企業の英語研修で期待した成果がでなかった……。そんな声がよく聞かれますが、必ずその原因の上位に入ってくるのが「途中脱落」です。せっかく良いプログラムを提供しても、モチベーションが保てず継続できなければ、研修の成果は上がりません。そこで重要になるのが、個別学習者ごとのフォローです。
企業の英語研修、失敗の本質
とても評判の良い語学研修会社のこれまた評判の良い英語研修を採用したとします。ところが蓋(ふた)を開けてみたら途中脱落が多く、思ったような成果を挙げることができなかった。そういった英語研修の失敗はしばしば担当者が経験することです。
多くの場合、語学研修会社の運営などを批判してしまいがちですが、どんなに良い英語研修を取り入れ、講師がいかに素晴らしかったとしても、そのような失敗例は「よくあるケース」なのです。このありがちな英語研修の失敗には、本質的な共通点があります。それは、英語学習継続のための「サポート体制の欠如」です。
英語学習の本質とは?
そもそも、日本における英語学習、英語教育は成功しているとは言い難い状況にあります。世界共通の英語のアセスメントである、TOEFL®は、アメリカの大学・大学院に行こうとする人が必ず受けなければならない世界共通の英語試験ですが、この国別平均点は、日本は常に低い状態にあり、スピーキングにいたっては2007年の改訂でスピーキングが試験項目に加わって以来ほぼ最下位です。
またこれまで批判の多かった学校での英語教育も、平成14年の指導要領の改訂では、従来の読み書き文法方式から、英会話を取り入れる形に変更されてきています。しかしまだ際立った効果が見えていません。ではなぜ、この英語学習、とりわけ英会話の分野において日本と日本人は成果を上げることができないのでしょうか?
学習者の英語学習への誤解
成果を上げにくい要因は、本質的に英語と日本語の言語構造上の違いが挙げられますが、こと研修の分野においては、学習者の英語学習への誤解があるといえます。
巷の書店を覗いてみると、「1週間で英語ぺらぺら」「○○だけで英語は話せる!」など実際には英語学習においてはあり得ないことをタイトルにした書籍が山のように置かれています。またそのような本が実際よく売れているようです。
しかしながら、英語を身につけた人ほど、そうでないことを実感しているはずです。英語は「技術・スキル」ですから、地道な繰り返しと継続しか、身につける近道はないのです。
受講生にありがちなのは、この英語研修を受けさえすれば話せるようになる、英語ができるようになる、という誤解です。実際、最も大切なのは、その研修の内容を身につけるための「繰り返し」、そして継続する「努力」なのです。
継続学習サポートの鍵は?
いかなる英語研修であれ受講者がそこから成果をつくり、研修として成功するためには「継続のためのサポート」が求められます。なかでも、人によるヒューマンサポートがその鍵となってきます。全体への一斉メールなどでのサポートに加え、個々の学習者に寄り添うサポートができると効果的です。
個別学習者へのフォローでは、学習者の意欲などの心理的な状態、また仕事との両立などの物理的な状態、主にその両方を勘案してサポートすることが望ましいでしょう。
やる気はあっても仕事の締め切りやプロジェクトの進捗によっては英語学習に全く時間が割けない、ということも考えられます。その場合には、英語に取り組めない罪悪感を与えるよりも、項目を絞り、少しでも触れていられる環境を創ってあげることが効果的です。それにより、学習者もまったく学習ができないわけではなく、サポーターの承認のもと少しずつ進めている、と安心して仕事との両立を図れるようになります。
このような受講者の状況を把握してのサポートが何よりも、結果として企業における英語研修の失敗を防ぐ体制づくりには欠かせない要素といえるでしょう。
さらには、個別の学習進捗を把握できるシステムがあれば、管理者も全体のみならず、個々の学習者の進捗を把握し、直接のフォローも可能になります。学習管理システム(Learning Management System)と並行して、ヒューマンサポートを用意することは、優れた導入研修を成功につなげることができる鍵であるといえます。
逆に言えば、サポートシステムのない企業向け英語研修は、失敗につながる可能性が高いということを認識する必要があります。一人ひとりの受講生に寄り添える英語研修体制の構築が求められるゆえんです。
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執筆者:竹村 和浩(たけむら かずひろ)
AllAboutビジネス英会話ガイド 担当テーマ:ビジネス英会話
英語発音矯正士 ビジネス・ブレークスルー大学 英語専任講師
英語通訳案内士/英語発音矯正とビジネス英語が専門。
㈱Universal Education代表取締役。
日本人はなぜ、英語が苦手なのか?その原因が、正確な英語の音の未習得にあることを25年前に発見し、独自の音声指導法、EVT: English Voice Trainingを開発。英語発音矯正の草分け/第一人者として、音素トレーニングを中心とした発音矯正で日本人の英語スピーキング力の向上に尽力している。RMS:リクルートマネジメントスクール受講者満足度No.1講師。
