多くの企業において、英語力の測定として活用されているのがTOEIC L&Rテストです。しかし、400点や500点を目標にして学習をしている方にとっては、目標スコアをクリアした場合であっても、「できた手応え」はあまりないかもしれません。 

  TOEIC L&Rテストは、10点から990点を振り分けるテストのため、初級レベルの問題から上級レベルの問題まで幅広く出題されます。そのため、初級者にとっては、多くの問題が実力を超えるレベルとなります。もちろん、730点や800点が必達目標の場合には取り組まなくてはいけませんが、「初級レベルの英語力を備えているかどうか」を確認するためのテストとしては、指標として好ましくない場合もあります。たとえば、通常のテーブルの長さを測る際に、運動会で用いるような50メートルの巻尺を使うことはないでしょう。きっと、3~5メートル程度のメジャーを使用するはずです。英語のテストも同様に、測るレベルによってテストを変えるのも効果的です。

 

 基礎力を測るためのテスト活用法 

 社員の英語力底上げのために設定されることの多いTOEIC 500点とは、基礎力があるかどうかが問われるスコアです。「まず基礎力だけを身につければよい」という場合や「基礎力があるかどうかだけを測りたい」という場合は、TOEIC L&Rテストよりも向いているテストがあります。それが、TOEIC Bridge L&Rテストです。 

  TOEIC Bridge L&Rテスト(以下、TOEIC Bridge)は、リスニングが約25分で50問、リーディングが35分で50問、合計約60分で100問のテストと、時間や問題数はTOEIC L&Rテスト(以下、TOEIC)の半分です。スコアは30点から100点の範囲で、1点刻みで測定されます。換算では、TOEIC Bridge90点以上が、TOEIC600点以上ですから、基礎力を測るのに適しています。

 

TOEICTOEIC Bridgeのスコア換算は公式サイトをご覧ください。 

https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/pdf/Comparison_BridgeandTOEIC.pdf 

 

 TOEIC Bridge L&RテストとTOEIC L&Rテストの共通点と相違点 

 TOEIC BridgeTOEICに共通するのは、ビジネスと日常の場面が出題されることです。当然、使われる単語や表現も共通しているものは多くあります。 

  相違点は、テスト形式とレベル/内容に分けられます。すでに述べたように、TOEIC Bridgeの問題数はTOEICの半分で、時間も半分以下です。TOEIC Bridgeのレベルについては、リスニングのスピードもやや遅めで、リーディングの量も少なめです。また、単語や文法のレベルも抑えられています。そのため、初級者にとっては学習がしやすいというメリットがあります。学習がしやすいということは、上達を感じやすく、「もっと上達させたい」というやる気アップにもつながります。レベルが抑えられているとはいっても、ビジネスに使えないレベルというわけではありません。TOEIC Bridgeに向けた学習を通して身につけた単語力や文法力、リスニング力、リーディング力は、仕事にも活用することができますし、そのままTOEICで活用できる「架け橋(bridge)」となります。 

  基本的な英語を聞いて/読んで意味が理解できる力が求められているのがTOEIC Bridgeです。このテストである程度のスコアが取れれば、TOEICへの移行もスムーズです。TOEIC Bridgeは、TOEICに出題される内容の中で基本的なもののみを扱っているとも言えるため、基礎力を測るテストとしてオススメです。 

  一方で、TOEICは、リスニングのスピードが速く、英文の量も多いだけでなく、様々なレベルの単語や文法が使われています。さらにより幅広いシーンが登場したり、複雑な内容が展開されたり、といった特徴があります。また、意味が理解できる必要があることはもちろんのこと、話された内容や書かれた内容の「意図」を理解しなくては解けないものも出題され、中級者や上級者向けの問題も多く見られます。どんなに易しい問題でも、リスニングの場合はある程度のスピードで話されますし、読解問題の場合も、大量の英文の中から探さなくてはなりません。そのため、普段の学習において基本的なことに加えて、テストで出合う高いレベルのものにも触れる必要があります。このレベルの高さが理解を妨げる原因となり、自信を得ることも難しくなります。 

 

TOEIC BridgeTOEIC 

 初級レベルの社員を対象として英語力の底上げを狙う場合のほか、接客業務に携わる社員が、場所の説明や手順の説明など「型」がある英語力を磨く場合などにおいて、TOEIC Bridgeから入るのは効果的です。TOEIC Bridgeにおいて学習する基本的な単語や文法のほか、依頼や提案表現、Eメールなどに触れることもできるため、仕事で必要な場面に応用することもできます。 

  なお、ある程度英語ができる中級者以上や、プレゼンテーションや会議のように、よりビジネス色の強い場面で英語に触れる必要がある場合などは、TOEICを活用するのがよいでしょう。 

  気を付けなければいけないことは、学習者がどんなにやる気があったとしても、または英語学習を強制されたとしても、難しいことに取り組めば早く上達するわけではありません。あくまで「理解できるレベル」のものに取り組むことが大切です。そのため、どちらを活用するかについては、現在の英語力のレベルと目指す英語力や必要とする英語力、さらに目標に向けた英語学習の取り組みなど、複数の要素を検討するとよいでしょう。TOEIC BridgeTOEICのどちらを活用するにしても、現在の英語力をさらに高めるためには、問題を解く練習をするだけでなく、音読等のトレーニングを取り入れることにより、知識とスキルを高めることが大切です。 

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rj_189_プロフィール画像最新著者:早川 幸治 氏
株式会社ラーニングコネクションズ 代表取締役 
SEから英会話講師へ転身。その後、TOEIC対策を中心とした英語セミナー講師として、これまで大手企業からベンチャー企業まで全国約200社での研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、上達の本質を英語学習に応用している。高校2年で英検4級不合格から英語学習をスタート。苦手意識を克服した後、TOEIC 990点(満点)、英検1級。著書に「TOEICテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「TOEICテスト 究極のゼミ Part 3 & 4」(アルク)、「2カ月で攻略!TOEIC L&Rテスト 730点!」(アルク)など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティング、セブ島留学TOEICプログラム監修、日本語プレゼンテーション(伝える技術)研修も担当。2011年5月から毎日英単語メルマガ「ボキャブラリーブースター」を配信中。

早川幸治オフィシャルサイト:https://kojihayakawa.jp/

 

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