英文法が苦手で…というご相談を多くの人から受けました。そんなときに質問するのが「英文法が苦手ってどういう意味ですか?」です。多くの場合、「苦手」という言葉は文法書を読むのが好きではないということや、文法書が理解できないということを指しているようです。
文法説明ばかりに目を向けるのも危険
そういった意味であれば、実は私も英文法が「苦手」です。厳密に言うと英文法の「説明にこだわること」が苦手です。理由は、文法にこだわりすぎていると、例外を見つけたときに考え込んで、先に進めなくなるからです。ときには「そういうものだから」と思い、実社会で使われている表現を受け入れ、真似て、適切なタイミングで使えるようになることを優先すべきではないかと思うのです。
それに表現によって微妙にニュアンスが異なるのに、まとめて語順のルールとして教えられる項目もあったりします。例えば、日本では関係代名詞のthatとwhichが同じだと習いますが、ネイティブは使い分けています。全く同じようには感じません。基本的にthatはそのものを指定する制限用法で使います。その一方、whichは補足情報のときに使います(非制限用法which)。
・I need to read the book that the professor was talking about.
(教授が話していた本を読まないといけない。)
この場合は、特定の本を指しているので、thatを使います。
・I need to read the book the professor talked about, which is sold at the school store.
(教授が話していた本を読まないといけない、その本は購買部で売っている。)
この場合は、その本がどんな本かを説明しているのでwhichを使います。
つまり、文法的には確かに同じ場所にthatもwhichも入るのですが、文のニュアンスは異なりますので、意味で使い分けるべきなのです。しかし文法ばかりに目をやるとこのようなところに着目できません。
文法用語嫌いな方へのアドバイス文法が好きな学習者は文法書を読み解くことで英語の世界が広がるので、全く問題ありませんが、文法嫌いの人はあえて嫌いなもので苦しみ続ける必要はありません。文法説明がどれだけ上手になるかを競うよりも、「標準的な教養のある英語」とされている文をたくさん真似ていき、同じように作れるようになることを優先していってください。これはネイティブの子供たちのように「感覚的に学ぶ」手法です。意味にフォーカスを当てる学習なので、文法を勉強している感覚は少ないです。単語の「形」にはしっかりと目を向け、「こういうときにingが付く」ということを体感的に学習していきましょう。「現在進行系」という言葉は学ばなくとも、文型にたくさん出会うことでマスターしていくことができます。
あまり文法用語を使わずに文法感覚を身につけていくことができる参考書に「意味順シリーズ」があります。Amazonなどの書店サイトで「意味順」と調べるといろいろと見つけることができます。品詞の役割でもある「だれが」「する(です)」「だれ・なに」「どこ」「いつ」を参考に英語で表現するときにはどのように表現するのが適切かを学ぶことができます。文法用語が苦手な方は文法用語の克服を目指すよりも、このような別なアプローチで学習をしてみてください。学生時代に文法用語嫌いが災いしてマスターできなかったことが感覚的にわかるようになると思いますよ!
執筆者:江藤 友佳(えとう ゆか)
Y.E.Dインターナショナル合同会社CEO
クレアモントマッケナ大学卒業後コロンビア大学大学院ティーチャーズカレッジで修士号を取得。大学時代に故ピーター・ドラッカーの授業を受け、組織開発に興味を持ち、PwCコンサルティングに入社。HR部門への異動が叶わず、人材育成に関わることもできる研修業界へ転職を決意。株式会社アルクで教務主任として多くの教材作成や企業研修、教員研修を担当した後に、楽天で英語化プロジェクトのco-leaderとして社員教育に従事。英語教育事業部の立ち上げ支援後に独立し、現在は教材制作の下請けやアドバイザリーサービスを提供している。
著書:『ロジカルに伝わる英語プレゼンテーション』『英語の数字ルールブック』『ビジネス英語リーディングの技術』
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