リンガフランカ(国際共通語)である英語を利用する場面は多種多様です。日頃、ノンネイティブ同士のコミュニケーションで英語を使っている場合は、比較的シンプルな英語で意思伝達することが多いでしょう。

しかし英語ネイティブ、特にアメリカ人とのやり取りが多い場合、忖度せずに使われる英語は皮肉が含まれていたり、日本で発売されている教材ではあまり取り上げられない表現が使われていたり、難しく感じるかもしれません。

今回は「忖度してくれない英語ネイティブとのやり取りがある方」に向けた英語学習のポイントをお伝えします。

心の持ちよう

忖度してくれない英語ネイティブは、日頃自分がネイティブ同士で使っている表現をどんどん使ってきます。そのため、「ネイティブとの会議に参加すると思いの外わからない」と自分の英語力に自信をなくして悩んでいる方からのご相談をよく受けます。悩んでしまっている場合は、まずは「わかる」と「できる」が異なっているのが当たり前であることを受け入れて、心を軽くしてください。

例えば、ビジネスメールライティングでは、ネイティブがWe’ll schedule the next meeting when deemed necessary. と書くかもしれません。このdeemedは「みなす」という意味で、よくdeemed necessary「必要とみなされる」やdeemed appropriate「適切とみなされる」といった表現が使われます。でも、あえてこのように書かなくても通じますよね。We’ll schedule the next meeting when it’s necessary.「次の会議は必要なときに予定します」と書ければ十分相手に用件を伝えることができます。

このように、自分が理解できる表現と使いこなす表現が異なるという状態でもビジネスを進めるうえでは全く問題ありません。receptive skills(受動的に理解する力)とproductive skills(アウトプット力)は異なっているのが一般的です。これは母語でもそうです。みなさんも、聞けばわかるけれど使いこなせる自信の無い慣用句や、読めるけれど書けない漢字がかなりありますよね?

英語でも、このようにreceptive skillsとproductive skillsが異なることを「当たり前」と思い、学習を進めていきましょう。英語学習に疲れている場合やどうしていいかわからないと悩んでいる場合は、忖度してくれない英語ネイティブの発言や書いた内容は「推測して理解できる」ことで「よし」としましょう。その代り、言いたいことは適切に言えるように努力しなくてはいけません。簡単な表現を多用してもいいので、正確に伝えられるアウトプット力を鍛えていきましょう

学習法

みなさんが日頃「教材」で学んでいる英語は「美しい英語」です。この文法的に正しいスタンダードな英語で話し、書けることを目指しましょう。小洒落た表現を使わずに「教材」で見かけるシンプルな英語を使いこなせれば十分教養のある英語話者になれます

自分のアウトプット力を鍛えるためにお持ちの教材を活用して真似することから始めてください。何度も口に出して言ってみたり、使いたい表現をパッとパソコンに打てるようにするために書き写しの練習をしたりすると良いでしょう。

「TOEICって役立ちますか?」というご質問をよくいただきます。4択問題を解くだけの力は役立たないかもしれません。「今伝えたことを元に質問するから4択で答えて!」とビジネス場面で言われることはないからです。

4択として質問されることはありませんが、TOEICの会話やEメールやチャットメッセージはきれいな英語で書かれたリアルな内容のやりとりですので、大変役立ちます。「4択で解ける」のではなくTOEICレベルの内容を「自分で言える」「自分で書ける」力をつけましょうそうすれば多くの場面においてビジネスをスムーズに進められます。お持ちのTOEICの教材があればぜひ「自分が同じレベルの英語を言える、書ける」ための練習に使ってください。

ここまではアウトプット力の育て方について述べました。教材を使いましょうとお伝えしましたが、「見聞きしたらわかる」というreceptive skillsを育てるためには、これに反して、極力教材から離れてください。

小洒落た表現も理解できるようにするためには「本物の素材」を活用して学ぶことが大切です。ネイティブのために作られているものは当然忖度なしの英語です。映画やニュースなどの「素材」を活用して、自分の知らない表現をメモして調べていくことが重要です。

とは言え、この学習法は時間も努力も要するものです。大変な作業ですので、学習の時間配分としてはアウトプット力強化の時間を優先することをおすすめします。

書籍のご紹介

本来はreceptive skillsの育成には「本物の素材」が最適です。

しかし、自分で調べ物をしながら学習するのはとても大変ですし、時には勘違いをして学んでしまうことがあります。そのため、極力「本物の素材に似せた英語」と「シンプルな英語」を対比して学べる書籍をご紹介します!

武器としてのビジネス英語

『武器としてのビジネス英語』江藤友佳著(DHC)

この本は「英語力をよりいっそう高めたい」と考えている中上級者向けです。最大の特徴は「一般的(シンプル)な英語での会話」と「洗練された英語(ネイティブ同士がなんの配慮もせずにする会話)」を見開きで示していることです。教材らしいシンプルな英語もネイティブの世界観も両方味わいたい人向けです。

「実際にネイティブ同士が話す英語、特にアメリカ人同士が話す英語を理解できるようになりたい!」「英語で映画を楽しみたい!」といった方のために、見開きの右側に「見聞きしたらわかるようにしておきたい会話」を表示しています。

現在、シリコンバレー在住の私がCMやビジネス場面でよく聞く表現や、自分がビジネス場面で使っている表現などをふんだんに取り入れています。ネイティブ同士で使っているイディオムや皮肉を込めた表現をシンプルな英語と対比しながら学べます。シンプルな英語と小洒落た英語の両方を比較しながら学ぶことにご興味がありましたら、ぜひお手にとってみてくださいね。

 

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執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO 

クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。HR部門への異動が叶わず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。

著書:『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション』『英語の数字ルールブック』『ビジネス英語リーディングの技術

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