近年これだけ英語学習に関する情報が氾濫している今日、企業研修に使用する英語学習コンテンツを選ぶことは、あたかも砂の中から針を探す、いや場合によってはジャングルの中で落とした指輪を探すほど難しく思えるかもしれません。そこで今回は、企業の人事、研修ご担当者様に参考にしていただきたい、適正な英語学習コンテンツの選び方をご紹介します。

適正な英語学習コンテンツを選ぶための3次元分析

どんな学習内容も次の三つのベクトルで表現することが可能です。

1)技能軸(話す、聴く、読む、書く)(x軸)

2)目的軸(日常会話、ビジネス会話、情報収集、電子メールなど)(y軸)

3)難易度軸(初・中・上級、CEFRのAからC、TOEICスコアなど)(z軸)

 suzukizu1

図1は単なる電子メールライティングと電子メールによる交渉の関係を示したものです。通常の電子メールライティングはベーシックレベルですが、電子メールによる交渉はさらに高い(通常上級)レベルのスキルが要求されます。そのため使用するコンテンツもおのずと異なったものになります。

 suzukizu2

図2は会議で必要な技能について示したものです。会議の場合「話す」と「聴く」という二つの領域にまたがった技能が必要とされます。これは通常のベーシックレベルだとするとファシリテーション(会議の司会進行の技術)はさらに数段上の技術が要求されます。それはみずから会議をコントロールしなければならないので、各参加者に発言を促したり、調整を行う技術が必要だからです。

かならずしもこのような3次元分析をする必要はありませんが、このような見方を知っておくことで的確かつ適正な英語学習コンテンツを選べるようになります。

英語学習コンテンツを選ぶ際の大きな問題は、「このコンテンツを覚えれば(または知れば/目にすれば)学習目標は十分クリアされる」という考えに陥りがちなことです。

どのようなコンテンツであれ、練習による習熟度向上訓練は欠かせません。裏返せば、どんなコンテンツを選ぼうとこの練習がない限り、その労力は無意味だというこということです。

そのため必要な技能、目的、レベルを設定し、それに見合ったコンテンツを見つけた場合、かならずプラスアルファとして、その知識なり技術なりに習熟させるプログラムを実施することが肝要となります。

 

英語学習コンテンツの見つけやすい領域、難しい領域

 3453649_s (1)

次に英語学習コンテンツを見つけやすい領域とそうでない領域についてお話しておきたいと思います。

 

まず最も見つけやすいのが

・リスニングコンテンツ

・文法問題コンテンツ

・語彙増強コンテンツ

・TOEICテスト対策コンテンツ

です。これらは非常にやることが非常に明確であり、付随する練習方法も誰もができるレベルのものです。

 

次にやさしいのが

・電子メールライティング(基礎)コンテンツ

・英文読解コンテンツ

ただし電子メールの場合、どのようなコンテンツを使おうともインストラクタまたはチューターからのフィードバックが重要になり、完全に個人で学習することは難しいと思われます。

また英文読解は、語彙増強練習の継続、リーディングスピードの指導、ジャンル選択が難しいだけでなく、モーチベーションの維持に労力がかかります。

 

次に難しいのは

・会話力向上

です。これは「読む」と「聴く」の領域をまたいでいること、そして話題や表現の豊かさ、そして反応のスピードと的確性が求められます。そのため一定期間の継続練習がMUSTになるため、だれかにそのプロセス管理がしてもらう必要が出てきます。

 

最後に最も難しいのは

・ネゴシエーション
・フォーマルな英文作成
・異文化チームビルディング
・戦略的なコミュニケーション能力(例えば外国人部下へのフィードバックを与え、目標達成をサポートする技術)

です。

これらは複合的な技術の上に異文化的視点や経験の深さが求められるため、こうしたコンテンツは単行本のようなまとまった情報媒体では存在していません。特に戦略的なコミュニケーションについてはほぼ教材が存在せず、各自専門インストラクタや組織が独自に準備したものが中心となっています。

現在、「グローバル人材」が強く求められていますが、こうした人材が必要なのはこの最後のレベルの技能であり、こうしたコンテンツをいかにすれば効果的かつ手軽に企業教育システムに落とし込めるかが大きな問題となっています。

 

*********************************************

企業研修の英語学習コンテンツを選びにお困りの際は、今回ご紹介した3次元分析を参考にしてみてはいかがでしょうか?適正な英語学習コンテンツ選びの手助けになりそうです。

*********************************************

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

-------------------------------------------------------

工場社員に効果的な企業の英語研修とは?
成果を上げた企業英語研修の成功事例
企業が英語研修サービスを探す前に考えるべきポイントは?
企業の英語研修におすすめの学習教材とは?(1/2)
企業の英語研修におすすめの学習教材とは?(2/2)
企業の英語研修におけるeラーニングのメリット・デメリットを徹底解説
<企業の研修担当者必見>ビジネス英語をマスターするための2つのポイント
<企業の研修担当者必読>英語でのプレゼンテーション成功の鍵
TOEIC上級者向け(750~860点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法(1/2)
TOEIC上級者向け(750~860点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法(2/2)
TOEIC中級者向け(670~750点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法
TOEIC中級者向け(600~670点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法
TOEIC中級者向け(470~550点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法
TOEIC初級者向け(220~470点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法
TOEIC初級者向け(10~220点)グローバルに活躍するための効果的英語学習法
「新入社員に効果的な企業の英語研修」企画・実施の方法とは?
<企業の人事担当者必見!>英語研修の成果を測るテスト比較~CASEC、VERSANT~

 

Smart Habit 最新コース資料はこちらから