毎回のTOEIC® Listening & Reading Testの日本での平均スコアは580点前後で推移している。この平均点を超え、600点を超えてくると英語を話すことに力を入れたいと考える人が多いようだ。スピーキング力アップのニーズとモチベーションのいずれかを感じたら、ぜひスピーキング試験を活用して、英語力の向上を目指そう。

 

ビジネスパーソンはビジネス場面で役立つ発話力を問われる試験を選択するとよい。内容がビジネスで必要とされる意見を述べるようなタスクを含み、Speakingだけを単独で受験できる試験としてはLinguaskillがお勧めだ。もちろんTOEIC Speaking Testもよいテストだが、テストセンターで受験する必要があり、受験会場が都市部に限られている。

 

Linguaskillはいつでもどこでも受験でき、利便性が高いことから、学習者が気軽に受験できる。企業の人材育成担当者であれば、どの支社で勤務しているかによって社員の受験機会が平等ではないことを避けたいと考えるだろう。その観点からもLinguaskill Speaking Testはお勧めだ。

 

この記事ではLinguaskill Speakingテストの学習法を紹介する。

 

1.現実的なスピーキング力の目標はB2レベル

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外国語でどのようなこと(質問をする、説明をする、交渉をするなど)ができるかを示すCEFRでは、英語力をA1からC2までの6段階に分けている。CEFRは国際的なガイドラインとなっているため、今ではほとんどの英語テストがこの指標に基づいたスコアの出し方をしている。したがって、どのスピーキング試験を受けるにせよ、CEFRに基づいた目標設定をしよう。

 

筆者がビジネスパーソンに勧めるのはB2のスピーキング力を目標とすることである。もちろん、すでにB2の力がある人にはC1レベルを目指してほしいが、長年複数のスピーキング試験の評価官をしてきた筆者が見ている現実から述べると、日本にいながらC1レベルの力を付けるのは簡単なことではない。英語の精度を磨き上げないといけないので、発音の精度、前置詞の使い分けや冠詞の使い分けなど、コミュニケーションをとることにおいてはあまり重要視されないところも意識して直していかないといけないからだ。長年の間違いや癖を修正していくのには長い時間と根気が必要なので、C1の目標設定をする場合は1年以上の長期戦になる可能性が高い。

 

Linguaskillの開発元であるCambridge EnglishTOEIC®の開発元であるETSによるCEFR換算表を見てほしい。基本的に、ビジネス英語テストはC1までの能力しか測っていない。その一方で、Cambridge EnglishSchools(高校まで)とGeneral and Higher Education(大学以上)向け、つまり移民の子供や留学生向けに作っているテストについてはC2まで測っていることが示されている。これが示唆していることは、幼少期から英語を学んでいないとC2を目標として設定するのは難しいだろうということだ。C2は教養のあるネイティブと同等のレベルの語学力なので、幼少期から長年学び続けていないと到達しないというのは無理もない。そして、その一つ下のレベルのC1レベルに到達するのもかなりの時間を要するということが理解できるだろう。

 

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 出典: 1 https://www.cambridgeenglish.org/exams-and-tests/cefr/

     2 https://www.iibc-global.org/toeic/official_data/toeic_cefr.html

 

B2レベルのスピーキング力があれば、たまに円滑にいかないことがありながらも、仕事にならないことは、まずないと思われる。B2のレベルであれば日本語で業務を行うときのビジネススキルを8割程度は発揮できるイメージだ。B2までのスピーキング力育成が最も現実的なので、現在B1以下の人は、まずはB2レベルを目指そう。

 

2.Linguaskill Speakingに向けた練習法

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Linguaskill Speaking
のみならず、TOEIC®SpeakingGTEC Business Speakingにも効く練習法は以下のとおり。一日あたり20-30分の練習だ。

 

■TOEIC®LR 600点~730点(TOEIC®LRレベルC)の学習者、またはLinguaskill LRレベルがA2の学習者

 

・スピーキングテスト時の指示を完璧に理解できないリスクがあるレベルなので、引き続き基礎力の向上が必要。語彙を増やすように、手持ちのTOEIC®の単語本やビジネス英語テキスト、ニュースを題材にした教材などでインプット(単語やフレーズの暗記)を続けよう。

 

・自分の身の回りの出来事についてスラスラと話せるように練習しよう。毎日、ボイスメモ日記を付け、言いたいけれども言えない単語や表現を洗い出し、調べて「My単語一覧」を作り上げるとよい。

 

・手持ちの教材の音源を聞き、発音をネイティブに近づける練習をしよう。毎日15分間、覚えてしまうくらいまで丁寧なモノマネリピーティングをしていこう。このレベル層の学習者はまだ完璧には文字と音がつながっていないので、音読練習は発音の向上と流暢さに直結する。

 

音の連結や音の消失など、文字どおりではない箇所に特に気を配り、まずは1文単位で音源を止めながらリピートする。お手本と同じスピードで読めるようになるまで、1文ずつ丁寧にモノマネ練習を行う(リピーティング)。全ての文がスムーズに言えるようになったら、前から文をつなげて順に読み上げていき、慣れたら、お手本音声を流して、声を重ねて一緒に言ってみる(オーバーラッピング)。同じスピードで言えるようになったら、自分の音読音声だけを録音してみよう。録音した音声を確認し、お手本と比較する。異なる箇所がないか確認し、修正し、トレーニングのワンサイクルを終える。丁寧にやればここまでで15分はかかる。自分に厳しくお手本との違いを確認するのがコツだ。

