「時間をかけて英語を学んでいるのに、なかなか使えるようにならない」という悩みは少なくありません。これは、知識はついているものの、スキルにまで高まっていないことが原因です。スポーツでも、楽器演奏でも、英語学習でも、新しいスキルを習得するには、「型」を繰り返し練習することで処理を自動化させ、さらに必要な時に素早く活用できる状態にまで高めることが大切です。掛け算九九においても、九九を覚えただけでは、あくまで知識であり、スキルとは呼びません。具体的には、4×8=32と知っているのが知識、「4人ずつのグループが8つあるから、32人」というように「実際に使いこなせるレベル」がスキルです。 

 

「学び即使う」の実践練習 

 英語学習においても、単語の意味を知っているだけでは知識止まりです。さらに、どのように使われるのかまで理解したうえで、必要な時に使えるかどうか、がスキル習得のポイントとなります。ここまでを自然に高めるためにも、仕組みとして用意するのが効果的です。つまり、「学び即使う」の流れを組み込むことをお勧めします。 

  業務で使用する英語はスピーキングやライティングのどちらも多岐にわたりますが、表現や情報提供の順番などに「型」があるものについては、どれも効果的な仕組みを作ることが可能です。たとえば、以下のようなものです。 

 Eメール 

・プレゼンテーション 

・会議のファシリテーション 

・留守番電話 

・手順の説明 

・依頼/提案など 

・その他 

  「表現の学習」から「使う」までの流れに組み込むための方法の1つが、ロールプレイです。たとえば、メールライティングや留守番電話にメッセージを残すことなどがわかりやすい例でしょう。まずはどのような単語や表現を用いるのか、どのような順番で情報を提示するのかなど、実際に使われているものを例として読んだり聞いたりすることで知識を増やします。続いて、実際に真似をして書いたり、話したりすることで、「学び即使う」の流れができあがります。この時は、全く同じことを書く/話すということでもよいでしょう。続いて、ロールプレイとして、似たような場面設定に対して、先ほど実践したことを応用します。 

  特にメールライティングなどは「型」があるため、すでに社内でスキルを使いこなしている方がいらっしゃる場合、その方の英文作成スキルを「型」として、これからスキルを習得する方々の学習に転用できます。知識としての英語力を身につけていても、実際に書くことに慣れるまでは、どうしてもメール1本を完成させるのに時間がかかります。しかし、経験が蓄積してくると、英語力は変わらなかったとしても、経験がスキルに転化することで、より短い時間で、より多くの情報を処理したり生み出したりできるようになります。その第一歩として、ロールプレイの導入をお勧めします。 

 

  たとえば、メールの冒頭や結びなどは、以下のような定型文を活用することで時間を大幅に短縮することができます。 

・I’m writing to…(~のために書いています) 

・I’m writing about…(~について書いています) 

・I’d like to remind you that…(~ということをリマインドさせていただきます) 

・If you have any questions or concerns, please feel free to contact me.(ご質問やご心配な点がありましたら、お気軽にご連絡ください) 

・I look forward to hearing from you.(お返事お待ちしております) 

・Thank you very much for your cooperation.(ご協力ありがとうございます) 

 

  プレゼンテーションでは、以下のような表現を身につけることで、聞き手に伝わりやすいものになるでしょう。 

・The purpose of my presentation is to…(私のプレゼンテーションの目的は、~することです) 

・There are three important points about this.(これについては3つの重要なポイントがあります) 

・Let me explain this in detail.(これについて詳しく説明いたします) 

・This table shows…(この表で説明しているのは、~) 

・As you can see from the chart, …(このグラフからわかるように、~) 

・Let’s move on to the next topic.(次のトピックに移りましょう) 

・Let me give you an example of this.(これに関する例を説明します) 

 

ロールモデルとロールプレイ 

 業務で使う英語表現ついて、表現集として手元に置いておくだけでなく、実際に参考にしながら自分で書き、さらに複数の人物の前でロールプレイを行うことで、知識とスキルを同時に身につけることができます。可能であれば、すでに英語で書いたり英語で話したりすることに慣れている方を「ロールモデル」として何回か観察する場を用意し、英語の「話し方」や「表現」を真似るところからスタートすることで、無理なく無駄なくロールプレイへと入ることができます。 

  ロールモデルがいることで、「どう書けばよいかわからない」「どう話せばよいかわからない」という、知識の部分で悩むことが少なくなります。こうして、個別の知識やスキルが、社内の知識やスキルへと高まっていきます。 

 

まとめ

 プレゼンテーションやメールライティングのほかにも、状況説明、依頼や提案、謝罪など、「こういう場合にはこう書く/話す」という「型」を持つことで、素早く正確な英語を生み出せるようになります。「勉強」として表現を学ぶだけでなく、ロールプレイとして組み込むことによって、これから同じようなスキルを身につける必要がある方々のスキル習得に活用することができます。学習を実践に高めることで最速でのスキルアップが可能となります。 

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rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

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