新型コロナウイルスの流行も少しずつ落ち着きつつあります。しかし、慣れない海外生活で些細なことで体調を崩す方は少なくありません。日頃からどのような健康管理を行うのが良いでしょうか。今回は現地での健康管理について取り上げます。なお筆者は医療の専門家ではありませんので、詳細かつ正確な内容は海外渡航医療の専門家にお尋ねください。

食品・衛生対策

22112951多くの先進国では水道水を飲むことが可能です。しかし日本よりも硬度が高いなどの理由により、お腹を壊したり肌荒れを起こしたりする人はいます。気になる場合は水を現地のスーパーマーケットで購入したり、水道水を飲む際に煮沸したり、浄水器を使ったりする方が良いでしょう。洗顔で肌荒れを起こす人もいますので、現地で売られている拭き取り型のクレンジングや化粧水などを用いるなどして、洗顔時に水道水を使わないような工夫も必要となるかもしれません。

海外の外食は塩分や脂などが多く含まれていることも多く、量も日本より多く、高カロリーになりがちです。なるべく自炊をして、健康な食生活を心がけましょう。物価の高い国や地域であっても、スーパーマーケットで売られている野菜や肉などは日本よりも安価であることも多いです。醤油などの調味料も昔に比べて手に入りやすくなりました。しかし海外に住んでいると味が濃いものに慣れてしまい、自炊の味も濃くなりがちですので味付けには気を付けましょう。

スーパーマーケットなどで売られている食品も、先進国であっても日本ほど衛生に気を配っているわけではありません。野菜なども調理前によく洗うようにしましょう。また、生卵はどの国でも避けた方が無難です。すき焼きや卵かけご飯は帰国した時のお楽しみとした方が良さそうです。

屋外での虫刺されなども注意が必要です。先進国であってもヨーロッパのマダニやオーストラリアの蜘蛛など気をつけた方が良いものもあります。マダニに刺された人で深刻な後遺症が残っている人もいます。自然に触れ合うことは良いことですが、長袖・長ズボンを着用する、草になるべく直接座らない、虫除けスプレーを持参するなど気を付けましょう。これらの流行情報などは現地のメディアや役所から発信されることも多いです。

日本より寒い地域では冬は室内暖房などが完備されていることが多いですが、部屋が乾燥する傾向があります。加湿器を導入するなどして適切な湿度を保つようにしましょう。吸湿発熱繊維の下着などは海外では手に入らないことも多いので、日本から持参した方が良いでしょう。

メンタルヘルス

22678768海外では心の健康管理も重要になります。現地では言葉や文化の違いがある中で、新しい人間関係を構築しなくてはいけません。以下のような点で海外駐在員とそのご家族がストレスを感じることが多いようです。


●  現地の言葉が通じずにちょっとしたことに時間がかかってしまう
●  現地で日本語が話せる友人が少ない、現地の日本人コミュニティの人間関係に疲れる
●  子どもが学校でうまくいっていないようだ(現地および単身赴任の場合両方で起こりうる)
●  現地スタッフへのマネジメントがうまくいかない
●  現地と日本本社との板挟みになっている
●  日本の友人と心理的な距離を感じる (海外駐在者へのやっかみや異文化への偏見)
など

これらを避けるために、渡航前から日本のご家族や信頼できる人とコミュニケーションを取れる手段を用意しておくことが重要です。また、日本のテレビや映画、ラジオ、本などにアクセスできるようにしておくとよいでしょう。SNSなどは遠方のご家族や友人と気軽につながることができますが、それがストレスにつながることもあります。疲れていると感じたらインターネット上の世界から距離を置いてみましょう。

