TOEIC L&Rテストのスコアを昇進や海外勤務の条件として設定している企業は多くあります。しかし、その設定の理由を説明しきれていないことも少なくありません。そのため、「会社からやれと言われて……」と仕方なく学習している社員の方が多くいらっしゃいます。その結果、「始められない」「続けられない」というケースも少なくないでしょう。

今回は効果的にTOEICプログラムを活用するためのご提案です。

 


スコア設定の現状

22304179スコア設定企業におけるTOEIC L&Rテストのスコア設定の基準については、以下のようなケースが多くあります。

・今後英語を使う可能性がある:500点
・接客で英語を使う:600点
・会議や出張等で英語を使う:730~800点
・日常的に仕事で英語を使う:800点

基準であるスコアを達成することも大切ですが、スコア達成はあくまで学習の結果です。何より大切なことは、そこまでどのように学習をするかです。また、確実に上達を感じること、そして上達に応じてスコアアップすることが大切です。そのためにも、スコア設定が適切かどうかを検討する必要があります。

たとえば、高い英語力を備えた人材を増やしたいという場合は、最初からハイスコアを設定したり、500点→600点→730点と基準を上げていったりすることは現実的です。一方で、英語力が高いに越したことはないものの、仕事で求められるのは交渉などのスキルも要求される高い英語力ではなく、ある程度決まった内容の英語を聞いたり話したりする力である場合には、500点や600点でよいかもしれません。さらに、500点を達成できない社員が多い場合は、TOEIC L&Rテストの利用が不適切な場合もあります。

仮にスコア設定を500点とした場合、990点を満点とするTOEIC L&Rテストにおいては約半分の正解率(実際は54%くらいの正解は必要)です。考えようによっては、半分だけ取ればよいのでそれほど大変ではなさそうですが、英語初級者にとっては想定外に大変です。マラソンに例えるならば、「42.195キロのうち半分走れればOK」という訳ではなく、「42.195キロ走ったうえでの成績」というイメージです。

TOEIC L&Rテストは1つのテストで、10点から990点を振り分けるテストです。そのため、易しい問題から難しい問題まで、様々なレベルの問題が出題されます。正解できた問題の難易度で配点が変わるのではなく、あくまで「何問正解できるか」によってスコアが決まります。よって、ハイスコアを取る人は易しい問題には多く正解し、難しい問題もある程度正解するため、リスニング/リーディングともに100に近い正解数を出せています。

 

一方で、400点未満の人は、適当に塗った難しい問題が当たる場合もありますが、基本的な問題を多く間違えているため、各セクションともに100から遠い正解数となっています。また、本来500点や600点の力を持っている受験者であっても、2時間という時間の長さで集中力が切れてしまう、また難しい問題に悩みすぎて時間切れとなり、本来解ける問題が解けていないなどの原因により、実力がスコアに反映されていないケースも多くあります。

 


基礎力を測るためのテスト活用法

TOEIC4接客など決まった英語のやり取りがメインとなる場合や、社員の英語力底上げのために設定されることの多いTOEIC 500点とは、基礎力があるかどうかが問われるスコアです。「まず基礎力だけを身につければよい」という場合や「基礎力があるかどうかだけを測りたい」という場合は、TOEIC L&Rテストよりも向いているテストがあります。それが、TOEIC Bridge L&Rテストです。

TOEIC Bridge L&Rテストは、リスニングが約25分で50問、リーディングが35分で50問、合計約60分で100問のテストと、時間や問題数はTOEIC L&Rテストの半分です。スコアは30点から100点で測定されます。TOEIC Bridge L&Rテストの100点は、TOEC L&Rテストの600点以上となるため、基礎力を測るのに適しています。

TOEIC L&RテストとTOEIC Bridge L&Rテストのスコア換算は公式サイトをご覧ください。
https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/pdf/Comparison_BridgeandTOEIC.pdf

TOEIC Bridge L&Rテストの内容は日常の場面とビジネスの場面です。リスニングのスピードもやや遅めで、リーディングの量も少なめです。そのため、初級者にとっては学習のしやすさがあります。学習がしやすいということは、上達を感じやすく、「もっと上達させたい」というやる気アップにつながるメリットがあります。学習を通して身につけた単語力や文法力、リスニング力、リーディング力はそのままTOEIC L&Rテストで活用できますし、TOEIC Bridge L&Rテストである程度のスコアが取れれば、まさにTOEIC L&Rテストへの架け橋となります。TOEIC L&Rテストに出題される内容を基本的な問題に組み替えたものと言えるため、基礎力を測るテストとしてオススメです。


アウトプット力を引き上げるためのテスト活用

TOEIC3TOEIC L&Rテストで730点以上が設定されている場合、アウトプットする力も求めていることが多いでしょう。現在は仕事で英語を話したり、書いたり、といった業務はないものの、近い将来のために準備をさせたいという場合には、TOEIC S&Wテストがオススメです。まさにL&Rテストで使われている英語のアウトプット版というイメージです。「聞いて理解する力や読んで理解する力は高いけれど、英語を使えない」というギャップを抱えている受験者は多くいます。そのため、スピーキング力やライティング力を測るために使うテストというよりは、S&Wテストの準備を通して、スピーキング力やライティング力を磨くことを目的とすることができます。

TOEICに限りませんが、スコアとは、英語力を数値化したものです。まさに、健康診断と同じく、体重計に乗って体重を測ったり、採血により血液の状態を数値化したりすることと変わりません。このような英語力を数値化するための活用だけでなく、今回ご提案させていただいたように、スコア設定によりレベルに合わせた学習促進につなげることや、将来に向けたスキル磨きとしても使うことができます。

 

 

rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

なぜTOEICのスコアが高いのに英語を話せないのか

 

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