英語学習の世界では「ビジネス英語」という表現が、普通の英会話または日常英語とは区別された文脈でよく使われています。実際、筆者の経験から言うと、「ビジネス英語」という言葉の定義は幅広いように思えます。

 

フォーマルなスタイル

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まず典型的な定義の一つは、そのフォーマルなスタイルだと思います。ビジネスの場合、相手に対してある程度のフォーマルさを示す必要があるため、挨拶もかしこまって「お元気ですか?」と尋ねるのが普通です。ビジネスのお客さん相手に"Whassup, dude?"(よー、お前元気か?)とは言えませんね(Whassup?What'up?がさらにくだけた米語)。

また断る場合も、相手の感情を害さないようにソフトに言う必要があります。あくまでビジネスつながりの相手であれば、立ち話が終わって別れるときも、"I got to go. Talk to later."というより"I'm sorry it's getting late. I have to go, but let's talk more about that this afternoon."のように相手を気遣う姿勢が望まれます。会議が終わったあと「オッケー、じゃああとでメールするね」はちょっと砕けすぎた感があり、"Thank you for your time today. I'll tell my boss about what we discussed today and get back to you at the end of this month."くらいは言う必要があるでしょう。

これは丁寧さと関連した問題です。丁寧なスタイルになればなるほど文が長くなる傾向があります。それは、ビジネスシーンでは、相手に対する配慮、感謝の表現、相手を助けたいという姿勢などを言語化する必要があるためです。

 

ビジネスで使われる定型句や専門用語

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この延長線上にあるのが、ビジネスでよく使われる定型句です。例えば会議を始める場合、"First I'd like to welcome you all and thank everyone for coming today."という表現がよくつかわれます。このようにビジネスにはそれぞれ決まった場面があるため、そうしたシーンでよく使われる定型句も存在しています。こうしたフレーズのグループをイメージしてビジネス英語と言っている人も多いようです。

また産業別によく使われる、やや硬い語彙や専門的な用語もビジネス英語の範疇に含まれるかもしれません。例えばプレゼンテーションなどでは"A number of factors are adduced(例示/引用される) to explain the situation"(その状況を説明するために多くの要因が例示されている)のようにcite(引用する)に代わってフォーマルな動詞adduceが使われるかもしれません。またエンジニアであればspike(波形の尖った先の部分)やoscillation(発振、揺動)のような用語を、また金融業界の人であればfutures(先物)やforward(フォワード)のような用語を使うと思います。

 

ビジネス界でのバズワード

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最後として、ビジネス界でのbuzzword(流行語)というものもあります。customer journeyは(カスタマー・ジャーニー)は顧客が商品などを知り購入するまでの行動・思考・感情のプロセス)を表すマーケティングのbuzzwordです。またfree+premiumの合成語であるfreemium(フリーミアム)という面白い言葉もあります。これはソフトやゲームでよく使われるもので、基本バージョンは無償で提供されますが、さらなる機能を使用するには有償のプレミアムバージョンに切り替える必要があるというものです。

このようにビジネス英語は、表現方法から、場面別フレーズ、用語まで幅広い解釈があり、どのようなシチュエーションで用いられるかによって定義も変わってきます。

 

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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