 

■TOEIC®LR 730点~860点(TOEIC®LRレベルB)の学習者、またはLinguaskill LRレベルがB1レベルの学習者

 

・手持ちの教材の音源を聞き、発音をネイティブに近づける練習をしよう。毎日10分間、覚えてしまうくらいまで丁寧なモノマネリピーティングをしていこう。リピーティングを続けた文の構文や使われていた単語が口から出てくるようになる。

 

・ある程度話せることを自負している人は、流暢さを高めよう。流暢さを改善するために、毎日2分間スピーチを行って録音しよう。トピックは自分の身の回りのことや自分の業務に関すること、例えば「今行っているプロジェクトの課題と解決法」など、日頃から考えることを選ぶといい。録音をし、3以上の沈黙や「あー」「うー」と言っている箇所がないか確認する。3秒以上の沈黙がある箇所が3つ以上あれば、全てやり直しをし、流暢に話せるまで練習をしよう。単語がわからなくて話が続かないところは調べて、使いこなせるようにしよう。わずか2分のスピーチでも何度も練習するのに時間がかかるので、この練習で10分くらいかかるだろう。

 

・流暢さを上げることを意識していると、速く話すことに集中しすぎて発話精度が悪くなりがち。自分で音源を聞き返すだけでわかるような単語の使い間違いや動詞の時制の間違いを見つけることができるので、音源を聞いて、どのような「うっかり」が起きているのか傾向を掴んで、気をつけよう。

 

■TOEIC®LR 860点以上(TOEIC®LRレベルA)の学習者、またはLinguaskill LRレベルB2レベル以上の学習者

 

流暢さに課題がある人は上記のTOEIC®LR 730点~860点の層の練習方法から始めよう。

 

LRCEFRがすでにB2レベルに達していれば、知っている単語や表現はスピーキングでもB2レベルに到達するのに十分だ。LRB2レベルなのに、スピーキングはB1だという人は、習得済みの英語知識をすべて使いこなせていない。正しく話す練習を徹底的に行おう。流暢に話せるのにスピーキングスコアが伸び悩む場合は発音が不明瞭か、単語や表現の選定または文法の精度が悪いことが考えられる。自分では気づきにくい改善点なので、講師にサポートしてもらうとよい。悪いところをすべて直してほしいと伝え、英語で話す精度を改善していこう。

 

・これから講師を見つける必要がある人は、自分の目的に応じて講師を探そう。テスト対策専門の講師は当然その道のプロなので高額なレッスン費用になるが、短期間で資格取得を目指す人には必要だろう。時間の余裕がある人は、今では安価にオンラインのスピーキングレッスンが受けられるので、そのようなサービスを活用することを検討してみてはいかかだろうか。スピーキング試験のことをよく知る講師に指導してもらうのが望ましいが、そうではない場合でも、何が間違っていて、その間違っている理由がなぜなのかが説明できる講師を選択したい。学習者が講師を見極めることが大切である。

 

3.受験頻度について

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Linguaskill
は気軽に受験できるテストなので、頻繁に受験することも可能だが、B1からB2に英語力を上げるのは容易ではなく、時間がかかる。使える表現の幅を広げ、より複雑な文構造で話し、且つそれなりに精度を保たなくてはいけない。要は流暢に話し続ける訓練が必要であり、また、正しい表現を使いこなせるようにならないといけない。このことを考えると、練習を徹底的に行ってから受験するのがいいため、3ヶ月から半年に1度くらい受験すれば十分だろう。

 

正式なテストを受験しない期間はぜひ公式ツールを活用して、現状の力を測ってほしい。Linguaskillの運営元である英検協会のウェブサイト上にSpeakingWritingが無料で練習できる公式ツールが公開されている。

 

このツールは発話を本テスト同様に評価してくれ、CEFR情報を提示してくれる。細かい点数はこの練習ツールでは出ないので、微妙な上達はわかりにくいが、今のCEFRレベルを判定するには十分に活用できる。ボーダーラインにいる場合は、例えば昨日の受験時はB1、今日の受験時はB2とその都度判定が変わるので、ボーダーライン上にいることも把握できる。B2レベルまでを目指している人は意見を問われるPart 3以降をこのツールで練習しておくといいだろう。残念ながらパート別の練習はできず、試験同様にPart 1から進めないといけないので、時間があるときに活用するといいだろう。

 

まとめ

 

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ある程度英語が理解できるようになった人には英語での発信力を高めるトレーニングを開始してほしい。スピーキング力が向上しているかを測るためにはスピーキングテストを活用するとよい。Speakingだけを単独で受験でき、いつでもどこでも受験できる利便性が高い試験としてLinguaskillがお勧めだ。日本人にとって現実的なスピーキング力の目標はB2であり、そのために現在の自分の英語の知識量に応じた練習方法で毎日コツコツと努力をする必要がある。スピーキング力の向上には時間がかかるので、無料で活用できる公式ツールと公式試験、そして自習と講師からの指導を併用しながら、英語力を高めていってほしい。

 

 

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執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO 

クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。英語教授法について大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。SCM部門の配属からHR部門に異動できず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教育教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天様で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。

著書:『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション』『英語の数字ルールブック』『ビジネス英語リーディングの技術


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