TOEIC L&Rテストのスコアが成果目標となっていたり、英語力を高めるためにTOEICを学習していたりする方も多いでしょう。一方で、スコアを取ることが目的になってしまい、本末転倒になっているケースも少なくありません。とはいっても、英語を学んでもスコアが上がらなければ意味がありません。
 そこで、今回はTOEICスコアアップのための正しい学習法のご提案です。

 

TOEICに必要な3つの力

 以前にもご紹介しましたが、TOEICでスコアアップするために必要な力は3つあります。

 1. 英語力
単語力や文法力などの知識のことで、中長期的な学習が必要です。単語や文法がわかれば「聞く・読む」にプラスにはなりますが、すぐに英語のまま理解できるようになるわけでも、読む速度が上がるわけでもありません。スポーツでいえば、ルールの知識です。

 2. 情報処理能力
英語のまま理解したり、素早く処理したりするために必要な力で、スピード処理能力と言い換えることもできます。英語力が知識であるのに対して、情報処理能力はスキルです。普段から英語を聞いたり読んだりすることで、知識がスキルへと高まっていきます。スポーツでいえば、ルールに則ってプレーしたり、状況を判断したりする力です。

 3. 対策力
いわゆるテスト対策に当たるもので、時間配分や、パート別の対策などです。

「勉強をしているのにスコアが上がらない」という場合は、3つの力のうちどれかが欠けていると推測できます。

 

身につけるべき「テクニック」とは

 テクニックというと「質問に入っている単語が、選択肢に入っていたら不正解」とか、「選択肢にonlyが入っていたら不正解」のような「裏技」というイメージがあるかもしれません。なお、かつてはそのように解けた問題もありましたが、現在はあまり多くないどころか、「避けたほうがよい」と言われていた選択肢が正解になることも少なくありません。幸か不幸か、裏技的なテクニックの効果は薄くなりました。

 また、Part 3(会話問題)やPart 4(説明文問題)の設問を先に読んで、求められている情報をピンポイントで聞き取るテクニックは、「対策力」として大切ですが、これだけではストーリーを理解するためのスキルを磨くことはできません。特に500点後半を取った後に必要なのは、対策力としてのテクニック(=解法)ではなく、情報処理能力としてのテクニック(=理解の技術)です。過去のTOEIC L&Rテストと比較すると、最近のテストでは、単語の聞き取りや読み取りではなく、ストーリーの理解に関する問題が数多く出題されています。

 理解を高める技術の一つが、冒頭で概要をつかむことで、その後の展開を把握しやすくなるというものです。日本語でも英語でも、基本的には冒頭を聞いたり読んだりすることで、状況を理解することができます。たとえば、Part 3の会話が「いらっしゃいませ」から始まれば「店」で「店員さんとお客さん」における会話ということが判断できます。また、Part 7の文書で「来週、建物の点検があります」という告知であれば、「いつからいつまで」といった期間や、注意事項などが続くと推測できます。このように、冒頭で状況を理解することができれば、その後の展開を把握しやすくなります。

 

聞ける/読めるようにするために必要なこと

 もちろん、以上のようなテクニックを使えるようになるには、土台となる英語力が必要です。しかし、知識をつけただけで聞けるように/読めるようになるわけではありません。単語力は理解度の大前提となりますが、単語の意味がわかるだけでリスニングやリーディングの精度が上がるわけではありません。

 日本語を例に考えると必要なことが見えてきます。日本語を聞いて理解するときには、聞いたものを「音」としてとらえ、そのまま「意味」とつなげます。この間に「文字」は存在していません。しかし、英語の場合は、「文字」を見て「意味」を思い浮かべることには慣れていても、「音」を聞いて「意味」を理解する練習は圧倒的に不足しています。また、日本語を読めるようになる過程で、「文字」を見て、それを頭の中で「音声化」することを行っていたと思います。慣れれば、頭の中で音声化しなくても読めるようになりますが、まずは音声化が不可欠です。

 リスニング・リーディングのいずれも、「音」が重要にもかかわらず、「音」を活用した学習が不足しているのです。たとえば、「読めばわかるのに、聞くとわからない」という悩みや、「単語はわかるのに、速く読めない」という悩みは、音声を活用した学習を通してギャップを埋めることができます。音声を活用した学習とは、音読です。聞いた音を繰り返すリピーティングのほか、音声とピッタリ重ねて声を出すオーバーラッピングや、流れている英語にそのまま後から付いていくシャドーイングなど、「理解するため」や「覚えるため」の知識を増やす学習ではなく、スキルアップのためのトレーニングを取り入れることで、リスニング力やリーディング力の向上に役立ちます。なお、英語を口に出すトレーニングにより、フレーズや構文など単語のつながりも「チャンク(塊)」として頭に入るため、理解するスピードも上昇します。

 もちろん、問題を解くことや単語や文法を覚えることも大切ですが、理解する力を高めるために、そしてスコアアップに直結させるためにも、音読トレーニングを活用することをお勧めします。

 book_hirameki_keihatsu_man

 

 

 

なぜTOEICのスコアが高いのに英語を話せないのか

適切なTOEICスコア設定とTOEICプログラム活用法

英会話ができてもスピーキングテストで高得点を取れない理由

手軽にできるスピーキング力の高め方

 

 

 

rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

■早川幸治先生登壇のセミナーレポートはこちら

【ワンステップ上の英語研修】習慣化で実践力を身につける英語学習の仕組み

 

 

Smart Habit Enterpriseの資料ダウンロードはこちらから