冬が長い地域では冬季にビタミンDを多めに摂取する方がよいと言われています。ビタミンDのタブレットは現地のドラッグストアやスーパーマーケットなどで購入できます。

少しでも疲れていると感じたら、日本以上に無理をしないようにしましょう。日本にいる時の7-8割くらいのパフォーマンスで十分であると考えて、休みたいと少しでも感じたらゆっくり休んでください。これらはご家族についても同様です。海外では帯同ご家族が深刻なメンタルヘルスの問題を抱えられることがあります。場合によってはご家族だけ帰国することも選択肢に入れましょう。


新型コロナウイルス対策

22377105新型コロナウイルスが流行しているとはいえ、どの国の方も日本のように外出から帰ってきたら手を洗う習慣などはあまりありません。必要があれば携帯用の除菌液を持ち歩きましょう(現地の薬局やドラッグストアなどで売っています)。

同じ感染症流行下であっても日本とは大きく規制内容が異なります。例えばドイツでは公共交通機関ではFFP2マスク、KN95マスクなど定められたマスクの着用義務があります(2022年5月17日時点)。日本の使い捨てマスクや布マスクでは認められない上に罰金などが課される場合もあります。初回渡航時の空港から目的地への移動も含めてどのような対応が必要かよく情報収集の上ご準備ください。

日本からの他国への入国、他国から日本への帰国についてさまざまな手続きが課されます。新しい変異種が流行した場合、突然変更になることもあります。例えば、その国および日本国が規定するフォーマットにしたがった抗原検査やPCR検査の陰性証明が、搭乗や入帰国に必要なこともあります。これらの書式に誤りがあって入帰国が拒否されたという話も少なくありませんので慎重に情報収集を行ってください。また、海外で抗原・PCR検査を受ける場合検査場によって検査手順が異なったり、検査場のスタッフに現地語で説明しても必要な手順通りにやってくれなかったりということもよく起こりますのでご注意ください。


現地情報の収集について

22458096マスクなどの規制や入帰国時の規則などは、渡航先の日本国大使館の情報が詳しいです。経由地を挟む場合は経由地に関しての取り扱いも異なりますので、最終渡航先および経由地の情報を収集することをお勧めします。なお他国へ赴任される方については、日本語で発信される情報だけではなく、現地のニュースなどに目を通して日々情報収集に努めてください。

 

特に新型コロナウイルスに関しては国単位ではなく州、自治体単位で規制が異なる場合があります。英語で書かれた情報だけではなく現地語で書かれた情報の方が早く、正確です。市役所などのページを定期的に参照してください。多くの日本国大使館、総領事館においても必要な情報を翻訳してくれますが現地語の情報収集にも努めた方がよいでしょう。また変異種などが流行すると急に規制が強化される場合もあります。これは戦争やテロなどの有事発生に関しても同様です。


今回は海外赴任者の健康管理〜現地での健康管理編というテーマでお話ししました。赴任・出張問わず海外渡航前に仕事が忙しく、海外に渡航した途端体調を崩すということも少なくありません。ご自身およびご家族の心身の健康が一番ですので、無理せず日頃から十分にお気をつけください。

 


<参考文献、お役立ち情報など>
外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/life/

外務省 世界の医療事情
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html

 

 

 

mariko_hamada02著者:浜田真梨子(はまだ・まりこ)
株式会社ジェイシーズ執行役員 シニアマーケティングコンサルタント(欧州)
大手電機メーカーにて約10年に渡り、IT営業およびグローバルビジネスをテーマとする教育企画に従事した。その後コンサルタントとして独立し、日系・外資問わず民間企業や公的機関へのコンサルティングを行っている。中でもハンズオンベースでの調査から受注までの一連のプロセスをカバーする営業・マーケティング支援や、欧州拠点の設立などのサポートを得意とする。2016年には欧州で経営学修士号(MBA)を取得し、現在はドイツを拠点に活動している。

株式会社ジェイシーズ  https://j-seeds.jp/

連絡先:contact@j-seeds.jp 

 

従業員を海外赴任させる上で配慮すべきこと

海外赴任者の健康管理〜準備編

 

 

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