アメリカのオンライン調査会社のクエスチョンマークが、「モダンスキル2022年度版」(Modern Skills for 2022)という興味深いレポートを公開しています。2021年に続き、2022年も「引き続きボラティリティ(変動性)が最大のビジネスチャレンジになる」と断定するそのレポートは、アメリカの経営者が今年2022年に従業員にもっとも求める10のスキルを発表しています。ロシアによるウクライナ侵攻など世界的な混乱が続く今年2022年ですが、その内容はどうなっているのでしょうか。

 

2022年に従業員にもっとも求める10のスキル

25060501位 コミュニケーションとコラボレーション

アメリカの経営者が今年2022年に従業員にもっとも求めるスキルの第1位は、コミュニケーションとコラボレーションのスキルです。調査によると、アメリカの経営者の多くが、コミュニケーションとコラボレーションがビジネスで成功する上でもっとも重要なスキルであると答えています。確かに、ステークホルダー間のコミュニケーションとコラボレーションの欠如は往々にして組織全体を停滞させ、事業目的の実現を阻む要因となる可能性を高めます。

2位 技術的リテラシー

多くのモノがデジタル化するデジタルトランスフォーメーションが世界的に進行していますが、多くの仕事において技術的リテラシー(Technical Literacy)がますます求められています。ここで言う技術的リテラシーとは、クラウドコンピューティングやモバイルコンピューティングなどの基本的な知識に加え、アプリケーションやプラットフォームなどの実務上のスキルが含まれます。現代は営業や人事といった、技術的リテラシーがそれほど必要とされていなかったとされる領域でも、技術的リテラシーが求められる時代です。

3位 クリティカルシンキングとプロブレムソルビング

ものごとを包括的・分析的に捉えて多面的に思考するクリティカルシンキング(Critical Thinking)と、複雑な問題に対する解を導き出すプロブレムソルビング(Problem Solving)も、アメリカの多くの経営者が従業員に求めているスキルです。先が見えない、単一的で簡単な答えが見つけにくい現代においては、特に必要とされているのかもしれません。

4位 人工知能(AI)

今や生活や仕事のあらゆる領域でAIが使われています。実際に、全世界のAI市場は2028年までに年率33%で成長し続けると見込まれています。AIを使う、またはAIとともに仕事をするのが「新たな日常」となる今後、AIを使いこなす、AIとコラボレートして結果を出すといった、AIに関するスキルが求められてくるでしょう。

5位 データリテラシー

ビッグデータ解析などのデータリテラシー(Data Literacy)も重要なスキルです。データを読み解き、全体像を描き、次の戦略を練る。あるいはマシンラーニングを使ってデータマイニングを行うなど、データを制する者が優位なポジションを得る時代です。企業は、それを体現してくれる人材を切に求めています。アメリカでは実際に、データを分析するデータアナリストの求人が増加し、平均サラリー額も大きく上昇しています。

6位 エンパシー

エンパシー(Empathy)とは、他者と自分を同一視せずに他人の心情をくむという意味です。組織が物理的に分散している今日、離れたところにいるチームメンバーの立場や心情を読み取り、理解する能力が求められています。特にコロナの世界的なパンデミックにより仕事や生活のストレスを抱える人が増加しています。エンパシーを持つことで、そうした人々のストレスを軽減することが可能になります。

7位 チームワーク

複雑で先が見えない時代だからこそ、チームで仕事をして結果を出すチームワークが求められます。ワークスタイルが変化する中、チームメンバーとコミュニケーションをとり、彼・彼女らのモチベーションを高め、コミットメントを引き出すチームのドライバーとなる能力が求められています。また、コロナ禍においては、ソーシャルメディアやZoomなどのツールをフル活用し、円滑にチームワークが進むようコーディネートする能力も求められます。

8位 サイバーセキュリティ

調査会社ガートナーによると、2020年度の一年間で全世界の企業がサイバーセキュリティ対策に投じたコストは1230億ドル(約14兆5140億円)に達し、今年2022年度は1704億ドル(約20兆1072億円)に増加すると見込まれています。特にランサムウェアなどのマルウェアの被害件数が激増し、2020年だけで前年比358%も増加しています。サイバーセキュリティに対応できる人材が絶望的に不足していて、業界を問わず対応が急務となっています。サイバーセキュリティの知識とスキルを持った人材は、多くの業界で引手あまたとなるでしょう。

9位 クリエイティビティ

多くのモノが陳腐化する「総コモディティ化時代」においては、クリエイティビティを発揮できる企業や個人が有利になります。特に無から有を生み出す能力や、複数の仕事を組み合わせて新たな仕事を作り上げる能力、あるいはアプリケーションやコンテンツなどの新しい価値を生み出す能力を持ったクリエイティビティ溢れる人材は重宝されます。また、従来の仕事のやり方にとらわれずに新しい仕事のプロセスを考え出せる人、新商品やサービスのアイデアが出せる人、マーケティングで創造性を発揮できる人なども重宝されるでしょう。

10位 アダプタビリティ

アダプタビリティ(Adaptability)とは、「環境適応性」と訳されますが、文字通り変化する環境へ適応する能力のことです。現代は先が見えない時代ですが、同時に変化の時代でもあります。変化し続ける環境に対応し、適応する能力は、労働者ひとり一人に強く求められています。



まとめ
2498749現代はVUCAの時代であると言われます。VUCAとは、V(Volatility, 変動性)、U(Uncertainty,不確実性)、C(Complexity,複雑性)、A(Ambiguity,曖昧性)からできた造語です。我々はVUCAの時代を生き、今後さらにVUCAな環境で仕事をする状況に追い込まれる可能性が高いでしょう。

上にご紹介した10のスキルは、アメリカの労働者に求められているのみならず、日本で働く私たちにも求められていると認識する必要があります。経済のグローバル化がさらに進む今後、私たちはさらにそうしたスキルを身につける必要に迫られるでしょう。

<参照>
https://www.questionmark.com/wp-content/uploads/2021/12/Modern-Skills-for-2022.pdf
https://www.fortinet.com/resources/cyberglossary/cybersecurity-statistics

 

 

maeda002著者:前田 健二(まえだ・けんじ)
株式会社ジェイシーズ上席執行役員・北米担当コンサルタント

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓のコンサルティングを行っている。アメリカ在住通算七年で、現在も現地の最新情報を取得し、各種メディアで発信している。米国でベストセラーとなった名著『インバウンドマーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

 

株式会社ジェイシーズ  https://j-seeds.jp/

連絡先:contact@j-seeds.jp 

 

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