TOEIC®200点台の方から「学ばないといけないことが多すぎて、何から学習していいかわからない」といったご相談を受けることがあります。今日はTOEIC 500点程度を目指し、当面取り組むべきことを3つに絞ってお伝えします。
1.Part 2を徹底的に練習Part 2の多くは文字で見るととても簡単な内容です。例えば、Do you have the time?「時間、わかりますか?」に対してThere's a clock right there.「あそこに時計がありますよ」といった、シンプルなやり取りを想像できれば問題が解けます。
この問題ではtime「時間」とclock「時計」がわかれば全部聞き取れなくても解けます。にもかかわらず、音で聞くと解けないのは、英語への反応スピードが遅いから。つまり、頭の中での英語処理が「自動化」されていないからです。この処理スピードを上げていくことを意識して練習に取り組む必要があります。
処理スピードを上げるために必要なトレーニングは以下の3つです。
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①まずは発音を勉強し直す必要があります。はじめにアルファベットの音を覚え直しましょう。例えば、oの発音をオだと思っている方がほとんどですが、アメリカ英語ではアの発音となります。今までカタカナの影響を受けて覚えてしまった英語の音をゼロから学び直すには、フォニックスの学習からし直すと早いです。
フォニックスとはネイティブの子供たちが学ぶ文字と音のルールのことです。子供向けの教材ですが、私の教室向けのオリジナル教材はこちらになります。1文字ずつの音に慣れたら、tionなどの「まとまりの音」も頭にインプットし直しましょう。tionは日本語ではションと書かれますが、実際の発音はシャンのような感じです。こういった誤認識している音のかたまりを全てインプットし直しましょう。
②個々の音に慣れたら、単語レベルの発音を強勢の位置を意識して覚えていきましょう。
英語の特徴は、強勢のあるところ以外は母音が「あいまい母音」(シュワ)という音になることです。例えば、politics「政治」の発音はoがアの音なので、パリティックスですが、politicalは強勢がliの位置に変わるのでpoのoはあいまい母音に変わり、ポリティカルになります。最初の音が本来のoの音ではなくなるのです。この強勢に関するルールを知らないと、同じ語源の単語は同じような音だ、と誤認識してしまいます。
文レベルの音のルールを覚えていきましょう。「文の聞き取り力アップに理解必須 ~つながる音・変化する音・消える音~」をご確認ください。
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これらのことを理解して、脳内で自動的に英語が処理できるようになるためには練習あるのみ。たくさんの問題を解き、そして自分でも音を真似てナレーターと同じように質問文と回答文をスラスラ言えるように練習してください。地道な努力をしていくことで、英語の回路が脳内にできあがります。
2.Part 5の品詞問題・動詞の形問題を練習
Part 5は語彙力がなくても、中学校文法をマスターしていれば、解ける問題がたくさんあります。まずはそれらの問題が解けるように、品詞問題と動詞の形の問題への理解を深めましょう。
語彙力がなくても解けるとはどういうことか、以下の例題を日本語で解いて体験してください。
品詞問題例 ※選択肢にあるのは創作単語です。
社長が考えた新たな商品は、多くの人々に必要とされているだろうとMr. Whiteは-------。
(A) かぽしんでいる
(B) かぽしい
(C) かぽしみ
(D) かぽしければ
このように意味のわからない単語が並んでいても、日本語の他の単語に当てはめて考えてみたのではないでしょうか。
例えば、「悲しい」に当てはめてみましょう。
(A) 悲しんでいる(動詞)
(B) 悲しい(形容詞)
(C) 悲しみ(名詞)
(D) 悲しければ(仮定)
文意は成立しませんが、文法的な解釈から唯一入るのは(A)です。この判断は名詞、動詞、形容詞、副詞が文のどの位置に入るかを把握していれば問題が解けます。パズルのようなものなので、英単語の意味がわからなくても解けるようになることを目指して、楽しみながらたくさん練習をして品詞と語順をマスターしましょう。
動詞問題例 ※選択肢にあるのは創作単語です。
カスタマーサービス部門からの報告によると、最近、顧客が弊社の商品についてずっと-------。
(A) ぽぽっている
(B) ぽぽる
(C) ぽぽりたい
(D) ぽぽった
「ぽぽ」とはどういう意味かわからなくても解けましたよね。正解は(A)です。「最近ずっと-------」の空所に入るのは継続性を示す「~している」です。これらは動詞の形が異なっています。
Part 5の選択肢を見て、似た単語が4つ並んでいるものは品詞問題か動詞問題なので、まずはこれらを単語の意味がわからなくても解けるようにすることを優先しましょう。言葉の語順(品詞)や動詞の役割を理解することで、こういった問題が解けるようになります。
3.ひたすら語彙力アップを目指す
語彙力アップはTOEIC Part 2とPart 5の練習をしながらも取り組めますね。この他、TOEICの比較的簡単な頻出単語帳からスタートしましょう。ベストセラーの『出る単特急 金のフレーズ』よりも簡単な表現が載っている『銀のフレーズ』がおすすめです。
非常に大切なのは、音を聞きながら覚えることです。リスニング力アップにも繋がりますので、必ず音源を聞きながら学んでください。必ずです!「学習時間を作っているのに英語力が上がりません」という方の多くが音源は使っていないとおっしゃいます。音源を使わないのが、一番よくある失敗パターンです。
学習法については、単語本を眺めるだけで覚えられる人はそれでよいのですが、手を動かさないと覚えられない人も多いです。ノートに書き写す、アプリを活用するなどして、実際に手を動かしながら覚えることに取り組みましょう。
毎日20分間は本気で覚えようと取り組む時間を作ると力がつきます。集中力が培えるまでは2分割して10分×2回の学習をするのがおすすめです。朝晩10分ずつなら続けられそうですよね。アプリ学習をする場合はabceedなどがおすすめです。
最後に…
学習がうまくいかず、難しすぎて辛い場合は、テストを変えることも検討しましょう。
必ずしもTOEICからスタートしないでよい場合は、TOEIC Bridge®の受験対策から始めることを強くおすすめします。問題は短く、基本的な内容になっていますので、TOEIC Bridge®が苦痛ではなくなってから、TOEIC®へとステップアップすればより緩やかな坂を登れます。
試験の頻度は年に3回と少ないので、受験せずに問題を解いて練習するだけでもいいでしょう。テストの運営元の国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)より公式問題集が出ています。このテストから学習をスタートすることで、よりレベルに適した学習ができ、成長を感じることができます。
執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO
クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。HR部門への異動が叶わず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。
著書:『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション』『英語の数字ルールブック』『ビジネス英語リーディングの技術』
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