中高生のときに、英語には能動態と受動態があり、何かを「する側」と「される側」を示すのに使うといった説明を受けたことを覚えている人は多いようです。「be動詞+過去分詞」の形で、以下の2つような文を作る練習をしたことでしょう。

 

【能動態】My younger brother hit me! (弟が僕を叩「いた」!) 
【受動態】I was hit by my younger brother! (弟に叩「かれた」!)

これらの文が使われる場面を想像しましょう。家の中で兄弟喧嘩をしていて、保護者に告げ口をしている場面を想像してください。あなたなら、どちらの表現を使いますか。

この2つの文、日本語ではどちらでもさほど不自然に聞こえません。お兄ちゃんの名前が太郎だった場合、「太郎が叩いた~」「太郎に叩かれた~」はそんなに違和感はないでしょう。

 

しかし、英語では受動態のほうはあまり使われません。
ほぼ、確実にTaro hit me!を使うでしょう。

英語の場合は、焦点を当てたいものを主語にします。ここでは、太郎のことを告げ口したいわけなので、太郎が主語になるのです。

この原理に基づき、ビジネスパーソンは受動態を戦略的に使うべきです。

◆用法1


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誰が動作をしたかを明確にしたくないときや、動作主がわからないときに受動態を使いましょう。

 

例えばオフィスの窓が昨晩開けっ放しだったとしましょう。上司が開けっ放しにして帰ったことは知っているけれども告げ口っぽく伝えたくない場合は、The window was left open last night. と述べて、窓が空いていた事実にのみ焦点を当てることができます。

 

もちろん、誰が窓を開けっ放しにしたかわからないときもこのように受動態で述べましょう。

 


◆用法2
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マイナスな情報を伝えるときや自分に責任があると明言したくないときに使いましょう。

 

例えば「プロジェクトを期限内に終えることができない」と伝えたいとき、We cannot complete our project by the deadline.(私たちは期限までにプロジェクトを完結できません)と言ってしまうと、責任は自分たちにあることが明確になります。時と場合によっては、なんらかの外的要因でプロジェクトを予定どおりに進められないこともあるでしょう。そんなときには受動態が役立ちます。The project cannot be completed by the deadline. とすることで、プロジェクトがなんらかの事情で遅延するというニュアンスになります。

受動態の作り方や意味はわかるけれども、どんなときに能動態を使い、どんなときに受動態を使うべきかわからないビジネスパーソンが多いのですが、上記のとおり、戦略的に受動態を使うとビジネス上のコミュニケーションがよりスムーズになるでしょう。

 

 

 

執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO 

クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。HR部門への異動が叶わず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。

著書:『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション』『英語の数字ルールブック』『ビジネス英語リーディングの技術

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