「英語を話せるようになりたくて、書籍を買ったのですが、どのように使ったらいいのでしょう?」という質問にお答えします。

 

「スピーキング力」に必要な要素

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試験により配点が異なるものの、「スピーキング力」を測る試験では、以下の要素の出来栄えが評価対象になっていることが多いです。したがって、これらを総合的に見て「スピーキング力」と呼んでいると考えられます。

 

・伝わりやすい発音・強弱のリズム・ピッチ・イントネーション

・流暢さ

・適切な語彙(例:小学生に対して話すときと専門分野の会議で使う単語の使い分け)

・正しい文構成(例:文法ルールに沿った文の組みたて)

・パラグラフ構成力(例:わかりやすい話の流れ)

TPOにふさわしい話し方や配慮(例:人間関係をよくする話し方やマナー)

 

「今やっている練習方法はこれらのうち、どの力を高めるのに有効なのか」を意識しながら練習しましょう。自分の状態を客観的にとらえることを「メタ認知能力」と言います。「自分の練習方法や内容を客観的に認知すること」は成長に必要不可欠です。上記の一覧を自分の課題が何で、何のために練習アクティビティをしているのかを考える参考にしてください。

 

練習方法

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スピーキング力を上げる秘訣は当然、声を出して練習することにあります。特に「伝わりやすい発音・強弱・ピッチ・イントネーション」と「流暢さ」は発話の基本中の基本ですので、徹底的に練習してください。重要なことは、「何もかもお手本の音源に忠実に行うこと」です。以下のプロセスで練習してください。

 

 1.Comprehension (理解)

 スクリプトを確認し、内容を理解しましょう。内容が理解できない場合は単語と構文を確認します。単語は辞書で調べて、構文はスラッシュリーディングで紐解きましょう。テキスト内の訳文を活用して、辞書を調べる時間や構文を紐解く時間を削減してもいいのですが、自分が将来的にその発話をするためには、単語や文法の用法理解は必要不可欠です。「これは言えるようになりたい!」と思う表現は時間をかけてでも納得するまで必要なことを調べることをおすすめします。

2.Mumbling (マンブリング)

mumbleとは「もごもご話す」「つぶやく」という意味です。マンブリングは音声を聞きながら、口の中で小さく発音する手法です。目的は言いにくい単語や発音を知らない単語を見つけ出すことです。そのため、この段階ではお手本音声よりも大きな声で話してはいけません。だからこそマンブリングという名前がついています。正しい音を聞きつつ、自分の課題がある箇所についてスクリプトにメモを取り、何度か聞き返しながら課題となっているポイントにどう対応すべきかメモを入れていきます。聞こえるままにカタカナでスクリプトにメモを入れる人もいれば、発音記号を書き入れる人もいますし、強勢の箇所に下線を引く人もいます。自分に合った方法を見つけましょう。

3.Repeating (復唱)

丁寧に1文ずつモノマネリピーティングをします。自分の思い込みを疑うことが大切です。日本人は特に母音の思い込みが多いので、要注意。officeの最初の音は「オ」ではなく、アメリカ英語なら「ア」。語尾の「-tion」は「ション」ではなく、アメリカ英語なら「シャン」。簡単な単語でも思い込みをしていないかを疑って、丁寧に音を聞いて再現しましょう。


4.Overlapping (オーバーラッピング)

ここまでは「伝わりやすい発音・強弱・ピッチ・イントネーション」に重きを置いた学習でした。この先は「流暢さ」に重きを置いた練習に入ります。ナレーターの声に重ねて、同じペースで音読します。ついていくために発音が雑にならないように注意しましょう。同じペースで読めるようになるまで練習を続けてください。これが結構大変です。できるようになるまで、徹底的に練習してください。


5.時間内音読

オーバーラッピングで満足な結果が出るようになったら、自分の声だけで音読をしましょう。その音読の時間を測ってください。お手本音源の秒数・分数を確認し、その長さよりも早く読み終わっていたら流暢さは合格です。


6.暗記→録音→タイムトライアル

「読む」ことが流暢にできたら、今度は自分の力だけで発話できるようになっているか確認してください。何も見ずに話してください。その音声を録音しましょう。ここまで何度も練習してきていれば、案外スクリプトを覚えているものです。

