みなさんこんにちは。Brexit以来、EU圏で英語が公用語となっている国はアイルランドとマルタ共和国だけなので、他の国では英語はそう使われていないのではないか?と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今日は私が住んでいる国、ルクセンブルクと英語の関係についてお話します。

 


ルクセンブルクの国と言語

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ルクセンブルクはフランス、ドイツ、ベルギーと国境を接する、西欧の小国で、EUの加盟国です。人口は約63万人、日本の神奈川県ほどの面積の国です。公用語はフランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語の3言語となっており、英語はビジネスの言語として、広く使われています。

金融やITなどが主要な産業であり、かつ税制の関係もあってグローバル企業の欧州の本社が集まっていることから、外国人も多く住んでおり、現在人口の半数を占めています。よって、ここルクセンブルクでは国際的なビジネスであれば、会議なども含め、多くが英語で遂行されています。

日本から駐在の人も金融機関を中心に来ていますが、仕事は英語で行っているという人が多いです。

街の中で、クリーニング屋さんや小さな商店など、フランス語しか通じず、英語のみの場合は単語でのコミュニケーションで少し苦労する、といったシーンは見かけられますが、外国人が多く集まる職場などでは、同僚とのコミュニケーションにおいても、英語がビジネスレベルでしっかり運用できれば問題ないと言えるでしょう。

ルクセンブルクでは公教育で公用語のフランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語に加えて英語を学習しており、ヨーロピアンスクールでは、それに加えて他のヨーロッパの言語を学習しているということもあります。ルクセンブルクでは小学生くらいの子供でも、相手によって上手に言語を使い分けて話しているのを見ることが多く、日本というほぼモノリンガルの国で育った著者には驚きです。欧州の多くの主要な言語を操れる人を生み出しているということは、国の強みとなっています。

 


ルクセンブルクでビジネスをしている人の英語レベル


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ルクセンブルクの国民教育省の調べでは、人口の8割が英語を話せるということですが、国際的にビジネスをしている人は基本的に流暢な英語を話しています。必ずしもTOEICのスコアで英語レベルを測る習慣はないのですが(と言っても履歴書にスコアを書いている人は国籍を問わず見かけます)、リーディング・リスニングテストでいうと、700点を超すような人が仕事をしている、とは言えるでしょう。

(参考)TOEICスコアレベル別評価の一覧はこちら

ただ、仮に日本で700点を取得した人と文法や語彙のレベルでは同じだとしても、日本の多くのケースと圧倒的に違うのは、話すことに慣れている人が多い、という点があります。もともとフランス語の話者(先の国民教育省の調べによれば、98%の人口がフランス語を話せるとのこと)であれば、語彙はかなり似通っているので当然アドバンテージはありますし、日々周りの人と会話をしてビジネスをしているので、鍛えられている部分はあるでしょう。語彙が限られていたとしても、日々のコミュニケーションを円滑にするようなジョークをとばす人も多く見受けられます。

しかしながら、良い点はというと、アメリカ人、イギリス人のようなネイティブに比べて、ゆっくり話す人が多いということです。加えて、ネイティブにしか分からないようなイディオム、意味が掴みにくい句動詞などの会話での出現割合が圧倒的に低いです。これは、リスニングであったり、会議に出席して議論するときに有利に働きます。英語という部分のみとっていうと、みんなが非ネイティブということで、あまりコンプレックスを感じず、安心して話ができる部分はあるのではないでしょうか。

また、ルクセンブルクのビジネスパーソンのなかにはイギリス人やアイルランド人、アメリカ人などもいたりするので、広報文として正確を期した英語が必要な場合は、チームの中でネイティブの人、ネイティブに近い人に見てなおしてもらったり、感想を聞く、といったことがあったりします。

 


日本人と英語-ルクセンブルクのビジネスパーソンより


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最後に、ルクセンブルクで日本人と仕事をしたことがあるヨーロピアン数名から、日本人の英語学習およびコミュニケーションについてのアドバイスをもらいました。

―駐在で来る日本人が、あまり現地のヨーロピアンの輪に入らず、しっかりした人間関係ができないまま、数年で入れ替わる様子を何度も見てきました。日本人はシャイで、丁寧さを重んじる人が多いというのは分かるのですが、何を考えているか分からないという印象を与えてしまいます。仕事上でも話し合えるように、普段のコミュニケーションを大事にしてほしいです。

―日本人には、礼儀正しく、きれい好きで時間を守る、という、とてもいい印象を抱いています。しかしながら、うちにこもり、あまり国際社会に出て行かないというイメージがあります。英語については、恥ずかしがらず、人をつかまえて、とにかくどんどん話すようにするとよいでしょう。


いかがでしたでしょうか。

英語でのビジネスのコミュニケーションが可能な、EUにおける国際的なビジネスの拠点となりうる国、ルクセンブルク

日本人の英語については、一般的には、ビジネス英語を学習し、海外に仕事に出る日本人は潜在的には十分な英語力を持っているものの、会話において、もっと積極的にコミュニケーションをとってほしい、と思われているということもわかりましたね。

このシリーズではルクセンブルク、欧州での言語事情や英語、仕事や暮らしについての情報を現地からお届けしてまいります。

 

 

Reina photo_1R著者:上田怜奈(うえだ・れいな)
ルクセンブルク法人さくらリンケージインターナショナル CEO・米国公認会計士(ワシントン州)
山口県生まれ。日本の政府機関で通訳/翻訳官としてキャリアをスタートし、外資系会計事務所の米国税務部門での勤務後、独立。2013年に企業語学研修および翻訳の事業、さくらランゲージインスティテュートを設立。大手企業や大学での研修を行う。2019年にルクセンブルク法人さくらリンケージインターナショナルを設立し、従来の語学研修、翻訳の事業に加え、企業の海外進出時のコンサルティングやマーケティング管理の業務を行う。

 

大阪外国語大学(現大阪大学)外国語学部卒業。
米イリノイ大学MBA課程在学中。

 

さくらリンケージインターナショナル会社HP:www.sakuralinkage.com

 

 

 

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