海外出張、会議進行、ビジネスメール作成、TOEIC対策など、ひとことで「英語研修」といっても様々な目的があります。英語学習に意欲的に取り組むには、その時々、人それぞれのニーズにあった学習を選ぶことが肝心です。「会議でうまく発言できなかった」と落ち込んでいるタイミングで適切なビジネス表現が学習できれば、その表現の定着率はかなり高くなるでしょう。そのため、人事が英語研修サービスを導入する際には、「本当に現場のニーズに合ったプログラムなのか」を熟考して選ぶことが重要です。
企業研修成功の基本は「目的別」
英語研修といっても、様々な種類があります。日本の企業が社内英語研修として多く取り入れているのが、TOEIC®研修です。しかしながら、このTOEIC®研修のみで、社員の英語力全般を上げようとしても難しいかもしれません。TOEIC®テストは、社員の英語力を測るアセスメントとしては事実上の標準として認識されていますが、ビジネスで必要とされる英語力には、一般的な試験で図れること以上の様々な側面があります。
一概に英語力といっても、実際の運用面ではその使われる場面、状況によって個別に養成しなければならない英語スキルが存在します。そのため、「目的別」の企業英語研修が必要となってきます。
目的別の企業英語研修とは?
では、目的別の英語研修にはどのようなものがあるでしょうか? 大きく3つの分野に分けることができます。
① 社員全体の英語力の底上げを図るための英語研修
② ビジネスの様々な場面で使用するスキル別英語研修
③ 会話力・スピーキングの向上に特化した英語研修
上記3つの分野はそれぞれに目的が異なります。その目的に応じた英語研修が必要となります。
英語力底上げのための研修
まず、1つ目の社員全体の英語力の底上げを図るための英語研修を見てみましょう。
英語力の底上げを図るためには、底上げされたかどうかを測る目安が必要となります。それが、アセスメントに向けた英語研修となります。一般的には、TOEIC®研修を挙げることができますが、最近では、CASECやGBC、IELTS、TOEFL、また英検なども指標として使われることが多くなっています。特に、CASECは、オンライン上での測定が比較的短時間でできる点で、英語研修のbefore/afterを計測するうえで便利なアセスメントであるといえます。
ただ、そのための研修となると、基本過去問をひたすら解く、という研修になりがちです。これはTOEIC®研修においては、全体の底上げの指標や具体的な測りうる結果を示す点では有効ですが、実際に仕事で使う、ビジネスで使える英語力の養成にはつながりません。
スキル別英語研修
そこで、次に必要となるのが、いわゆる「目的別」のビジネス英語研修です。
グローバルな仕事の様々なシーンで使用する具体的な英語スキルは、それぞれの分野に特化して実施する必要があります。英語プレゼンテーション、会議の英語、電話の英語、電話会議の英語、英文Eメール、英語ドキュメンテーション、など様々な場面が想定されます。
会議でうまく発言できなかったなど、具体的な英語の課題に直面した際には、その人に応じた個別の課題スキルの研修が効果的です。したがって、人事担当者は社員一人ひとりの細かい課題を把握しておくことが必要でしょう。
英会話・スピーキング向上研修
最後に、3つめの分野である英会話力・スピーキング力を挙げる研修について取り上げます。実は、今の日本企業に所属する多くの社員にとって必要とされているのが、この「英会話力の向上」。かつ、最も難しいのも、「英会話力の向上」です。では、どのような英語研修が有効なのでしょうか?
25年間、主にこの分野の研修を担当してきた私個人の経験でいうと、意外にも、「英語発音トレーニング」そして「英語作文トレーニング」が有効です。「発音?」と、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。ただ、英会話というものが、そもそも「音声」のみのやり取りであることを考慮すると、実はこの「発音」を向上させ改善することが、音声のやり取りである英会話・スピーキングの能力を各段に向上させるキーファクターなのです。
さらに、英会話イコール英作文であると捉えると、英会話力向上の糸口を見出すことができます。日本語で言いたい、と思う内容を正確な英文に換え、かつ、それを正確な発音で発話できれば、英会話ができるということなのです。しかも、発音を磨くことで英語を話すことに自信が持てる、という副次効果も期待できます。これにより学校英語で学んだ英語を実際に話して使える英語に転換することが可能となります。
このように、社員の個々の課題に応じた「目的別」英語研修を社内研修として用意すれば、社員の英語力は向上するに違いありません。
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執筆者:竹村 和浩(たけむら かずひろ)
AllAboutビジネス英会話ガイド 担当テーマ:ビジネス英会話
英語発音矯正士 ビジネス・ブレークスルー大学 英語専任講師
英語通訳案内士/英語発音矯正とビジネス英語が専門。
㈱Universal Education代表取締役。
日本人はなぜ、英語が苦手なのか?その原因が、正確な英語の音の未習得にあることを25年前に発見し、独自の音声指導法、EVT: English Voice Trainingを開発。英語発音矯正の草分け/第一人者として、音素トレーニングを中心とした発音矯正で日本人の英語スピーキング力の向上に尽力している。RMS:リクルートマネジメントスクール受講者満足度No.1講師。