録音した音声を再生して「スクリプトと異なったことを言っている箇所がないか」「発音やイントネーションが正しいか」「流暢さはどうだったか」を確認してください。すべてうまくできたら、今度はもっと流暢に話すために、自分の発話スピードを上げていきましょう。自分の限界に挑戦です!一般的に教材で使われる音声は、ナチュラルスピードよりも遅いので、本当のナチュラルスピードを目指すために時間短縮への挑戦は有効です。

 

1-6のトレーニングメニューは一日で終わらないかもしれません数日に分けて段階的に行う必要がある人がほとんどなので、焦らずにコツコツと練習しましょう。本1冊で何十時間も練習できます。そういう意味で、音源付きの書籍はコストパフォーマンスがいいですね。

 

ロールプレイ練習について

使っているお手本が一方的に話すタイプの音声ではなく、2人以上の人が話している音声の場合は、実際の会話の流れを重視します。一気に一人何役もやるのではなく、一人の登場人物の気持ちになりきり、話の流れを真似ていくことが大切です。会話をするときにはそれぞれの人に立場があり、思惑もあるので、コミュニケーション練習という観点から、登場人物の英語を一人ずつ練習をしていったほうが、将来その人のような立場になったときに適切な発話ができます。

 

流暢さこそが自主トレの最大の成果

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スピーキング練習過程の中で単語を覚えたり、構文を覚えたりすることはもちろん重要なのですが、流暢さを上げることを常に意識しましょう。「流暢さ」を軽視してはいけません。同じ30秒の時間枠で流暢に話せる人は5つの情報を提示できるかもしれませんが、ゆっくり話していれば2つしか情報が提示できません。ビジネスにおいて流暢さは発信力に直結するのです。

幸いなことに「流暢さ」は一人で練習していても成果を感じます。発音改善は自分で気をつけていても、なかなか口の中の筋肉が正しく動かせずにうまくいかないことがありますが、流暢さはwpmword per minute=1分で話せる量)という客観的な指標があるので、自分の出来栄えが確実にわかります。発信力を高めるために、自分に負荷をかけるタイムトライアルを活用して流暢さを高めましょう!なお、上記の練習法は英語に限定した話ではなく、どの言語学習にも展開できます。これから新しい言語を学ぼうと思っている方にもおすすめの学習法です。

 

会話にはリスニング力も必要!1822534_s

最後に、忘れてはいけないのが、会話を行うためにはリスニング力が必須だということです。相手が言っていることを聞き取れなかったら、適切な応答ができないので、リスニング力を上げるためのインプット活動も意識しましょう。スピーキング練習用に手にとった教材の中にある音源を全て使い尽くしていれば、リスニング力の向上も期待できます。徹底的にトレーニングをしていけば、表現を覚えて、自分がナチュラルスピードで話せるようになるわけですから、当然ナチュラルスピードの話を聞き取れるようになります。

話すことは聞くことにもつながるので、ぜひ日々の生活にスピーキング練習を取り入れてください。

 

 

 

リーディングについて

ネイティブのように前から情報を理解できる! スラッシュリーディング・スラッシュリスニング
スラッシュリーディング応用編~長文の一文字一句を読まない! 省エネモードを使うべきところを把握
・<企業の研修担当者必読>英語の長文を速く読解できる手法~ ScanningとSkimming~

■スピーキング練習法

<企業研修における英語力育成戦略>初中級者のスピーキング練習法

・<企業研修における英語力育成戦略> 中上級者のLinguaskill Business Speaking対策

・<企業の研修担当者向け>スピーキングテスト対策~時制をマスターせよ~

■Linguaskill Businessについて

・運営しやすい高品質ビジネス英語テスト「Linguaskill Business」

■TOEIC®SW試験について

・ビジネスで戦力となる英語力を見極める TOEIC®SW試験とは

ビジネスで戦力となる英語力を育成する TOEIC®SW目標設定

・ビジネスで戦力となる英語力を育成する TOEIC®SW学習法

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執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO 

クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。英語教授法について大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。SCM部門の配属からHR部門に異動できず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教育教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天様で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。

 

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