パーソナル・ミッションステートメント作成のすすめ

アメリカの多くの企業はミッションステートメントを掲げています。ミッションステートメントは企業のゴールと、ゴール実現のためのWhyとHowを具体的に示します。ところで、アメリカでは個人のためのミッションステートメント、つまりパーソナル・ミッションステートメントを掲げている人が少なくないようです。本記事では、そのあたりに関するアメリカの事情などについてお伝えします。

パーソナル・ミッションステートメントが重要である理由
アメリカの経済誌Inc.は、パーソナル・ミッションステートメントが重要である理由を、次のように説明しています。

「パーソナル・ミッションステートメントは、リーダーシップと自己成長を構成する重要な要素だ。パーソナル・ミッションステートメントは、あなたの人生について深く考えさせ、生きる理由を明確にし、あなたにとって何が重要なのかを明らかにしてくれる。パーソナル・ミッションステートメントはまた、あなたにとって最も重要な価値観と志を明確に端的に表現してくれる。パーソナル・ミッションステートメントと日々の活動計画を突合することで、目標とするビジョンへ日々近づいてゆくことが可能になる」

企業経営においては、ゴールとミッションを明確にし、社員全員で共有することが重要であるとされています。ゴールとミッションを明確にしていないと、往々にして「その日暮らし」の、何となく日々を過ごしている状態に陥ってしまいます。同様に、個人もパーソナル・ミッションステートメントを明確にし、常に意識をしていないと、往々にして「その日暮らし」の状態に陥ってしまう可能性が高くなってしまうようです。

パーソナル・ミッションステートメントの例
実際に、アメリカでは企業などの組織のリーダーの多くがパーソナル・ミッションステートメントを作成しています。以下にその例を見てみましょう。

・デニス・モリス（キャンベルスープ・カンパニーCEO）
「私のミッションはリーダーとして仕え、バランスがとれた生活を送り、倫理的な原則を厳守して決定的な差別化要因を産みだすことです」

・オプラ・ウィンフリー（アメリカの著名アナウンサー・プロデューサー）
「私のミッションは教師になることです。そして、私のすべての生徒たちを、自分たちが思う以上の存在になれるようインスパイアすることです」

・エイミー・ジアリ（アメリカの著名マーケティングコンサルタント）
「私のミッションは協調と寛容とともに他者と生活し、他者の生活における前向きなフォースとなることです」

・グロリア・ホースリー（NPO「オープン・フォー・ホープ」創設者）
「私のミッションは、愛する人を失った悲しみにある人々に希望を与えることです」

・アマンダ・スタインバーグ（女性支援ウェブメディア「デイリーワース」創設者）
「私のミッションは、私の頭脳、カリスマ、楽観主義を総動員して、世界中の女性の価値を向上させることです」

いずれもシンプルですが力強いパーソナル・ミッションステートメントです。彼・彼女らが成し遂げようとしているビジョンが、克明に目に浮かんでくるようです。

パーソナル・ミッションステートメントの作り方
では、実際にパーソナル・ミッションステートメントをどのように作ればいいのでしょうか。私は、以下のステップを踏むことをおすすめしています。

１．自分の能力を明確にする
最初のステップは自分の能力を明確にすることです。自分の知識、経験、スキル、学力、技術力、専門能力、語学力、体力、性格等々、世の中に価値を提供できる、自分が持つすべての要素を明確にします。ここでのポイントは、可能な限り客観的に自分の能力を把握することです。

２．自分の価値観を明確にする
次のステップは自分の価値観を明確にすることです。自分は一体何に価値を置いているのか。家族、お金、仕事、地域コミュニティ、正義、宗教、愛情、文化等々、自分が大切にしているすべての要素を明確にします。そして、可能であればそれぞれの価値に優先順位を付けるといいでしょう。

３．自分がやりたいことを明確にする。
自分の能力と価値観を明確にしたところで、いよいよ自分がやりたいことを明確にします。自分の能力を使って、どのようなことを実現したいのか。自分と自分以外の人に対して、どのような価値を提供するのか。要するに、自分は一体どのように生きて行きたいのかを明確にするわけです。

ここでのポイントは、あまり深く考えすぎないことです。シンプルに「自分のライティングスキルを活用して、ライティングを学ぶ人のスキルを向上させる」とか、「日々出会うすべての人々を明るく前向きにする」といった程度でも大丈夫です。

もう一つのポイントは、企業経営におけるミッションステートメントと同様に、パーソナル・ミッションステートメントはいつでも好きなように「修正」や「書き替え」ができることです。パーソナル・ミッションステートメントを掲げてみて、どうも感じやニュアンスが違うと感じたら、いつでも書き換えればいいのです。どう頑張っても実現不可能だという場合も、状況に合わせて修正すればいいのです。

年の初めにパーソナル・ミッションステートメント作成を

アメリカには、年の初めに一年の目標を定める New year’s resolution という習慣があります。ある調査によると、2021年度のアメリカでもっとも人気があったNew year’s resolutionは、1位「もっとエクササイズをする」、2位「ダイエットをする」、3位「お金を貯める」だったそうです。

シンプルなNew year’s resolutionもいいですが、年の初めに改めて自分自身を見つめなおし、パーソナル・ミッションステートメントを作成されてみてはいかがでしょうか。普段とは違った一年になるかもしれませんよ。

＜参照＞
https://www.inc.com/rhett-power/4-reasons-why-you-need-a-personal-mission-statement.html
https://www.fastcompany.com/3026791/personal-mission-statements-of-5-famous-ceos-and-why-you-should-write-one-too

著者：前田 健二（まえだ・けんじ）
株式会社ジェイシーズ上席執行役員・北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓のコンサルティングを行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』（すばる舎リンケージ）の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

株式会社ジェイシーズ  https://j-seeds.jp/

連絡先：contact@j-seeds.jp 

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