法人英語研修を実施する場合、「忙しさ」と「モチベーションの維持」という二つの避けられない大きな障害が立ちはだかったっています。法人英語研修では、いい教材も見つけた、いい講師も見つけた、コース内容もしっかりしている、だが失敗した、ということがよく起こります。その原因の多くはこの「忙しさ」と「モチベーションの維持」の問題です。

 「忙しさ」というのは、受講生が会議や仕事で忙しく定期的に出席できなくなり、ついにはレッスンに出てこなくなるというものです。「モチベーションの維持」は、業務後に行う自習や宿題がつらく、やがてついていけなくなり落ちこぼれてしまうというものです。これら両者の問題は「鶏と卵」のように密接に結びついていますが、理解の便宜上分けてお話しすることにします。

 

忙しさ問題

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まずは「忙しさ」という問題について見てきたいと思います。以下は実際にあった例です。無料の研修受講で希望者を募ったところ、かなりの応募者が現れました。本人たちと面談すると「英語に興味があり、必要もあり、やる気もある」とのことでした。これは12回の会話力アップのコースでした。いざコースがスタートすると12回のうち3回ほどで出席者の数が減少し始め、最初15人ほどいたクラスも最終回にはわずか2人ほどになってしまいました。来なくなった理由を聞いてみると「業務が忙しい」とのことでした。

実はこの「忙しい」というのがクセ者です。それは簡単に何の理由にもなりうるからです。実情としては「いざ受けてみたところ思いのほか急にペラペラになるわけでもなく、頭がついていかないのでクラスが苦痛だった」ため、他の事を優先するようになった、という人がかなりいました。「忙しさ」を理由とする場合、108-9が優先順位の問題なのです(特に「つらい英語クラス」と「楽しい飲み会」との二択ならどちらが選ばれるかは明白です)。もし本当に徹底的に忙しい人であれば、そもそも受講などしないでしょう。

そのため優先順位を逆手に取るという方式があります。一番分かりやすいのが、コース修了を業務評価の対象にする、最終テストの成績によって(または出席率によって)費用を一部/全額本人に負担させる、コース修了と一定の成績を昇進の条件にする。また人事部は本人の上長とも密に連絡を取り、一定期間、研修出席の時間や自宅学習の時間を確保させるというような配慮や計画も必要となります。

 

モチベーションの大敵とは

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次に「モチベーションの維持」の問題についてお話しします。モチベーションの大敵は「難しさ」と「面倒くささ」です。まず「難しさ」についてですが、これはネイティブ講師による授業で見られます。英語圏の講師は「黙っている学生、受け身な学生は義務を放棄した者」とみなす傾向が強いので、放っておかれるか無視されがちとなります。ただでさえ聴き取り力もスピーキング力もままならない人は、ますますいづらくなり、やがて姿を消してしまうのです。

そこで重要になるのが、レベルチェックと本人のレベルに合わせた方法論です。実はある程度会話力のある人(大学時代(短期)留学に行った人など)はネイティブの授業を楽しんで積極的に発言する(そのためできない生徒は余計にいづらくなる)傾向があるのですが、そのレベルに至るには一段階大きな壁(TOEIC700800点程度)を乗り越えなければなりません。このレベル以下の人の場合、同じ程度の人を集めて、均質なクラスで集中的に基礎訓練を行う必要があります(語彙、リスニング、文法、簡単なスピーキングなど)。この際には宿題や自習が欠かせません。

そこでモチベーションの問題「面倒くささ」にぶつかります。これを解決するには、メンターによる指導とアドバイスが非常に重要になります。これにより並走者が生まれモチベーションが維持しやすくなります。宿題進捗の管理も重要です。実力アップのカーブは、このレベルに関する限り、学習時間量と正確に比例するからです。

そのほか学習メンバーによるチームを編成と、各人に役割分担をさせるという方法もあります。例えば、そのチームに一定期間内にいくつかの授業外課題を課します。メンバーたちは各人の役割を決めて実行します。新しいトピックを見つけて全員の前で発表する人、英語を使った全員参加のアクティビティーを計画する人、英語オンリーで話す飲み会を実施する幹事などです。これにより「チームの一体感」の助けを使って長期間モチベーションを維持することが可能になります。

 

執筆者:鈴木武生 Ph.D.
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役。会社HP: https://asiaeuro.org

早稲田大学および跡見学園女子大学非常勤講師。(株)日中韓辭典研究所言語学顧問。さくらリンケージインターナショナル社シニアコンサルタント。

商社勤務後,翻訳・通訳者、漢英字典編纂者を経て独立し,アジアユーロ言語研究所を設立。翻訳・通訳業務,多言語辞書編纂,データ処理,検索エンジン開発を行うとともに,大手外資系メーカーのアジア太平洋地区ビジネス開発を支援。また企業向けスキル研修プログラム(英語,中国語,異文化理解など)の開発と実施,ならびにグローバル人材研修・開発のコンサルティングを行う。

「海外経験のない一般的な日本人が、外国語能力を身に付け、外国人と自然なコミュニケーションが図れるようになるためには、一体何をどのように実践したらよいのか、またどうすればそうした学習者を支援できるのだろうか」という思いで設立。企業向け語学研修・異文化研修を中心に、日系・外資を問わずあらゆる業種の企業に対して、学習者の語学力向上をサポート。
東京大学総合文化研究科修了(言語情報科学専攻),言語学博士。研究対象は英中日台の語彙概念意味論、言語類型論、語用論、構文論。またタイヤル語(台湾原住民族語)のフィールドワークを行う。

著書:「異文化理解で変わる ビジネス英会話・チャット 状況・場面115」 (Z会のビジネス英語)

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