会社勤めのビジネスパーソンにとって最も大事で最も関心のあるもののひとつが「給与」。日本では毎月25日の給料日に銀行振込で支給されるケースが多いですが、アメリカのビジネスパーソンはどのように「給与」を受け取っているのでしょうか。そもそも「給与」とは何で、雇用主にはどのような義務が課せられているのでしょうか。今回は、アメリカの「給与」事情をご紹介します。

 


「給与」とは何か?

 

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英語辞書Webster.comによると、「給与」(Payroll)とは、「従業員が労働の対価として会社から受け取るベネフィットのことで、サラリー(salary)、ウェイジズ(wages)、ボーナス、源泉徴収税などが含まれる」です。アメリカではインセンティブとして従業員に株の現物やストックオプションを付与するケースが少なくありませんが、そうしたインセンティブもボーナスとして取り扱われます。

なお、サラリーとは、毎月決められた金額を受け取るタイプで、ウェイジズとは時給単位で受け取るタイプです。一般的には、企業などに務めるオフィスワーカーはサラリーを、飲食店や小売店などのスタッフはウェイジズを受け取るケースが多いです。その辺の事情は日本と同じ感じですね。

 


雇用主に課せられている義務


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ところで、日本と同様、給与の支払いについてはアメリカの雇用主に課せられている義務があります。米国公正労働基準法(The Fair Labor Standards Act of 1938, FLSA)は、以下のルールを定めています。

1.最低賃金

FLSAによると、時給換算での最低賃金は7ドル25セントです。なお、州によっては最低賃金が7ドル25セントよりも高い州がありますが、その場合は高い方の金額が適用されます。例えば、カリフォルニア州の最低賃金13ドル(従業員数26名以上の場合は14ドル)、マサチューセッツ州13ドル50セント、ニュージャージー州13ドルとなっています。安い州では、テキサス州、テネシー州、ペンシルバニア州などがいずれも7ドル25セントとなっています。カリフォルニア州とテキサス州とでは2倍近い開きがあります。

2.時間外手当

週40時間を超えた労働時間については時間外手当の支給が必要です。時間外手当は、通常時給の1.5倍以上となっています。なお、サラリー受給者で時間外手当非適用者には支給は不要です。

3.給与支払い記録の保存

また、給与支払い記録の保存の義務も定められています。給与支払い記録とは、従業員名、住所、性別、職種、日々と週単位の労働時間、時給の額、給与の支払い日、時間外労働の時間、源泉徴収額等です。雇用主はこうした記録を保存するのみならず、従業員の求めに応じて開示する必要があります。

 

Sick Pay、Maternity Payなど

 

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なお、FLSAを含めて米国連邦法ではSick Pay(疾病手当、Paid Sick Leaveとも言います)の支給を義務としていません。しかし、カリフォルニア州、オレゴン州、アリゾナ州、ワシントン州、ニューヨーク州、マサチューセッツ州、バーモント州などの15の州で雇用主にSick Payの支給を求めています。

例えばカリフォルニア州の場合、フルタイム・パートタイムを問わず、12カ月間に30日以上同一雇用主の下で勤務した従業員に対し、勤務した30時間につき1時間のSick Payを支払わねばならないと定めています。一方、テキサス州、ジョージア州などの南部の州を筆頭に、多くの州ではSick Payの支給を義務化していません。

Maternity Pay(産休手当)についても同様です。FLSAを含めて米国連邦法ではMaternity Payの支給を義務としていません。しかし、カリフォルニア州、ニュージャージー州、マサチューセッツ州、ワシントン州、オレゴン州などの8つの州で公的な産休手当が支給されています。例えばカリフォルニア州の場合、産休で職場を離れる労働者の賃金の60%が、最大8週間に渡って支払われます。

 


給与の支払頻度と支払方法は?

 

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ところで、給与の支払頻度と支払方法はどうなっているのでしょうか。アメリカ労働省が2020年2月に行った調査によると、給与の支払頻度で最も多かったのが「2週間に1度」(43.0%)で、次いで「毎週1度」(33.3%)、さらに「毎月2度」(19.0%)と続いています。そして、日本で最も多いと思われる「毎月1度」は、なんとわずか4.7%しかありませんでした。

一方の給与の支払い方法ですが、アメリカの民間団体National Payroll Weekが2019年に行った調査によると、給与の支払い方法で最も多かったのが「銀行振込」で、全体の93.87%でした。次いで多かったのがペイチェック(小切手)で、全体の3.66%でした。アメリカで給与と言うと、筆者はすぐにペイチェックを想像してしまうのですが、現代のアメリカでは、銀行振込がスタンダードになっているようです。

 


法律・ルールについては州ごとにチェックを

 

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以上のように、アメリカでは給与の支払いについては連邦レベルの大雑把な決まりがある一方で、最低賃金やSick Pay、Maternity Payなどについては州ごとに大きな違いがあります。また、州税なども州によって大きく変わりますので、州ごとにチェックする必要があります。

一般論としては、カリフォルニア州、ニューヨーク州、マサチューセッツ州といった、いわゆるリベラルなブルーステート(民主党支持者が多い州)では、雇用コストが総じて高くなる傾向にあるようです。アメリカでの事業展開をご検討中の方は、そうした点も考慮の上で活動拠点を選んで下さい。

 


<参照>
https://factorialhr.com/blog/understanding-usa-payroll/
https://www.dol.gov/agencies/whd/flsa
https://www.minimum-wage.org/wage-by-state
https://www.shrm.org/resourcesandtools/tools-and-samples/how-to-guides/pages/htg---how-to-comply-with-california%E2%80%99s-paid-sick-leave-requirements.aspx
https://www.bls.gov/ces/publications/length-pay-period.htm

 

 

maeda002著者:前田 健二(まえだ・けんじ)
株式会社ジェイシーズ上席執行役員・北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓のコンサルティングを行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

 

株式会社ジェイシーズ  https://j-seeds.jp/

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