以前、人事の方々向けの講演の際、「社員の英語学習に関する課題」というアンケートへの回答で圧倒的に多かったのが「モチベーションが低い」と「学習が継続できない」の2つでした。学習者の皆さんも同様なのですが、英語学習がなかなか続かない理由を、「モチベーション」や「意志」にあると考えている方が多いのが現状です。

 しかし、モチベーションや意志だけで継続できるようになるわけではありません。別のことで考えてみると、わかりやすいと思います。たとえば、毎日仕事を継続できている理由は、モチベーションが高く意志が強いからでしょうか。もちろん、大前提として「やらなければいけないから」という理由はありますが、モチベーションと意志はそれほど活用しているわけではないでしょう。今回は、モチベーションと意志に頼らずに、継続できる状態を作る方法のご提案です。

 

モチベーションの定義

 「モチベーション」というカタカナ語は意外と厄介で、人によって意味するものが異なる可能性があります。「モチベーションがある/ない」という場合は、モチベーションの意味は「動機づけ」や「理由」でしょう。

 しかし「モチベーションが上がる/下がる」という場合は、モチベーションの意味は「やる気」です。どちらかと言えば、「モチベーションが上がらない」や「モチベーションが下がった」という言い方が多いことを考えても、多くの場合は「モチベーション=やる気」という意味で使っています。モチベーションを「やる気」と捉える場合、それは熱量のことです。

 セミナーや講演などでは、モチベーションが上がる状態を作ることができます。「鉄は熱いうちに打て」というように、セミナーや講演を通して、モチベーションを高めることで、英語学習をスタートしたい気持ちを作ることができます。セミナーや講演を「はじめの一歩」とすることで、「始めるきっかけ」を求めていた社員の方がスムーズにスタートする場となります。

 しかし、「やる気」という意味でのモチベーションは「熱」ですから、時間が経てば自然と冷めます。これが「モチベーションが下がる」という状態です。モチベーションだけに頼って学習を続けようとしても、熱量が下がることによって続かなくなります。

 

「3日坊主」のシンプルな理由

 英語学習とダイエットは、「3日坊主」で終わりやすいものの代表です。しかし、「3日坊主」の理由は、「英語学習やダイエットをしたくないから辞めた」というわけではなく、ただ「忘れてしまった」というケースが多いのです。また、続けられない理由は、意志が弱いからではありません。「続ける」とは動作ではなく、「状態」です。

 たとえば、私自身の例を挙げると、運動に関しては「3日坊主」ばかりであるものの、201152日から毎日英語フレーズメルマガを配信しています。「12年以上毎日続けている」とも言えますが、正確には「メルマガを書き始めて、書き終える」という動作を毎日やってきたということです。学習でも運動でも、この「始めて、終える」という動作を習慣的に行うことを「継続」と呼んでいます。

 私の場合は、メルマガ配信については「始めて、終える」ということを毎日やってきましたが、運動については「始めて、終える」ができていません。正確に言えば、「始める」ができているかできていないか、です。その違いは、意志の力にあるのではなく、「『始める』を仕組化できたかどうか」にあります。

 

「継続できる仕組み」を作る

 英語学習を継続するためには、「継続できる仕組み」が不可欠です。まず、最も大切なことは「取り組む意味」です。続けられない理由は、意志が弱いのではなく、意味が弱いのです。学習を継続できている方は、意志が強いというよりも、英語学習への意味(目的)が強いのです。

 そのため、英語学習の優先度が高くなり、忘れなくなります。企業にとっての英語学習の意味は、社内で共通したものもあれば、部署やチームによって細かく分かれるものもあると思います。いずれにしても、きっかけは「会社からの強制」だったとしても、「何を目指して、どれくらい取り組むか」は自分で決めることで、「自分ごと」として優先度が高くなります。

 

 また、英語学習を続けられない方に多いのが、「学習スケジュール」がないことです。「時間ができたら学習する」という曖昧な考え方では、学習に意識が向かうことは難しいでしょう。スケジュール作りのコツは、「7時から英語学習をする」のように時間を明確にすることのほか、「if-thenルール」と呼ばれるもので、「歯を磨いたら、英単語の学習をする」のように、別の行動から学習への流れを決めることです。「帰りに駅前のカフェに寄って、閉店まで学習する」や「朝8時にオフィスに行って、1時間学習する」と決めている方もいらっしゃいます。

 

 さらに、学習チームを作るのも効果的です。一緒に集まって学習するケースもありますが、チームを組んだ後は各自で学習し、報告をしあうというケースも多くあります。こうすることで、学習の優先度が高まりますし、「やらない」という選択肢が消去されやすくなります。これは「仲間の目」という圧力であるピア・プレッシャーが効果的に働くだけでなく、悩んだ時にすぐに相談できるという挫折防止にも役立ちます。

 継続できる習慣化サポート

まとめ

 モチベーションと意志は大切な要素ですが、この2つで学習を継続するわけではありません。また、今回は触れませんでしたが、いつでもどこでも学習できるアプリやEラーニングなどのツールを導入すれば自動的に学習するようになるわけでもありません。「いつでもどこでもできる」とは、裏を返せば「『今』『ここ』でなくてもよい」という言い訳にもつながります。ぜひ御社に合った「継続できる仕組み」を考えていただくきっかけになれば幸いです。

 

 

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rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

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