多くの企業において、TOEICのスコアが昇進や昇給などにかかわってきます。そのため、社内講座に参加したり、e-learningを受講したり、または独学で取り組んだりしている社員の方も多いでしょう。その中で、最初は同じくらいのスコアでのスタートであっても、短期間で大幅にスコアを伸ばす人と、なかなかスコアが伸びない人が出てきます。今回はどのような人が短期間にスコアアップできて、どのような人がなかなかスコアが上がらないのかを取り上げます。



短期間でのスコアアップの理由

スコアアップ「単語学習と模試だけで200点アップしました」ということを聞いたことがあるかもしれません。その一方で、学習に時間をかけているにもかかわらず、なかなかスコアが上がらない人も少なくありません。短期的にも長期的にも、スコアアップする人としない人の違いは、一言でいうと「基礎力の有無」です。

英検準2級以上を持っている人や、大学受験の勉強をしっかりとしてきた人には、英語の基礎力があります。そのため、TOEICで頻出する語彙の知識を増やし、模試を通して出題形式や傾向、解答に慣れることでスコアが上がります。たとえば、英検準2級を持っている人が、何の準備もせずにTOEICを受験して350点だったとします。英検と同じように時間をかけて解いたり、大学受験で時間をかけて読み解いていくことに慣れていたりする場合、TOEICの時間配分がうまくいかず、スコアが出ません。このようなケースでは、単語と模試に取り組むだけでもスコアは上がりやすいといえます。

以前、「なぜTOEICのスコアが高いのに英語を話せないのか」の記事でもご紹介しましたが、TOEICに必要な力が3つあります。それが、「英語力」「情報処理能力」「対策力」の3つです。英語の基礎力が身についている状態でTOEICに頻出する語彙の知識が増えると、内容の理解度が高まります。さらに、模試を受けて問題演習をこなすことで、身についている知識やスキルを、TOEICが求めている知識やスキルにチューニングすることにつながるため、対策力が高まります。解く練習をするうえで聞く/読むことにも慣れていくため、情報処理能力も伸びます。

 

その結果、短期間であっても正解数を増やすことができるため、大幅なスコアアップが可能となります。なお、模試を解くことは、英語力アップにはつながりません。問題を解いて英語力が上がるのであれば、TOEICを受験するたびに英語力が上がることになってしまいます。模試を解くことでもたらされるのは、知識やスキルのチューニングです。



基礎力が不足している場合の取り組み

基礎力350点を取ったものの英語力が不足している場合、基礎力がある人と同じことをしても、当然ですが結果は異なります。基礎力が不足している状態で単語を学習し、模試を大量に解いても、スコアはほとんどかわらないというケースが多くあります。もちろん、単語学習をして語彙力が増えればスコアに反映されやすくなりますが、そもそもは英語学習に慣れていないことが多いため、基礎力がある人と同じ量の単語学習をしても、学習の質が大きく異なるため、単語の定着率も同様に異なります。基礎力が不足している場合には、長期的なプランで取り組むことが不可欠です。また、難しいことをしても早く上達するわけではないため、早い段階で基礎固めを徹底的に行うことが大切です。

 

基礎固めとしてオススメなのが、基礎単語の習得、基礎文法の習得、基礎リスニングの習得です。とはいっても、中学の教科書を使うのではなく、TOEICに特化したものを使用するほうが効率的です。もちろん、中学や高校で学ぶ文法はTOEICでも使われていますが、その文法を学ぶ際に使われている単語が異なっています。John lives in Tokyo.とJohn reports to the voice president.は、同じ文法項目(三単現のs)が使われていますが、使われている単語が異なります。前者は中学文法かつ中学単語です。一方、後者は中学文法かつビジネス単語です。また、リスニングを勧める理由のひとつは、使われている単語のレベルがリーディングと比べてリスニングのほうが易しいからです。

 

また、Part 3(会話問題)とPart 4(説明文問題)の解答において、聞こえた単語が含まれる選択肢を選べば正解になることも多く、聞き取れるようになるにつれて正解数が高まりやすいという効果があります。一方で、リーディングは単語のレベルが高いほか、Part 7(読解問題)では本文と正解の選択肢の間で言い換えられていることが多いため、正解するためにはより高い理解度が求められます。



やる気につながる理解度アップ

理解「英語が嫌い」や「英語が苦手」と感じている人のほとんどは、「よくわからないから」というのが理由です。そのため、理解度が高まることでやる気につながるケースも多々あります。英語が苦手な人にとって、大量の難しい問題が次々と現れるTOEICでスコアアップすることは、学習する前から諦めたくなるくらい難題に思えるかもしれません。また、今まで学習をしたのにスコアアップにつながらなかったという苦い思いがあるという場合もあるかもしれません。

 

基礎力が不足している場合は、徹底的な基礎固めからスタートすることが大切です。基礎から始めることで確実に理解度を高め、それがやる気へとつながります。やる気につながった結果、「もっと理解したい」という思いが沸き上がるため、より多くの時間とエネルギーを費やすようになり、その結果、さらに理解度が高まります。そして、試験前には、模試に取り組むことで知識とスキルのチューニングが行われ、スコアアップにつながっていきます。そのスコアアップが、「もっと上達したい」というやる気につながり、やる気と上達の相乗効果がもたらされます。

 

 

 

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rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

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