国の人口の半分が外国人という、国際色豊かな西欧の小国、ルクセンブルク。
今回は行政手続きがどれくらい英語でできるのか?ということを見ていきたいと思います。

 

 

市役所・税務署

 

university-g21a137205_1280

まずは住民登録などをする市役所。ルクセンブルクで窓口に立つ公務員の人は基本的に流暢な英語を話します。

まず” Parlez-vous français (あなたはフランス語を話しますか)?”などとフランス語で聞かれるので、「ほんのちょっとだけです。英語でお願いします。」というと、すぐに英語にスイッチしてくれます。

公文書はフランス語・ドイツ語のみで、英語の表記がないこともあったりしますが、聞くと丁寧に説明してくれます。

Guichet.publicというルクセンブルク行政の総合ウェブサイトがあるのですが、こちらではフランス語・ドイツ語・英語が選択できます。Guichet.lu - Administrative Guide - Luxembourg (public.lu)

 

ルクセンブルク語がないのがちょっと不思議かもしれませんが、ルクセンブルク人はみな、フランス語とドイツ語を、そして多くの場合は英語を話すことができます。このサイトで生活や仕事、会社や税務などに関する様々なことを調べることができます。

国が海外から来るスタートアップの設立を支援していることもあり、法人設立の手続きなども、ほぼ英語で行うことができます(フランス語原文の会社約款などは用意する必要がありますが)。

そんな中、税務に関してはフランス語が優勢です。税務申告の書類は英語で記入・提出することはできても、詳しく法律などを調べようとするとウェブサイトがすべてフランス語で書かれていたり(これはドイツ語話者にとっても大変だと思います)、定期的に税務当局から来る書類もフランス語のみ、あるいはフランス語とドイツ語併記で書かれています。

税務署に電話連絡をすると、だいたい英語を話せる人がいて、丁寧に説明してくれます。筆者は米国の国税に仕事柄何度も電話をしたことがありますが、担当者にもよりますが、回答を得るのはなかなか大変でした。ここは小さな国だからか、驚くほど親切です。

 

 

病院・薬局

hospital-g09a2a7c59_1280

次に、病院についてです。Doctenaというルクセンブルクのウェブサイトがあって、内科や皮膚科、歯科、婦人科など、クリニックを選んで予約することができます。このウェブサイト自体も英語を含む多言語で運営されています。医師が話す言語も選ぶことができるので、安心です。

 

ただ、英語が話せると書いてあっても、なかにはGoogle翻訳を利用してコミュニケーションする医師もいるので(少数派ですが)、行ってみないと分からない部分もありますが、いろんな言語でレビューが書かれてあるので、それでどの言語の患者が多いかなどでなんとなくイメージすることができます。

大病院へは日本のようにクリニックで紹介状のようなものを書いてもらっていくことが多いようです。Family doctor (家庭医、かかりつけ医)の制度はあります。

血液検査などをするラボラトリはクリニックと別れていて、完全分業制になっています。日本だと、クリニックの中で医師や看護師さんによって血液サンプルが取られたりすることも多いですよね。

薬局もだいだいクリニックや病院の近くにあり、ここでも都市部を中心に英語を話せる薬剤師の人がいるので、飲み合わせなどを詳しく質問することができます。薬は個人的にはフランスやドイツから来ているものを多く見ます。

 

 

警察

police-g12a1d892e_1280

 

警察も多言語対応になっています。筆者は偶然、通りすがりの被害者の人(ヨーロピアン)と居合わせた経験があり、警察が来るまでしばらく付き添っていたのですが、警察官が来るとすぐ、何語を話すかということを被害者に聞いていました。被害者は流暢な英語を話していたのですが、他により話しやすい言語があれば、すぐに通訳を呼ぶよ、と言っていました。警察本部のようなところに通訳者が待機しているのかもしれませんし、あるいは登録通訳人制度のようなものがあるのかもしれませんね。

このように多くのことを英語で進めることができるインターナショナルな国なのですが、税務手続きなど一部は書面では完全にフランス語になっていたりするので、プロフェッショナルや友人の助けを借りる必要があることが出てくる、とは言えますね。

英語を勉強していくなかで、業種によってはアメリカやイギリスなどの英語圏の他に、ルクセンブルクのような国際的な都市国家も、仕事をしたり住むところの選択肢として入ってくるかもしれませんね。

 

 

■前回の記事

ヨーロッパの小国ルクセンブルクでの英語の立ち位置

 

 

Reina photo_1R著者:上田怜奈(うえだ・れいな)
ルクセンブルク法人さくらリンケージインターナショナル CEO・米国公認会計士(ワシントン州)
山口県生まれ。日本の政府機関で通訳/翻訳官としてキャリアをスタートし、外資系会計事務所の米国税務部門での勤務後、独立。2013年に企業語学研修および翻訳の事業、さくらランゲージインスティテュートを設立。大手企業や大学での研修を行う。2019年にルクセンブルク法人さくらリンケージインターナショナルを設立し、従来の語学研修、翻訳の事業に加え、企業の海外進出時のコンサルティングやマーケティング管理の業務を行う。

 

大阪外国語大学(現大阪大学)外国語学部卒業。
米イリノイ大学MBA課程在学中。

 

さくらリンケージインターナショナル会社HP:www.sakuralinkage.com

 

 

 

Smart Habit Enterpriseの資料ダウンロードはこちら