で、ネームタグに英語のミドルネームを記載し、自主的に学ぶ英語サークルなどが開催されるなど、社員の自発的な英語学習の活動も活発に行われていました。

大手衣料チェーン企業の場合は、全国の国内店舗では一部を除いてほとんど英語を使う必要がなかったことで、社員のモチベーションの維持に最大の努力が注がれたと言います。

 

英語社内公用語化は、それぞれ「成功」

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では、その後8年たって、英語社内公用語化はどのような成果を収めたのでしょうか? 結論から言えば、それぞれの形で成功した、といえるでしょう。

まず、大手衣料チェーン企業は、グローバル化の目的である、世界市場での占有率を大幅に伸ばしました。今や、同業界で世界上位のグローバル企業となっています。そもそも、英語社内公用語化の目的はグローバル市場に対応するためであり、この点で当初の目標を達成したといえます。

一方、大手ネットショッピング企業は、海外市場からの撤退という側面もありましたが、海外市場への挑戦という点で企業マインドは確実に上昇したといえます。さらには、社内英語公用語化にあたって、数多くの社内英語研修を実施した経験を活かし、独自の英語学習専門の会社をスピンアウトさせています。また、現在では、社員のおよそ8割がTOEIC®テスト800点超えを達成しているそうです。その点では、社員の英語力全般の向上においては英語社内公用語化を事実上実現したといえるでしょう。そして、ネットショッピング企業のケースは、HBS(ハーバードビジネススクール)のケーススタディとしても取り入れられ、グローバルな知名度を上げることに成功しました。

「英語社内公用語化」成功のコツは一言で言えば、トップダウンと社内英語研修への大規模投資です。今後、少子高齢化による労働人口の減少を考えれば、グローバル市場のみならず、優秀な海外人材の受け入れ側として「英語社内公用語化」は重要な施策であるはずです。

 

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執筆者:竹村 和浩(たけむら かずひろ)
AllAboutビジネス英会話ガイド 担当テーマ:ビジネス英会話 
英語発音矯正士 ビジネス・ブレークスルー大学 英語専任講師 
英語通訳案内士/英語発音矯正とビジネス英語が専門。
㈱Universal Education代表取締役。   

 

日本人はなぜ、英語が苦手なのか?その原因が、正確な英語の音の未習得にあることを25年前に発見し、独自の音声指導法、EVT: English Voice Trainingを開発。英語発音矯正の草分け/第一人者として、音素トレーニングを中心とした発音矯正で日本人の英語スピーキング力の向上に尽力している。RMS:リクルートマネジメントスクール受講者満足度No.1講師。

 

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